30年前に証券アナリスト・エコノミストとしてマーケットや経済調査に携わった後、2003年ごろから完全に方向転換し、20年以上一貫して単身高齢者の老後とその先の支援の現場に向き合いつつ、現在は頼れる身寄りのない高齢者の課題解決に向けたけん引役の黒澤史津乃が、現役世代に向けて親の介護に直面する前の心がまえの第一歩を解説します。
1.はじめに
「人生100年」をまっとうするまで心身ともに健康でいられるのが理想ですが、現実的には健康寿命と平均寿命の差は男性で約10年、女性で約12~13年といわれています。つまり、健康ではなくなってからも、多くの人には10年以上の人生が残されているのです。
もちろん、この「健康ではない時期」をできるだけ短くするために、健康維持に努めることも重要ですが、それでもいつかは誰もが健康でなくなり、最終的にはさんずの川を渡るのですから、そこから目を背けることなく果敢にリスクマネジメントを行うことが重要です。
日本では、団塊の世代が「介護が必要な時期」に、そして団塊ジュニア世代が「親の介護に直面する時期」に差し掛かることで、近い将来、人口の二大ボリュームゾーンが「介護される側」と「介護する側」となることは、避けようがありません。
これから「親の介護を担う側」になる皆さんには、ぜひ早めにその準備に取り掛かっていただきたいと思います。
2.突然やってくる親の介護。リスクの想定が甘くないか?
読者の皆さんにとっては、まだ先の話だと思われるかもしれません。
しかし「今はまだ親も元気だから大丈夫」と思っていても、ある日突然の「外出先で転倒して救急搬送された」という第一報から、元気だった親の介護が始まることも数多くあります。
できることなら、親の介護にもストレスなく「ウェルビーイング」な状態で向き合いたいものです。ウェルビーイングな状態とは、「体」「お金」「時間」「こころ」の四つの要素が全て心地よいバランスで保たれていることで実現されます。
トウシルの読者の皆さんの中には、投資によって高齢期までにある程度の資産を形成できるめどが立って、「お金」の不安が解消されつつある方もいらっしゃることでしょう。
しかし、突然始まる親の介護によって、仕事や家庭と介護との両立に困難をきたし、「時間」と「こころ」の要素が不安定化して、結果として「体」を悪くしてしまう、また、想定外の親の介護費用によって「お金」の不安まで膨らんでしまい、ウェルビーイングな状態から急降下する事態も想定されます。
高齢期にある親を抱える全ての皆さんに、一刻も早くこうしたリスクに気付いていただきたいのです。
では、親の介護リスクをどのように分析し、マネジメントすればよいでしょう。
3.親の価値観を知るための質問「オムツを誰に取り換えてもらいたい?」
まず、親の価値観や「尊厳」を知るところから始めてみてください。
「終活」といえば分かりやすいのかもしれませんが、親に終活を勧めることは、難しいものです。
「認知症になったらどうする?」「老人ホームに入る気はある?」「この家の中の荷物はどうする?」「田舎のお墓はどうする?」「相続は?遺言は?」などと尋ねようものなら、「まだ早い」「死ぬのを待っているのか」「財産を狙っているのか」と親子の信頼関係を揺るがしかねません。
しかし、このことにまず気づくことが第一歩。親にかける言葉を具体的にしてみると、その難易度の高さがぐっとイメージしやすくなったはずです。
そこで、次のように語りかけてみてください。
「こんな面白いアンケートを聞いた。『将来、もし介護用オムツを使う状況になったら、そのオムツを誰に取り換えてほしいか?』っていう質問。回答が世代によって分かれるらしい。昔の人は『人さまにシモの世話はさせられないから、家族にやってもらう』と答えるし、団塊の世代くらいからは『家族ではなく、プロに頼みたい』という人が増えてくるらしい。お父さん(お母さん)はどう思う?」
皆さんの親はどんな反応を示すでしょうか。「家族なんだから」と答えるか、「プロに頼んでほしい」と答えるか、はたまた「そんなこと、考えたくもない」と拒絶するか。その第一声によって、皆さんの親の介護に関する価値観を垣間見ることができます。
4.親の第一声から介護リスクを分析すると?
(1)「他人に迷惑は掛けられないから、家族が対応するのが当然」
このタイプの価値観の親は、将来の介護リスクはかなり高いといえるでしょう。例えば父親の認知症が進行し介護が必要になったところを、母親が全て抱え込んで老人性うつのような症状となり、現役世代の子どもがその両親ともにケアしなければならなくなるようなケースです。
両親ともに元気なうちに、家族だけで全ての介護を抱え込むことのリスクをしっかりと認識しておくことが重要になります。
(2)「プロに頼んでほしい」
このように答えるタイプは、実際の体の「介護を外部化する」ことに抵抗感が少ないので、比較的将来の介護リスクは低く抑えられるかもしれません。しかし親の介護では、実際の体の介護の他に「名もなき家族の役割」の負担が大きいことがあまり語られていないように思います。
「排せつ介助」「入浴介助」などの名称が付く介護は、介護保険制度を利用しながらプロの手を借りることができますが、介護保険を利用して高齢者施設に入居しても、家族として対応しなければならない意思決定や各種手配、雑多な手続きなどを、24時間365日体制で行わなければなりません。
つまり、オムツを替えることはプロにお願いするにしても、その「依頼をする」という意思決定や依頼行為は既に親自身ではできないので、子どもである皆さんが担わなければならないのです。この役割を、家族の中の誰がどれだけ果たすのかということを、両親ともに元気なうちに家族で話し合っておくことが、将来へのリスクマネジメントとなります。
(3)「そんなこと、考えたくもない」
将来の自分の想像すら拒絶する親は、事前の準備を促すのが難しいという意味で、リスクマネジメントが最も難しいかもしれません。
この場合、強引に将来のリスクを正面から突き付けると心の扉を閉じられてしまう可能性もあるので、老後や逝去後の話を前向きに切り出せるように、少しずつ時間を掛けて「友達の両親でこんなことがあった」などの事例を共有したりしながら、親自身の老後に向き合える環境づくりをすることが、将来の親の介護リスクの低減につながります。
5.親孝行、親不孝ではない。それぞれの親子にふさわしい介護のあり方
親の価値観の一端を把握したところで、併せて子どもである皆さんの価値観とのすり合わせも必要です。現在の仕事や家庭環境、親の住まいとの距離などの要素を全て考慮した上で、きょうだいとの調整を含め、誰がどこまで親の介護に関わることができるかについて、親が元気なうちに冷静に分析すべきです。
「親の介護は、子どもである自分が精いっぱい関わりたい」と思うのか、それとも「仕事や家庭との両立を重視しながら、できる範囲で関わりたい」と思うのか。前者が親孝行で、後者が親不孝であるとは限りません。親の価値観と子の価値観の組み合わせによって、それぞれの親子にふさわしい介護への関わり方を事前にシミュレーションしておくことが何よりも大切です。
6.まとめ
「老後のオムツを誰に取り換えてもらいたいか」という問いの裏側には、「オムツの取り換えを担う人の時間、手間、費用とその調達・手配を誰が担うのか」という問いが隠されています。誰もがいつかは自分以外の他人の手助けを受けなければ、生きて死んでいくことはできません。
ぜひ皆さんも、ご家族とのこのような対話を通じて、親の介護に対する早めのリスクマネジメントを心掛けてみてください。
(黒澤 史津乃)

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