GⅠ朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS。12月21日/阪神・芝1600m)の上位4頭がこぞって出走することで注目を集める今年のGⅠNHKマイルC(5月10日/東京・芝1600m)。

実はこうした例は、過去10年で一度だけある。

 それは、2019年のこと。このときは、朝日杯FSを制したアドマイヤマーズ、2着クリノガウディー、3着グランアレグリア、4着ファンタジストが出走。朝日杯FSのあと、GⅠ桜花賞(阪神・芝1600m)を完勝したグランアレグリアが断然の1番人気となったが、GⅠ皐月賞(4着。中山・芝2000m)から転戦してきた2番人気アドマイヤマーズが戴冠を遂げた。

 となれば、今年も朝日杯FS組には注意が必要だろう。しかも、今年は4頭とも有力視され、上位人気が予想されるだけになおさらだ。

 なかでも、注視すべきは朝日杯FSの勝ち馬で、2歳王者に輝いたカヴァレリッツォ(牡3歳)。前走の皐月賞(4月19日)では13着と大敗を喫してしまったが、実績あるマイル戦での巻き返しが期待されている。

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 確かに、朝日杯FSでのカヴァレリッツォは強かった。絶妙のペースで運んで逃げ込みを図ったダイヤモンドノット(牡3歳)を、文字どおりグイグイと力強い追い上げを見せてゴール直前で差しきった。

 勝ち時計は1分33秒2。

当日は重馬場だったにもかかわらず、過去10年で3番目に速い時計だった。結果、JRA賞で最優秀2歳牡馬に選出されたのも納得である。

 そうして、朝日杯FSから直行で挑んだ皐月賞でも3番人気に支持された。だが、そこでの走りからは2歳王者の"らしさ"というものは、ほぼ見られなかった。

 スタート後に先手を奪った2頭がそのまま1着、2着となった今年の皐月賞。前半の800m以降はすべて、1ハロン11秒台が刻まれていったよどみない流れのなか、カヴァレリッツォも前2頭の直後、3~4番手につける絶好の位置取りにあった。

 しかしながら、全馬が仕掛けていく直線を迎えてからがさっぱり。直線半ばもいかないうちにズルズルと後退し始めて、馬群に沈んでいった。

 いかにも2000mという距離が長い、という負け方だった。実際、同レースで手綱を取ったダミアン・レーン騎手も、敗因の第一に距離面を挙げている。

 だとすれば、すなわち、もし距離だけが原因であれば、適距離に戻るNHKマイルCでは巻き返しが見込める。現に朝日杯FSの覇者が皐月賞で敗れ、NHKマイルCで捲土重来を果たした馬は過去10年で2頭いる。

今回、カヴァレリッツォがそこに名前を連ねても不思議ではない。

 ただ一方で、こんな声もある。

 皐月賞は前有利の展開にあって、3~4番手の好位を追走。しかも内ラチぴったりの経済コースを運んだ。道中、さして不利もなかった。それでいて、ふた桁着順。いくらなんでも負けすぎではないか、というものだ。

 そもそも、過去10年で2頭いる皐月賞敗戦からの巻き返し組にしても、皐月賞では4着、3着と掲示板を確保している。それを思えば、13着と惨敗したカヴァレリッツォの強さがどれほどのものか、疑問の声が挙がるのも無理はない。

 振り返れば、朝日杯FSのパフォーマンスを額面どおりに評価せず、いくらか割り引く必要がある、と見ていた関係者は数多くいた。とある元ジョッキーも、朝日杯FSは「いろいろなことがうまくハマった」「騎手が上手に乗っていた」と言って、皐月賞に向けて同馬のことを高く評価することはなかった。

 また、関西の競馬専門紙記者はカヴァレリッツォについてこう語る。

「カヴァレリッツォには、他の馬を気にする、という弱点があります。それゆえ、馬込みに入ったり、窮屈な競馬を強いられたりすると、力を発揮できないことがあります。

 皐月賞がそうでした。内ラチ沿いを運んでいたと言っても、ずっと外の馬からのプレッシャーがあったし、スムーズに気分よく走っていた、という状態ではなかった。

 翻(ひるがえ)って、朝日杯FSでは騎手が馬込みを避けるように乗っていました。加えて、偶然か否かはわかりませんが、勝負どころを迎えた際、馬群がバラけて内がポッカリと空いて、進路が開けました。そこを突いたら、一気に伸びていきました。

 GⅠは展開や状況が恵まれただけで勝てるようなレースではありませんから、カヴァレリッツォの朝日杯FS優勝に関しては、騎手の好騎乗が多分に影響したと見ています。そういう意味では、NHKマイルCも決して楽観視はできません」

 さらに今回、皐月賞で手綱を取ったレーン騎手から西村淳也騎手に乗り替わりとなる。乗り難しそうな馬にあって、これもまた懸念材料となる。

 希望があるとすれば、皐月賞よりも相手関係がラクになることか。

 注目の3歳マイル王決定戦。

はたして、2歳王者の華麗なる復活劇は見られるだろうか。

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