契約成立の方式による基本分類には、諾成(だくせい)契約・要式(ようしき)契約・要物(ようぶつ)契約の3つがあります。このうち諾成契約とは、当事者の合意だけで成立する契約であり、不動産取引の大部分がこれに該当します。
本コラムでは、諾成契約の意味や要物契約・要式契約との違いについてわかりやすく解説します。また、不動産投資に関連する具体的な契約の種類や、諾成契約であっても契約書を作成すべき理由についても詳しく説明します。
■諾成契約とは|申し込みと承諾だけで成立する契約のこと
(画像:PIXTA)諾成契約とは、民法による契約分類のひとつであり、当事者の合意があれば成立する契約のことをいいます。書類の交付、物の受け渡しは必要なく、当事者間の合意のみによって法的効力が生じることが特徴です。
法律上、世の中の契約の大部分は諾成契約であり、契約書の作成なしで成立します。これは、民法第522条1項の諾成契約の定義に記載されており、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申し込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」とされています。そのため、不動産の売買のような高額な取引であっても、口頭での合意が成立した段階で契約上の義務が生じることになります。
実務上は、トラブルを回避する目的から、不動産取引のような重大な契約については契約書が作成されるのが一般的です。ただし、この場合の契約書はあくまで「記載された内容どおりに契約が成立したこと」を証明するための証拠のひとつであり、契約書の存在が契約成立の要件というわけではありません。
■要式契約・要物契約との違い
諾成契約は当事者間の「合意のみ」で成立しますが、要式契約と要物契約は、成立にあたって合意以外の要素が必要とされます。法律上は諾成契約が基本形とされているため、要式契約や要物契約については、法律にその旨が個別に明記されています。
諾成契約・要式契約・要物契約の特徴を整理すると、次のとおりです。
諾成契約当事者の合意のみで効果が生じる契約要式契約書面や届出などの法律で定められた方法によって効果が生じる契約要物契約契約対象物の引渡しによって効果が生じる契約要式契約とは、当事者間の合意に加えて書面や届出などの法律が定めた形式によって効果が生じる契約のことをいいます。保証契約はその代表例であり、民法第446条2項において「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と明記されています。不動産投資においても、住宅ローンなどを組む際に債権者と保証人の間で締結される保証契約は要式契約に該当し、契約書の作成が不可欠です。
要物契約とは、契約が成立するために、当事者の合意に加えて、契約対象物の引渡しが必要とされる契約の類型です。書面によらない口約束の金銭消費貸借がその典型例です。民法第587条には「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と明記されており、実際に金銭の授受や対象物の引渡しが行われて初めて契約が成立します。口頭で貸す約束をしただけでは、法的な契約としての効力は生じません。
■諾成契約・要式契約・要物契約の具体例
諾成契約・要式契約・要物契約のそれぞれに該当する契約の種類を把握することで、実際の不動産取引の場面でも判断がしやすくなります。代表的な契約について、以下に整理します。
諾成契約・不動産売買契約・贈与契約
・不動産賃貸借契約
・交換契約・雇用契約
・請負契約
・委任契約
・組合契約
・終身定期金契約
・和解契約
など要式契約・保証契約
・諾成的消費貸借
・定期借地契約
・定期建物賃貸借
・任意後見契約
・仲裁合意
・遺言
など要物契約・書面によらない消費貸借契約
このように、私たちが日常的に接する多くの契約が諾成契約に分類されることがわかります。一方、要式契約や要物契約は限定的であり、法律上に特別な定めが置かれている契約類型です。
■2020年民法改正により諾成契約となった契約類型
2020年の民法改正(2020年4月1日施行)によって、これまで要物契約とされていた一部の契約が諾成契約に改められました。諾成契約に変更された主な契約類型は次のとおりです。
・代物弁済契約(民法482条)
・書面等による消費貸借契約(諾成的消費貸借契約)(民法587条の2)
・使用貸借契約(民法593条の2)
・寄託契約(民法657条)
実は使用貸借契約(不動産などの物を賃借人に無償で貸し出し、後に返却してもらう契約)については、要物契約と定められていた旧民法下においても、実務上は当事者間の合意のみによって契約が成立するものとされていました。2020年の民法改正は、法律をこの慣習に合わせて改正したものとなっています。
このように契約に関しては、場合によっては法令の文言よりも裁判例や慣習のほうが重視されることもあるため、判断に困った際には弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
■不動産投資に関連する諾成契約
不動産投資においても、実際の取引の大部分が諾成契約に該当します。ここでは、不動産取引に関連する代表的な諾成契約について、特に注意すべき点とあわせて解説します。
●不動産売買契約
不動産売買契約とは、売主の財産権(不動産)を買主に移転すること、買主が売主に代金を支払うことを約することによって成立する契約であり、売主と買主の双方において意思表示が合致した時点で成立する諾成契約になります。ただし、合意内容の明確化やトラブル防止のため、実務上は契約書を作成することが一般的です。
なお、売買契約では契約時に手付金を支払いますが、手付契約は手付金の授受があるため、売買契約の成立要件ではなく、要物契約に該当します。
また、契約書とは別に、宅地建物取引業者は買主に対して重要事項説明を行うことが法律で義務づけられており、書面での交付も必要です。
●不動産贈与契約
不動産贈与契約とは、贈与者が財産を無償で相手方に与える意思表示に対し、受贈者が受諾することで成立する諾成契約です。
ただし民法第550条では、「書面によらない贈与は履行が完了する前であれば撤回できる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と明記されています。そのため口約束だけで贈与契約自体は成立するものの、引渡しの直前になって贈与を撤回された場合でも、原則として債務不履行責任を追及することはできません。
そのため、不動産の贈与を行う場合には、贈与の対象や時期について書面を作成すること(書面による贈与)をおすすめします。
●不動産賃貸借契約
不動産賃貸借契約とは、賃貸人が物件を使用させる義務と賃借人が賃料を支払う義務を持ち、貸主と借主の合意のみで成立する諾成契約です。原則として文書または口頭で効力が生じます。ただし、賃料や契約期間、禁止事項などの条件を明確にするために、実務上では書面による契約書が作成されることが一般的です。
不動産売買契約と同様に、宅地建物取引業者が媒介する場合は、借主への重要事項説明と書面交付が法的に義務づけられています。
■不動産投資に関連する要式契約
諾成契約が中心となる一方で、いくつかの重要な場面では要式契約も用いています。要式契約では契約書の交付が法律上の成立要件とされているため、書面の作成を怠ると契約そのものが無効となるリスクがあります。
不動産投資に関連する主な要式契約は次の3つです。
・保証契約(民法第446条)
・定期借地契約(借地借家法 第22条)
・定期建物賃貸借契約(借地借家法 第38条)
保証契約とは、債権者と保証人となる人の間で結ばれる契約であり、主たる債務者がその債務を履行しない場合に、保証人が代わってその責任を負う契約になります。
保証人は債務者に代わって弁済義務を負うという大きな負担を引き受けるため、その真意を確認する目的から、民法上、書面での契約を義務付けることで、保証人の権利を保護する目的があります。
定期借地契約および定期建物賃貸借契約も、書面の交付が法律で義務づけられた要式契約です。これらの契約では契約期間が50年など長期間にわたることも多く、締結時の担当者が不在になる可能性があります。また、原則として契約の更新ができないため、借主がこのリスクを十分に認識したうえで契約を結ぶよう、書面による明示が求められています。
定期借家契約の内容やメリット・デメリットについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】定期借家契約とは?メリット・デメリットを借主・貸主の立場から解説
■諾成契約であっても契約書を締結しておくべき理由
諾成契約は当事者の合意のみで成立するため、法律上は契約書がなくても問題ありません。しかし、不動産の取引においては売買契約では金額が大きく、賃貸借契約では長期間の契約になるため、実務上は諾成契約であっても、書面による契約書を作成するほうがいいでしょう。
ここでは、諾成契約であっても契約書を締結すべき理由について解説します。
●当事者間の合意内容を明確にするため
口頭による合意は、時間の経過とともに記憶が曖昧になったり、当事者間で解釈の食い違いが起こったりするといったリスクがあります。契約書を作成することによって、賃料・支払条件・引渡し時期・禁止事項といった合意内容を文書として明確に記録することができます。後に生じやすい「言った・言わない」のトラブルを未然に防ぐことができます。
不動産投資では契約関係が長期にわたるケースも多いため、当初の合意内容を書面で残すことは、円滑な取引・運用のための基本といえます。
●紛争化した際の証拠となるため
万一トラブルが発生し、裁判などの法的手続きに発展した場合、契約書は合意内容を客観的に示す証拠となります。口頭の合意だけでは、その内容を第三者に証明することが難しく、紛争の解決に余分な時間とコストがかかります。
一方、契約書があれば、合意した内容を具体的かつ客観的に示すことができるため、迅速な解決が期待できます。
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