ファッションECの「ZOZO」香りのサービスを取り込み 新たな収益源を育成

ファッションEC(電子商取引)「ZOZOTOWN」を運営するZOZO<3092>は、香りのプラットフォーム「カラリア」を運営するHigh Link(東京都品川区)を子会社化した。

ZOZOTOWNを強化しつつ、新たな収益の柱を育成する中期経営計画の方針に沿ったもので、同計画公表後の第一弾のM&Aとなる。

同社は同計画の実現手段として「自社での事業開発に加え、M&Aも積極的に活用していく」としており、今後もファッション周辺領域でM&Aを検討するとみられる。

AIへの危機感を受け計画を策定

2026年4月に公表した2026年3月期の決算説明資料で、2030年3月期を最終年とする4年間の中期経営計画を公開した。

同社は2025年12月に公表した「コーポレートガバナンス・コードに関する当社の取り組みについて」の中で、「数値目標をコミットメントする中期経営計画を開示していない」としていた。

一方、2026年3月期の決算説明会では、AI(人工知能)の影響で事業環境が大きく変わり、ファッションECに集中するだけでは次の成長機会を逃す可能性があり、既存事業への対応を怠ればファッションEC自体が先細る可能性があるとの認識を示した。

こうしたAIによる購買行動の変化への危機感から、明確な道筋を持って事業を進める必要があると判断し、中期経営計画を策定した。

この中期経営計画の中で、ZOZOTOWNの事業をMORE FASHION領域とし一段と強化するとともに、新たに海外事業をGLOBAL領域、ファッション周辺事業をNEAR FASHION領域とし、両領域で新規事業に取り組む方針を示した。

NEAR FASHION領域では、国内新規事業として、ZOZOTOWNユーザーに喜ばれるファッション周辺領域で、事業化に向けた検証を進める。

2026年3月期の決算短信では、NEAR FASHION領域を国内新規事業の収益源に育てる方針を示したうえで、実現の手段として「自社での事業開発に加え、M&Aも積極的に活用していく」としている。

今回のHigh Linkの子会社化は、このNEAR FASHION領域の取り組みとなる。

High Linkは、香りの定期購入サービス「カラリア 香りの定期便」をはじめ、香りの情報メディア「カラリアマガジン」、香りのライフスタイルブランド「カラリアホーム」などを展開している。

ファッションと親和性が高い香水を中心にした事業をグループに取り込むことで、フレグランス市場に事業領域を広げるとともに、定期購入サービスをはじめとする販売手法を取り入れ、ファッション周辺領域での事業展開を加速する。

同社は事業化の事例として今回の香水・フレグランスのほかにも、スキンケア・コスメ、ヘアサロン・理容室、フィットネス・ジム、エステ、脱毛、ネイル、メンズ美容、ホワイトニングを挙げている。

同社がM&Aを積極的に活用する方針を示していることから、今後もこうしたファッション周辺領域がM&Aの検討対象となる可能性がある。

AIエージェント時代に対応

中期経営計画で示したMORE FASHION領域は、ZOZOTOWNを既存事業の成長の中核とし、稼ぐ力を原資に規律ある投資を進める領域と位置付ける。

新規ユーザー獲得ではリアル接点を増やし、商品面ではK-FASHIONブランド(韓国発のファッションブランド)を拡充する。

さらにAIエージェント(利用者に代わって商品を探し、提案する人工知能サービス)時代に向け、ZOZO独自の流行や感性に関わる商品データ、購入に近い顧客データの活用も進める。

GLOBAL領域では、北米・欧州でテクノロジーを活用した事業に取り組む。

ボディスキャン(体型計測)技術を用いたZOZOFITを通じ、体型変化データを活用した体型管理サービスの事業を開拓する。

さらに、ファッションECプラットフォームを運営する英国子会社LYSTを通じ、ファッション特化のAIエージェント領域でも事業化を進める。

目標は調整後EBITA900億円

ZOZOは2019年にヤフー(現LINEヤフー)の傘下に入ったあと、2020年にアパレルブランドの企画・運営のyutoriを子会社化(2023年12月に株式の一部売却に伴い連結除外)したほか、2025年に英国LYST LTDを子会社化した。

今回のHigh Linkの子会社化はこれに次ぐもので、同社沿革で確認できる2020年以降の子会社化では3件目となる。

ファッションECの「ZOZO」香りのサービスを取り込み 新たな収益源を育成

同社は2030年3月期の数値目標として、調整後EBITA900億円を掲げる。

調整後EBITAは、営業利益にのれん償却額やM&A関連費用を加えた指標で、買収に伴う償却費や一時費用の影響を調整した収益力を示す。

2027年3月期は、売上高は2419億円(前年度比5.9%増)、調整後EBITAは779億円(同7.2%増)を見込む。

調整後EBITAの目標達成には、ZOZOTOWNの成長に加え、M&Aを通じて取り込む新規事業を収益化できるかがポイントとなる。

文:M&A Online記者 松本亮一

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