連続ドラマ「あなたのことはそれほど」(TBS系)が18日から放送開始した。火曜10時の「逃げ恥」「カルテット」枠だ。
二作品同様、金子文紀が演出。
今夜「あなたのことはそれほど」東出昌大のイカレっぷりに期待しているが、不倫の理由が薄すぎる
原作1巻

あらすじ


恋愛に夢を見る乙女な美都(波瑠)は、安定した幸せの為に運命は感じないが真面目で堅実な職を持つ涼太(東出昌大)のプロポーズを受ける。しかし、真面目だったはずの涼太が少しずつ変化、家庭内ストーカーのような状態になっていく。そんな中、美都は中学時代に好きだった有島(鈴木伸之)と再開し、トキメキを取り戻し不倫をしてしまう。

やたらポップな不倫物


この作品、原作はドロッドロのダブル不倫漫画。「昼顔」よりも怖いと言われている。上記の表紙も見るからに怖そう、決して爽やかな気持ちの時に読みたい物ではない。だが、不倫物なんだからそれは当たり前。
「昼顔」も「失楽園」もビジュアルポスターは、黒や灰色が基調でどんよりしている。

しかし、ドラマ版「あなたのことはそれほど」のホームページは、なぜか明るい。白が主で、ビビットな赤が眼に飛び込んでくる。そして何より、メインの4人がニッコリと微笑んでいるのだ。こちら(http://www.tbs.co.jp/anasore/)

「昼顔」も「失楽園」も誰一人笑ってなんかいない。みんな一様に影を落とし、陰惨な表情を浮かべている。
「あなたのことはそれほど」はドロドロ路線ではないのだろうか?

確かに内容も適度に軽い笑い所が設けられ、照明は明るく、セリフのノリも音楽も軽い。美都の少女漫画脳と、麗華(仲里依紗)や美都の母である悦子(麻生祐未)の現実的思考の対比もわかりやすく描かれている。テーマはダブル不倫で重いが、タッチは軽い。ということは、ラブコメの範疇なのだろうか? そういえば、2クール前の「逃げ恥」もそうだった。演出は明るくポップだが、内容は複数の社会問題と戦っていた。「あなたのことはそれほど」もそういった方向性なのかもしれない。
ポップで楽しい雰囲気を作った事で、ふとした時に不倫の重大さが浮かび上がってくる。というのが、狙いなのかもしれない。

せっかく東出昌大がイカレてるのにもったいない


今のところギャップが発揮されているのは、東出昌大演じる涼太だ。楽しい感じでやってるのかと思ったら、急に暗い寝室で眼を見開いて美都のスマホを覗き見をしたり、「ねぇみっちゃん結婚して良かったでしょ?」「みっちゃんが一番結婚早かったんだ?幸せだね」「ねぇみっちゃん!幸せ?」と、幸せの強要。プロポーズの言葉「一緒に幸せ探そう。結婚してください」も、あとあと考えると恐い。
身長が高い事も人を不安にさせる雰囲気を作る原因になっている。

しかし、この東出昌大の恐演も、今のところ美都がアホ過ぎて効果が半減してしまっている。どちらかと言えば、涼太の方が感情移入しやすく感じてしまう。なぜなら美都が不倫をしている理由が薄すぎるからだ。結婚して一年も経たずに、頑張っている夫をほったらかして、“トキメキ”とか言ってあっさりラブホテルへ。もう少し美都のまともな言い分が欲しい。
“夫が忙しくて相手してくれない”“夫が機能不全”“仕事のストレスが異常”など、何でもいい。トキメキが欲しいではアホ過ぎる。いや、むしろ中途半端だ。

どうせなら「旦那はめっちゃ良い人だけど、私、複数の男に愛されていないと耐えきれないタイプなの」とか、「結婚と恋愛は別だよ。ま、旦那が浮気したら慰謝料キッチリ取って離婚だけどね」とか、「日本人は性に関して奥手過ぎる!このままじゃ海外に置いて行かれちゃうよ!」とか、それぐらい言ってくれた方が気持ちいい。じゃないと、涼太の怖さも、美都が墜ちていく様も軽くなってしまう。

ラストの「私今、もんのすごく悪いことしてる」という言葉も全然聞こえなかった。

ということで、2話で注目したいのは美都の言い分だ。キャラクターは“運命大好き恋愛体質”とわかりやすい。後は中身、人間味が出てきたら一気にハネそうだ。波瑠はそれが出来る女優だ。

(沢野奈津夫@HEW)