裁判にかけられたジャガイモ!
ジャガイモには実はとっても不遇な時代があった。

ジャガイモはサツマイモやトマト、パイナップルなどとともにコロンブスが新大陸を発見の後、ヨーロッパに持ち込まれた野菜の一つであるが、食物としての評価は他の野菜に比べて低かった。
不ぞろいでこぶ状の形というのがまず嫌われた理由の一つ。
そして味。どんなに料理しても味がうすくてデンプンのようだとか不健康な食物であるとか当時の人々に散々な言われ方をしている。一部の人々には毒扱い、悪魔の食物とまで言われていたそうだ。

そして何と、ジャガイモはヨーロッパで公式の裁判にかけられ火刑の判決まで受けたことがあるのである(!)。

野菜が裁判って……と今では笑ってしまうような話だが、ヨーロッパでは600年頃から18世紀頃まで害虫獣を宗教裁判にかけて断罪していたという記録があるそうだ。この裁判は全ての生物に注がれる神の慈愛を受ける資格がないとして破門の処置をとるという意味で行なわれていたようである。では、ジャガイモの一体どこがいけなかったのか。

これまたびっくりのとんでもない理由だが、ジャガイモが雌雄同体で正常な受粉によってできる種子から成長するのではなく、塊根からの発芽によって増えるのは性的に不純だというのがその理由。性的に不純って……、あまりにも可愛そうなジャガイモ。

ジャガイモは栄養価もあり保存もきき人々の飢えを救う大切な食物であるといち早くその有用性に気づいて、盛んに栽培を奨励したプロシャのフリードリッヒ1世のような人物もいたそうであるが、悪いイメージはなかなか消えなかった。やっと栽培を広めることができるようになったのは18世紀も終わりの頃だったという。


遠い新大陸からヨーロッパにやってきて苦節200年。台所にあるジャガイモに「大変だったね」と声をかけたくなってしまった私です。(こや)
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