日本人の多くは、平仮名にしてごまかす、あるいは、カタカナで書くのではないだろうか。
でも、平仮名やカタカナのない中国の人たちは、ど忘れのとき、どうしているのか。
あるいは、難しい漢字を書けるようになる前の中国の子どもたちは、どうしているのか。
子どもを春から小学校に通わせる、知人の中国人夫婦に聞いてみると、
「中国では日本みたいにカタカナ、平仮名がないからねー。でも、『忘れたから書けない』ということはないね」
という。
でも、「忘れる」ことは誰だってあるのでは? そんなとき、「略字」のようなものを使ったり、アルファベットをあてたりするの? と尋ねると、こんなふうにきっぱり否定された。
「中国では、下に漢字を書いて、その上に読み方をアルファベットで書きます。たとえば、漢字2文字や3文字の言葉で、その中の1つでも漢字を忘れてしまった場合、アルファベットや音の同じ漢字をあてて使うのは、意味としては良いけど、『言葉』『文字』としてはダメ。ちゃんと辞書で調べて書きます」
うげ、厳しい!! さすがに、子どもはそんなこと、ないでしょう?
「いえ、子どもでも同じ。わからない漢字は辞書で調べて書きます」
つまり、「ど忘れした漢字」だけでなく、「知らない漢字」は、別の文字で代替するのではなく、「調べて書く」、あるいは「書かない」ということのようだ。
「中国では、読み方と漢字と、両方できなければいけないので、ローマ字と漢字を一緒に覚えます。これは子どもの頃からみんなそう」
でも、たとえば、「駅」という意味で使っている漢字(※日本語ソフトでは出ません)をはじめ、中国ではカンタンな漢字を使っていく傾向にあるようだけど、あれは「子どもでも書ける略字」ではないのですか。
「あれは、略字じゃなくて、新しい漢字。中国には、昔の漢字と新しい漢字があって、町では新字をたくさん使うようになってますよ」
省略ナシ、ごまかしもナシ。
(田幸和歌子)