まさに紙一重。被弾すれすれでパンチをかわしあった井上と中谷(C)Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA

 まさに衝撃的なワンシーンだった。

 5月2日、東京ドームで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチで、王者の井上尚弥(大橋)は、世界3階級制覇王者である中谷潤人(M.T)に3-0の判定勝ちを収めた。

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 5万5000人を動員した一大興行のトリを飾った井上と中谷。試合前から大衆のボルテージが異様な高まりを見せる中、両雄は持ち前のポテンシャルを存分に発揮。序盤からフェイントとスピードを利した世界基準の技術戦を展開した。

 リング上で繰り広げられたのは、漫画や映画の世界でしか見られないような緊迫の差し合い。井上が「お互いに打っては外して、打っては外しての技術戦を楽しんでいる。そんな感覚で楽しい試合でした」を振り返ったように、傑物同士が「これならどうだ」と言わんばかりに鋭いパンチを繰り出すも、間一髪で当たらない。ギリギリの攻防が続いた。

 とくに観衆を沸き立たせたのは、8回のワンシーンだ。中谷が井上の放った右のロングフックをスウェーしながらかわすと、井上も中谷の打ち下ろしとアッパーのコンビネーションを首と腰の動きだけで避けきったのだ。当たっていれば、有効打となるのは間違いない強烈なパンチの差し合い場内から拍手が向けられると、空気を察した両雄もニンマリと笑みを浮かべた。

 ハイレベルの攻防は、映像で目の当たりにしたファンの中でも「伝説」として昇華。

SNSでも話題沸騰となり、「0.3秒後が見えてる人たちの動き」「本当に映画の世界」「なんで笑えるんだ……すげぇ」「見れば見るほど引き込まれる至高の瞬間だわ」と、多くの人々が二人の攻防に酔いしれた。

 また、往年の名手も日本で生まれた名勝負に脱帽する。元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)は自身のXで、率直な感想を記している。

「イノウエは本当に凄まじかった。とくに前半に見せたあのスピードとパワーの融合は、まさに世代に一人レベルだ。そして、俺はナカタニにも称賛を送りたい。(井上に対して)武器が少し劣っていたかもしれないが、それでも彼は一歩も引かなかった」

 互いに人生を懸けて挑んだ決戦だった。死力を尽くしたからこそ、井上と中谷の攻防は、世界の人々に刺激を与えるものになった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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