「This is a pen.」とか「This is Japan.」とか。
中学校の英語で最初に出合うフレーズに、「こんなこと言う場面あるのかよ!」とツッコんだ人は少なくないのではないだろうか。


ところが、いま、英語教育がずいぶん変わっていることを、小4の娘の授業で知った。
まず自己紹介は「My name is ○○.」ではなく、「I am ○○.」。

しかも、「How are you?」と聞かれたら、私たちの中学時代には、腹が痛かろうと、熱があろうと「I'm fine, thank you.」と答え、「and you?」と聞き返すというところまでが1つのセットとして教えられたもの。
ところが、いまの小学生たちは外国人の先生に「How are you?」と聞かれて、「I'm hungry.(腹が減ってる)」とか「I'm thirsty!(のどが渇いてる)」とか「I'm sleepy.(眠い)」とか答えるらしい。授業中なのに! 相手は先生なのに! なんだかもう驚異的なフランクさだ。

そんな生きた英語教育に感嘆していたところ、ちょうど5月22日放送分『さまぁ~ず×さまぁ~ず』で三村が同様の話をしており、大竹も「そうだよな。日本語でだって『私の名前は大竹一樹です』なんて言わないもんな」と返していた。

「英語の成績は悪くなかったけど、英会話は苦手」という人も多そうな私たちの世代(30代)~それ以上の人たち。フランクに会話する小学生に圧倒されることもあるけど、これ、いつ頃から変わってきたものなのか。
文部科学省の初等中等教育局教育課程課教育課程企画室に聞いた。
「小学校の英語教育は『英語ノート』で定められたものに沿って、文法よりも英語に親しみを持ってもらうことを基本方針とし、歌や挨拶を中心に進めています」

2011年4月1日より全国の国公立小学校の5、6年生を対象に「年間35単位時間、週1コマ相当」の英語授業が始まる。
今年度と昨年度は移行期間として、英語教育の実施を各学校で自由に決められるようになっているが、現時点で全国の約97~98%が英語教育を始めているそうだ。


小学校の英語教育必修化には「単純に早ければ良いというわけではない」など、賛否両論があったわけだが、中学英語に関していうと、コミュニケーションが重要視されるようになったのは、もうずいぶん前かららしい。担当者はこんな話をしてくれた。
「私はいま29歳なんですが、私が中学のときにすでに英語は挨拶から入るようになってましたよ。学習指導要領は10年に1回変わっていますが、基準そのものは昭和52年度改訂と平成元年度改訂を比べてもそれほど変わっていません。ただし、具体的なあり方は時代の潮流にあわせて、『コミュニケーションの力』をより図るものに変わっています」

学習指導要領では平成元年度改訂の目標の部分に「外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」という文が記され、平成10年度改訂ではこれに加えて「コミュニケーション能力」という言葉が登場している。
「文法を教える順序は何十年も前から変わっています。もちろん音声だけのコミュニケーションでないので、文法も大事ですが、今は『聞く』『話す』『読む』『書く』の4つの力をバランスよく身につけることが重要と考えられているんです」

ひたすら文法を学び、宿題で英語の教科書の全文書き取りを散々やらされた自分などにとっては、「生きたコミュニケーション」は羨ましい限りです。
(田幸和歌子)
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