15日の未明に放送された「けいおん!!」第二期の最終回がもの凄い反響を呼んでいる。最終回放送直後、アニメ好きで知られるT.M.Revolution西川貴教がTwitterにて「あずにゃーーーーーーーーーん!……(´口`*)うわぁぁぁ~ん」と作中のキャラの名を叫ぶようにツイートしたところ、J-CASTやガジェット通信など名うての(?)ニュースサイトがその様子を一斉に報じたのだ。


といっても、僕自身は「けいおん!!」は名前くらいしか知らなかったし、他局や一般紙が先のような “事件”を取り上げたわけでもない。「まだ一般に認知はされていない?」とたかをくくっていたら、どうもそうでもないらしい。先日カラオケに行ったところ、40代の男が「けいおん!!」のテーマソングを歌っていたり、30代の女性は曲に合わせて踊っていたりもする。バンドをやっている女子高生の日常を描いた深夜アニメがそんなに盛り上がっているのか……?

しかし調べてみると、かなりすごいことになっているようで、オープニングテーマ「GO!GO!MANIAC」とエンディングテーマ「Listen!!」は、オリコンシングルチャートの初登場時に1位2位を独占。これは女性アーティストとしては1983年11月の松田聖子以来、なんと26年6か月ぶり、史上3組目の快挙なんだとか。またインターネットTVガイドの“録画率”調査でも、あの『龍馬伝』を押さえて堂々の1位を獲得している。もはや「1980年代の松田聖子、2010年代のけいおん!!」「福山よりも、あずにゃん」といった状態なのだ。

ところで。

個人的な話で大変申し訳ないのですが、僕は趣味で少々ベースを嗜んでいます。最近、ネット通販でベースアンプを買いました。Hartke(ハートキー)というメーカーのA100というモデルです。ところが購入前にこのアンプのスペックを調べていたら、やたらと「『けいおん!!』の秋山澪モデル」という言葉を見かけるのです。
Hartkeというメーカーがまさかアニメとタイアップということも考えにくいし、どういうことだろう……。とりあえず、エキサイトレビューの執筆陣で「けいおん!!」にも詳しそうな、たまごまごさんに事情を聞いてみました。

「作中でベースを担当する秋山澪が『10万円あったら、ほしいセット』にHartke A100とBOSSのマルチエフェクター、GT-10Bというセットを挙げているんです」(ライターのたまごまごさん)

ビックリしました。というのも、Hartke A100というアンプは、55cm(高さ)×46cm(幅)×40cm(奥行き)もある、かなり大きなアンプです。いくらバンドをやっているとはいえ、女子高生が自宅の部屋に置くようなアンプではありません。実際、宅配されたアンプの入った段ボールは事務所の玄関を埋め尽くし、同僚からは「邪魔なんですけど」と文句を言われる始末。重さも23kgあり、スタジオに持ち込むにも大人の男がカートを使ってようやく動かせるような代物です。

愛用しているプロミュージシャンも、伝説のベーシスト、ジャコ・パストリアスから元CREAMのジャック・ブルース、ウィル・リー、永井敏己、青木智仁……。プロのミュージシャンからも尊敬を集めるような名うてのプロが使用する、どちらかというと通好みのアンプです。バンドをやっているとはいえ女子高生にしてはセレクトが渋すぎます。秋山澪とは一体何者なのか……。

しかし彼女のことを調べてみて合点が行きました。
どうやら秋山澪というキャラクターは音楽については女子高生離れした知識の持ち主という設定のよう。ジミ・ヘンドリックス、コージー・パウエル、キース・ムーンなど、1960~1980年代に活躍したかなりマニアックなミュージシャンにも精通していて、“音楽オタク”としてのキャラクターづけがなされているようです。

レフティという設定もマニア心をくすぐります。左利きのベーシストといえば、ビートルズのポール・マッカートニー。ビートルズというとジョン・レノンの名前ばかりがクローズアップされますが、その楽曲の多くはレノン・マッカートニー名義。「ポールがいたからこそ、ビートルズというバンドは成立した」という熱烈なファンも少なくありません。

このように秋山澪一人だけを見ても「わかってるなぁ」というディテールのオンパレード。なるほど。「けいおん!!」には、40歳の誕生日を目前にしたプロのミュージシャンに「あずにゃーーーーーーーーーん!(´口`*)……うわぁぁぁ~ん」と叫ばせるだけの奥深い魅力があるということのよう。いまからちょっとDVDを借りに行ってきます。(松浦達也)
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