サッカーの試合中などでよく見られる、ボトルに口をつけずに水を飲む光景。あの、大きな口をあけてボトルの水を口めがけて流し込む部活中のような光景が、なんとインドでは日常的に見られるという。


インドでは老若男女問わず、ボトルの水を飲む際には大きく口をあけ、口に注ぐようにして飲む。これは街中でもオフィスでも学校でも同じように行われているという。この飲み方、通称「インド飲み」は、ペットボトルを飲むときのインド流マナーなのである。

インドの人達にとって水は、「共有のもの」という考え方があるという。一人が持っている水のボトルを回し飲みしたり、レストランでもテーブルに置いてある水差しから飲んだりするのはごく普通のことだそう。

そうやって、水を共有するに際して必要だったのが「インド飲み」なのだ。この、「ボトルに口をつけないで飲むこと」がマナーとなった理由は大きく2つある。

一つは、インド人が宗教上、「人が口を付けたものに、口をつけない」という考えを持っていることだ。
インド人の女性Tさんによれば、「宗教的に人が口つけた物は飲まない!あと、鍋とかみんなでつつく系のは無い! おばあちゃんでもインド飲み絶対するよ」とのこと。
よって、誰かに分けるかもしれないボトルには口を付けないでおくのである。
そして二つ目は、雑菌が繁殖するのを防ぐためである。インドの蒸し暑い環境下では、口を付けて飲んでしまうと、雑菌がボトル内に広まりやすく、水がすぐに腐ってしまう。
それを予防するためにも、口を付けずに飲む「インド飲み」がマナーとなったのだ。

実はこの飲み方、韓国でも同様に見られる光景だと言う。韓国でも、ペットボトルに入った飲み物を回し飲みする事が多く、またその際は必ずこの飲み方で飲むのだそう。もしかしたら、他の地域でも「インド飲み」がマナーとなっている所もあるのかもしれない。

なににせよ、このペットボトルに口を付けないで飲む「インド飲み」、そのやり方がやたらと難しい。慣れていないと、口に水が入らなかったり、量が多すぎて口からこぼれたりする。水量の感覚や角度調節が大切のようだ。まだ立ち止まって飲むのなら良いのだが、走行中の車の中や歩きながら飲めるようになるにはかなりの練習が必要そうである。

日本では、「お行儀が悪いのでは……」と思うようなこの飲み方、インドに旅行に行く際は飲む練習をしておくと良いかもしれない。ペットボトルなどの水を分けてもらう際や共有の水飲みコップから飲む際に、この飲み方ができていないと、かなりのひんしゅくを買ってしまう。うまく飲むためのポイントは、首を自分が思っているよりももっと垂直に傾けるようにすること。そして、口を自分が思っている以上に開ける事だ。
練習あるのみ!

もっとも、「あの子が口をつけたペットボトルに間接キス……」なんていう青春ロマンは、どうやらインドでは味わえないようである。
(あらみり)
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