昨今はそんな事ないらしいが、私は辛うじて「運動中の水飲み」を禁じられた世代だった。幼き頃に取り組んでいたリトルリーグ、特に夏季の練習は、今考えると正気の沙汰じゃなかったもの。

では、本当に辛い時はどうしてた……? 種明かしをすると、トイレに行く。そこで手を洗ってるフリして、便器上部から出る水を飲んじゃう。いや、大や小をする方ではなくてですね。上からの水で潤す。洗面台の水を飲んでいると、見つかる可能性が高いもんで。今考えると衛生的にアレだけども、背に腹は代えられなかったです。

ところで今、こんな物が話題になっています。株式会社ハートが昨年11月末に発売した『もこもこモコレット』は、便器からあふれた泡をストローで飲み干す食玩。なぜ、こんな物を作ったのか。悪ふざけにも程があるよ。
「子どもたちってウンチが大好きなんですよ。他社さんからもウンチのキャラクター商品が出ていて、バレンタインデー等で人気です。そこで、当社もと考えたのですが……」(担当者の青野さん)

しかし、あまりリアル過ぎるわけにはいかない。じゃあ、どうすれば良いのか?
「ある日、雑貨屋さんに行くと和式トイレの形をしたカレー皿を発見しました」と青野さん。そこからは、トントン拍子。まずは、トイレがあふれる場面が思い浮かんだ。そして「そういえば、ウチは粉末の清涼飲料が得意だったっけ」と、余計なことを思い出してしまう。ソーダ味とコーラ味を発売しているのですが、ソーダは青なのでブルーレットを意識してます。あと、コーラは茶ですからべ……」(青野さん)
いや、もう大丈夫です。

ところで、他人事ながら不安だ。今まで、クレームは来ていないんですか?
「クレームは来てません。社内プレゼン時にはかなり反対されたのですが、ひたすら信念で押し通しまして」(青野さん)。結果、会社側が折れた。トライアル的な商品化を、上層部が黙認してくれたのだ。

そして、反響は予想以上に。
「海外向け、特にアジア圏を担当する問屋さんからの問い合わせが寄せられています。台湾にはトイレをコンセプトにしたレストラン(お皿や座席がトイレ)がありますし、あの辺りを中心に展開するのかもしれません」(青野さん)
また香港のメディアでも紹介され、同社・香港支社が『もこもこモコレット』販売に乗り気になってしまっている。
「実は国内での売り上げは、さして伸びていないんですけどね(笑)」(青野さん)

恐らく、海外への波及は動画サイトを通じてなのだろう。この食玩を用いた、様々な動画が今までにアップされているようだ。
「市販のフィギュアをこのトイレに座らせると、サイズ的に丁度いいみたいです。なので、他社さんから発売されているボーカロイドのフィギュアを座らせる動画もありました」
ちなみに、ワールドワイドな反響を巻き起こしている動画はこちら。便器から泡があふれ、それを思いっきり吸ってしまっている。センセーショナルですな。



そして、その他の使い道もある。
「食べ終わったらただの容器ですので、プランターとして活用していただいたり、トイレの芳香剤入れとしてもピッタリです。『トイレの中にトイレを飾っちゃおう!』みたいな(笑)」(青野さん)

調子のいい事を言っているが、こんな使い方をしている人は多いらしい。
「お母さん方の嫌悪感を払拭する狙いもありました。だから、クレームが来ないのかな……」(青野さん)

実際に私も食べてみたのだが、意外とスリリングだ。便器から青や茶の泡があふれ出すと、条件反射でオロオロしてしまう。「オイ、俺って詰まるほどしたっけ!?」ってな心境に。そして、それを吸っちゃう。新境地を開拓しました。

そんなこの『もこもこモコレット』は、全国の玩具菓子コーナーで販売されている。価格は263円(税込み)。「ビックリするほど売れてる訳ではないのですが、好きな方には何個も大人買いしていただけてます」(青野さん)。お子さんだけでなく、大人も巻き込んでいる。しかも、大人買いするほどの。

これは、一つのクールジャパンだ。
(寺西ジャジューカ)