
25話は、こんな話
1868年、明治元年。山王寺屋が倒産し、眉山家は夜逃げしてしまう。心配したあさ(波瑠)が探しに行くと、はつ(宮崎あおい/さきの大きい立)は谷町の長屋にいた。
だが、はつはあさから逃げるように家の戸を閉めてしまう。
雁助、亀助は視聴率男?
4週の視聴率は上昇して、平均視聴率は22.3%
21話は23.6%と最高を記録、22話も23.4%だった。
21話は亀助(三宅弘城)がいい動きをし、22話では雁助(山内圭哉)が啖呵切った回だ。
25話でもふたりは楽しませてくれた。
亀助が独り身であることを雁助がからかうと、今度は亀助が雁助の傷(嫁と娘に逃げられた)をえぐりだす。
ふたりの軽妙なやりとりによって(逃げられた、のところでへんな音楽がかかるのが可笑しい)、彼らの置かれた状況がわかった。ふたりとも現在は独り身。
言ってはいけないことがある
亀助に、「どんなえらい喧嘩してるときでも、相手がずきーんとこう突き刺さるようなそんなとこ刺したらあかんて言うてますがな」と注意する正吉(近藤正臣)。
これは25話の名台詞。どんな局面でもひとを憎まず、とどめを刺さず刀背打ちしろという教訓だろうか。
そして雁助が嫁と娘はいまどこに・・・と思いをめぐらせたその後、今度はあさが同じように大事な姉がどこに行ったか案じることになる。
やがて見つかったはつは、あさを避ける。
もちろん自分の堕ちた身の上を見られるのもいやだろうし、惣兵衛(柄本佑)から、実は新次郎(玉木宏)と結婚するはずだったと聞かされてしまったのだから余計だ。
どんなことがあっても仲の良いあさを避けるなんてことはないはずのはつに、強い拒否の行動をさせるには、これくらいのショックが必要だったのかもしれないが、言わなきゃいいのに、惣兵衛のあほ〜とじりじりした。
作用し合うエピソード
惣兵衛の迂闊な発言が、はつの気持ちに影を差す。ひとあしらいが不器用な惣兵衛に比べて、新次郎はやっぱり器用。
あさが山王寺屋に様子を見に行くとき、新次郎は三味線の師匠・美和(野々すみ花)のとこにいくついでと言い、あさは少々嫉妬心を刺激される。
これは新次郎が、五代才助とあさの関係を気にしてのことではないかと思えるのだ。
まんまとあさは旦那さまに気持ちを集中させる。
結果的には姉の一大事で、夫婦仲をよくする作戦はそれどころではなくなるのだが。
それでも新次郎の心境をいろいろ想像して楽しめるし、さらに、三味線の稽古(父の手前、謡と誤摩化す)で石炭の商いの話を聞いてきたと言う新次郎の台詞は、この先の展開の前振りになっている。
登場人物のなにげない言動がいろいろな場で作用していく、複雑で細かい編み目のような脚本は、視聴者を着実に捕まえている。
大阪の両替商が次々と倒産するなか、加野屋もどうするか話し合っているとき、
幼い榮三郎が一人前のことを言い、亀助が「さすが跡取り!」と持ち上げると、正吉が咎める。これは新次郎に気を遣ってのことか。
やっぱり亀助は少々空気が読めない男のようで、新次郎にとってお家のことは「ずきーんとこう突き刺さるようなそんなとこ」なのかもしれない。
(木俣冬)
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