藤田まこと演じる人情刑事・安浦が粘り強い捜査で犯人を逮捕しつつ、「罪を憎んで人を憎まず」なセリフでほろりとさせるのが持ち味のドラマだった。
♪テレレレレ~テ~レレレ~レレ~、というオープニング曲ともに記憶している方も多いだろう。「テレレレでは思い出せない」という方も、動画を検索していただければ、懐かしいオープニング曲にたどり着けるはずだ。
1988年から2005年までの17年間にわたり、全444話も放送された『はぐれ刑事』の魅力を探ってみた。
魅力的だった山手中央署の刑事たち
『はぐれ刑事』は、東京都内の山手中央署という架空の警察署が舞台となっている。全17年間を通じて出演したレギュラー陣には魅力的なキャラクターが勢ぞろいしていた。
まずはなんといっても、主人公の安浦刑事(藤田まこと)があげられる。「やっさん」の愛称で親しまれているベテラン刑事である。ノーネクタイに地味なスーツ姿でさえない風貌だが、捜査においては妥協を許さない凄腕刑事だ。周囲からの人望も厚い。
さらに、安浦の所属する刑事課の課長・川辺(島田順司)も視聴者に愛された登場人物だった。
川辺課長は、上司には揉み手で媚びへつらい、部下には厳しく、妻には頭が上がらないという典型的な中間管理職として描かれている。常にメガネが下にずれており、単独行動をとる安浦に対しては嫌味を言うことが多い。
さらに山手中央署には、横溝署長(梅宮辰夫)・田崎刑事(岡本麗)・里見刑事(ぼんちおさむ)など個性的なメンバーがそろっている。
サブタイトルに見る安浦刑事の苦悩
『はぐれ刑事』には、1話ごとに印象的なサブタイトルがつけられているのも特徴だ。「死亡推定時刻の謎! ポケベルの女」や「オヤジ狩り!? 使い捨てカメラの女」といった90年代当時の世相が現れたものも多い。
一方で、安浦刑事の苦悩をうかがわせるサブタイトルも存在する。
・「ソープランドから拉致された安浦刑事」
・「痴漢に間違えられた安浦刑事」
・「潜入捜査! ホストになった安浦刑事」
・「懐メロコンテストに出た安浦刑事」
・「男の売春! 安浦刑事の潜入捜査」
・「安浦刑事がリストラされる!?」
・「安浦刑事が漫才師に!? 泣き笑いの女!」
・「安浦刑事が女になった!? 母と娘の秘密!」
・「安浦刑事が魚屋に婿入り!? 匂いを嗅ぐ女」
・「殺人現場から消えた女 安浦刑事、弁当屋になる!?」
安浦刑事なら、おかずひとつひとつにまで手を抜かない弁当を作りそうではあるが――。
『相棒』へとつながるテレ朝・水曜9時の刑事ドラマ
『はぐれ刑事』の後継として、現在頻繁に夕方の再放送が行われている刑事ドラマが『相棒』(テレビ朝日系)だ。
実は『相棒』は、『はぐれ刑事』と同じテレビ朝日系列の水曜夜9時の刑事ドラマ枠で本放送されている。テレビ朝日は伝統的に、この時間を刑事ドラマ枠としている。
この枠の刑事ドラマは基本的に1話完結である。1時間で必ず犯人が逮捕され、事件が解決する。そのため、放送回の順序を入れ替えても支障がなく、再放送に適している。
『はぐれ刑事』も『相棒』も、主人公の刑事が行きつけの、女将さんのいる飲み屋のシーンが、毎回5分ほど挿入されるというお約束も継承している。
『相棒』の杉下右京(水谷豊)は、今や安浦刑事に並ぶ「人気刑事」となった。水9テレ朝刑事ドラマ枠から、今後どんな個性派刑事が登場するのか楽しみだ。
(近添真琴)
※イメージ画像はamazonよりはぐれ刑事純情派 [DVD]