落ち込んでいるヒマもなく、後に結婚することになる、ピアニストであり作曲家・内藤法美(長谷川純)との出会い&恋愛がスタートした越路吹雪(瀧本美織)。
例のごとく内容盛りだくさんだったが、やはり今週の注目ポイントは瀧本美織→大地真央というキャスト変更だろう。
第1話の冒頭でいきなり大地真央の歌唱からスタート。週のはじめも毎回、大地真央の「愛の讃歌」ではじまっており、さすがの迫力に期待感が高まっていたが、いよいよ本編にも大地真央演じる越路吹雪が登場だ。

吉田栄作の吉田栄作力が相変わらずスゴイ
長い期間にわたって人生を描く系のドラマで問題となってくるのが、年齢に応じてのキャスト入れ換えタイミング。
『越路吹雪物語』においても、コーちゃんの子ども役→青年期の入れ替わりは、子ども時代を演じていた岩淵心咲ちゃんが歌いながら村を歩いていると、突然に画面がフリーズしてセピア色に。「そしていくつもの季節が過ぎて行き……」というナレーションで瀧本美織にチェンジしていた。
普通はこのように「○年後」みたいなテロップ、もしくはナレーションとともにスルッと入れ替わるパターンが多いが、今回の青年期→絶頂期チェンジは「愛の讃歌」歌唱中にピントがぼけたと思ったら唐突に瀧本美織→大地真央に進化という、なかなか斬新な演出だった。
しかも瀧本美織→大地真央だけでなく、岩谷時子役の木南晴夏→市毛良枝、内藤法美役の長谷川純→吉田栄作も順番にピントぼけ〜役者変更していくという、「戦隊ヒーローの変身シーンかよ!」もしくは「ポケモンの進化かよ!」と言いたくなるような謎演出。
歌姫・越路吹雪のドラマだけに、歌とともに成長させたいという意図があるのだろうか?
大地真央&市毛良枝に関しては第1話にも登場していたので「あ、変わった!」くらいで、すんなり受け入れることができたが、吉田栄作の登場には意表を突かれて笑ってしまった。
長谷川純と吉田栄作、顔の造作的には比較的似ていると思うのだが、吉田栄作って、歳を取ってもにじみ出てくる吉田栄作力がハンパなくて、役とか関係なく「吉田栄作出てきたー!」感がすごいのだ。
ドラマ『トットてれび』での、トットちゃんの親父役でもまあまあ笑わされてしまったが、今回もヤラれたな……。
大地真央の美魔女っぷりは異次元レベル
別の役者がひとりの人物を演じるのだから当たり前だが、成長にともなう役者変更にはどうしても違和感が出てきてしまうもの。
しかし、吉田栄作で笑っちゃったのはともかくとして、木南晴夏→市毛良枝の変化は、かもし出す雰囲気もよく似ており、違和感が少なかった。
木南晴夏ちゃんは『20世紀少年』や『勇者ヨシヒコ』でのハイテンションな演技のイメージが強かったが、今回の岩谷時子役では感情の起伏を抑え、マネージャーとして越路吹雪を裏から支えた時子にふさわしい演技をしていたこともあり、そこから市毛良枝という継投は雰囲気バッチリだ。
ただ、コーちゃんがパリへ留学してエディット・ピアフのステージに衝撃を受けたのが1953年(越路29歳)。内藤と結婚するのが1959年(越路35歳)と考えると、ドラマ内での時間経過はせいぜい3〜5年くらい。
さすがに3〜5年で木南晴夏→市毛良枝になるかと言われれば、「いきなり老けたなぁ〜、時子」とは思ってしまうが。
その点、瀧本美織→大地真央の自然さよ。
おそらく瀧本美織のラストが30〜32歳くらい、大地真央スタートが35歳前後だと思われるのだが、大地真央って今62歳よ!?
美魔女っぷりがハンパない。
もちろん、能天気で食いしん坊、化粧っ気もなかったコーちゃんから、トップスターとしてのカリスマ性を放ち、化粧も濃いめな越路吹雪へとじょじょに演技を変化させていった瀧本美織の力量があったからこそ、大地真央へ自然にバトンタッチできたというのもあるが、やはり大地真央の若さはハンパない。
越路吹雪が亡くなった年齢(52歳)よりも既に年上なのに……。
ドラマ間に大地真央が出演する化粧品「Suhadabi」のCMが入っているが、あの美魔女っぷりを見せられたら、メイン視聴者のオバサマたちは買いたくなること必至だろう(テレ朝の営業部、有能だぞ!)。
やはり頼りはお時さんか
役者チェンジと吉田栄作にばかり気を取られてしまった今週だが、越路吹雪の歌手人生的にも重要な局面が訪れていた。
河野美保子というひとりの女性としての自分と、誰もが知るスターである越路吹雪としての自分との間でバランスを崩している様子がたびたび描かれており、今後が色々と心配なのだ。
プライベート、仕事両面で支えてくれるはずの恋人・内藤(吉田栄作!)も「仕事よりアナタが大事」という越路に対して「ありがとう、だけどあなたは間違っている」と突き放していた。
そこで頼りになるのは、やはり時子ということになるのだろうか。
これから、大地真央が越路吹雪の30代〜晩年までという難しい時期を演じていくことになるが、その辺をどのように演じ分けていくのかも注目だろう。
(イラストと文/北村ヂン)
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