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二・二六事件はどう描かれてきたか更に検証「パトレイバー」にも登場した事件のイメージ

       
二・二六事件はどう描かれてきたか更に検証「パトレイバー」にも登場した事件のイメージ
押井守も『パトレイバー』でオマージュを捧げた鈴木清順監督の映画『けんかえれじい』

21世紀に入ってからの作品では、篠田正浩監督の引退作となった映画『スパイ・ゾルゲ』(2003年)にも二・二六事件が一挿話として出てくる。本作の主人公で、ジャーナリストとして日本に滞在していた(じつはソ連共産党員として諜報活動を行なっていた)ドイツ人リヒャルト・ゾルゲ(イアン・グレン)は事件発生を、協力者だった尾崎秀実(ほつみ/本木雅弘)から知らされると、ドイツ大使館に赴いて車を出してもらい、東京の各所をまわりながら情報を収集する。劇中ではまた、尾崎の勤務していた東京朝日新聞社が青年将校に襲撃される様子も描かれていた。

なお、『スパイ・ゾルゲ』は戦前の東京の風景などをCGによる大規模な合成で再現したことで、公開当時、話題を呼んだ。再現した風景の色合いがモノクロ写真に彩色したようでもあり、その点が『いだてん』の映像にも通じる。

このように二・二六事件は、1990年代以降もさまざまな映像作品でとりあげられてきた。しかし、かつての『叛乱』や『226』などのように真正面から事件をとりあげた大作はめっきりなくなった。

この間、二・二六事件の研究は、新資料の公開もあって急速に進み、事件の実像もかなりくわしくあきらかとなっている。かつて青年将校たちに対しては、その「無計画性・非現実性」を指摘する論調が強かったが、その後の研究により、彼らはかなり綿密なクーデター政権奪取計画を企てていたことが判明している。計画は、それにいち早く気づいた内大臣秘書官長の木戸幸一が、昭和天皇に反乱軍の鎮圧を強く訴えたため、結果的に実現にはいたらなかった。だが、木戸の働きがなければ、青年将校の構想が実現する可能性はきわめて高かったとする見方もある(筒井清忠『二・二六事件とその時代』ちくま学芸文庫)。研究であきらかになったこうした政治的駆け引きを中心に事件を描いたのなら、これまでとはまた違った二・二六映画・ドラマができるような気がするのだが。(近藤正高)

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