『半沢直樹』ねちっこさがパワーアップ! 黒崎を演じる片岡愛之助がドラマにもたらしたエンタメ性
イラスト/ゆいざえもん

黒崎、『半沢直樹』6話に再度襲来!!

毎週毎週、熱いバトルが繰り広げられ、話題が尽きない日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜 よる9時〜 TBS系)。第6話(8月23日放送)は、半沢直樹(堺雅人)が巨大な航空会社の再建に挑む、池井戸潤の原作小説「銀翼のイカロス」編に入った第2話(通算だと6話め)。

第6話の最大の見どころは金融庁の黒崎俊一(片岡愛之助)の登場。
前半の「ロスジェネの逆襲」編でも第3話に登場し(番組表には「黒崎襲来!!」とあった)、視聴率を23.2%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と押し上げた。

第2シーズンでは黒崎のねちっこさがパワーアップ

金融庁から異動して、やたら長い肩書の「証券取引等監視委員会事務局証券検査課統括検査官」としての登場で、半沢が出向している東京セントラル証券に「お久しぶりね」とやってきて、容赦ない細かいチェックで半沢を責めたてた。このときの半沢(堺雅人)の苦々しい顔といったら。思い出すたび笑えてしまう。

半沢を「直樹」呼ばわりする黒崎。ねちっこいオネエ言葉に、真っ赤なネクタイとポケットチーフ、部下の下半身をギュッと掴むアクションなど、第1シーズンで話題になった黒崎の特徴は7年経っても変わらず。いやむしろ、「歌を歌いながらパソコンチェックする様など、ねちっこさがパワーアップしていた気がするが、第6話はどう出てくるか。

半沢が証券会社に出向になっても、異動して(自分の意志ではないと思うが)検査に来た黒崎、またしても異動したのか。振り返れば、第1シーズンの初登場時は金融庁から国税局に異動になったところで半沢と出会い、第7話で金融庁に戻り、第2シーズンでは証券取引等監視委員会事務局証券検査課統括検査官。あっち行ったりこっち行ったり忙しい。

たとえどこにいても黒崎は「国民の血税を守る」ことを使命とし、「しょせんあなたたちは汚い金貸し」と銀行を目の敵にしている。やっていることは実をいえば正しいのだが、やり方がえらそうで、ヒトをヒトとも思わないところが毛嫌いされてしまう。

第1シリーズの最終回など、東京中央銀行を調べるために銀行の幹部の娘と結婚するというそれはそれで不正をやってのける。
銀行の不正を暴くという度を越した正義感からか黒崎は姿勢がやたら良いし、清潔感ある雰囲気をしている。潔癖が過ぎておかしくなっちゃったという感じであろう。

原作者の池井戸は、ドラマ(第1シリーズ)の黒崎を気に入って「銀翼のイカロス」に登場させたらしい。池井戸はミュージカル――とりわけ劇団四季好きだそうだが、片岡愛之助の活躍からか、第2シリーズでは歌舞伎俳優の出演者が増えたので、そのうち歌舞伎も好きと言うようになるんじゃないだろうか。

愛之助は一般家庭から歌舞伎の家に養子に入った偉才

片岡愛之助の歌舞伎俳優としてのキャリアが『半沢直樹』を面白くしたことは間違いない。まず、スケールの大きな演技。大人数の部下を引き連れての調査で、大勢の高身長の部下たちの先頭に立ったときにまったく埋もれない堂々とした様、広い空間でたくさんの人たちがいるなかで、瞳をぐるりと右から左に動かし睨みをきかせる目ヂカラ、「金融庁!」など高い声の響かせ方等々、舞台で培った所作がドラマにエンタメ性と厚みをもたらした。

だが、歌舞伎で女形をやっているからオネエキャラも得意なのではと思われがちだが、実際の女性を演じることとは違うため、仕草が繊細な弟子の所作を参考にして演じたのだとか。

「ロスジェネ編」では愛之助に続き、市川猿之助、尾上松也と歌舞伎俳優が大活躍した。『半沢直樹』に欠かせない重要な大和田役の香川照之は歌舞伎の家に生まれながら歌舞伎の舞台には立たず。映画やテレビドラマ、歌舞伎以外の演劇に出演し、近年になって歌舞伎にも出演するようになった俳優である。

反して、愛之助は世襲が多い歌舞伎俳優のなかで、一般家庭から歌舞伎の家に養子に入った(片岡仁左衛門の子・秀太郎の養子になった)俳優である。先ごろ、大河ドラマ『麒麟がくる』に出演が発表されて話題の人間国宝・坂東玉三郎なども養子から上り詰めた偉才。
玉三郎を代表に養子から活躍する歌舞伎俳優もいて、愛之助もそのひとりなのだ。

黒崎で注目された愛之助は、その後、テレビドラマでも活躍するようになり、大河ドラマ『真田丸』『麒麟がくる』や朝ドラ『まんぷく』に出演。そこでも愛された。とりわけ『まんぷく』の加地谷圭介は長谷川博己演じる萬平の仕事仲間にして裏切りを行うのだが、再登場の仕方が印象的で、憎めない人物だった。

本日放送された『麒麟がくる』総集編3では、愛之助演じる今川義元の壮絶な最期も出て来た。彼を討つ役で出演した今井翼とは、今秋舞台『10月花形歌舞伎 GOEMON 五右衛門』で共演予定だったが、コロナ禍で中止に。残念だがいつか復活を願う。

『半沢直樹』ねちっこさがパワーアップ! 黒崎を演じる片岡愛之助がドラマにもたらしたエンタメ性
第3話での登場に続き、本日23日放送の6話にも登場

ミュージカル俳優にしても歌舞伎俳優にしても、舞台の魅力をもっと知ってほしくてテレビドラマにも出演しているというが、片岡愛之助は確実に歌舞伎に新たな観客を呼び込むことに成功しているひとりである。

余談だが、最近の愛之助のブログの猫が可愛すぎる。
(木俣冬)

※『半沢直樹』本日放送第9話のレビューは明日掲載します。掲載しましたら、ツイッターでお知らせします。お見逃しのないようぜひフォローしてくださいね

番組情報

日曜劇場『半沢直樹』
毎週日曜よる9:00〜9:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/
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