『24 JAPAN』物語を加速させる郷中と三上の死 朝倉麗(仲間由紀恵)を脅かす家族の過去も明らかに
イラスト/AYAMI

『24 JAPAN』

ピッ・ピッ・ピ
『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)。第3回は、深夜2時〜3時までの出来事。

【前話レビュー】唐沢寿明の『24 JAPAN』に際立つ女の嘘のドラマ性 時に橋田壽賀子や向田邦子ドラマふう

総選挙前夜に起こった総理大臣候補を狙うテロ事件を追う24時間をリアルに24時間で描く人気海外ドラマの日本版。
元祖『24』と『24 JAPAN』を同時に見るとかなり重なる。そりゃあそうだ。1時間をリアルタイムで描いているのだから、同じ時間に同じことが起こって当然だ。そういう楽しみ方も提案したい。

人を失ったショックが物語を加速させていく

〜2〜3時までに起こったこと〜

獅堂(唐沢寿明)がCTUに潜むテロ組織の内通者が水石(栗山千明)らしいという極秘情報を手にいれ、真相に迫ろうとする。

◎選挙を控えた朝倉麗(仲間由紀恵)がひとりで外出し、その先で彼女の家族にまつわる秘密が明かされる。

美有(桜田ひより)函崎寿々(柳美稀)が誘拐犯から逃亡を図る。

今日も1時間の密度が濃い。いきなりネタバレすると、登場人物が2人も死んでしまう。そのショックが物語を加速させていく。

1話では、写真家・皆川恒彦(前川泰之)が旅客機の爆破に巻き込まれ、2話では、CTU本部部長・郷中(村上弘明)と第三支部捜査員・三上(石垣佑磨)が狙撃され、3話では、函崎寿々が車に轢かれ、七々美(片瀬那奈)の恋人・亜矢子(長井短)がスナイパーに撃たれる。もうひとり通りすがりのおじさんが殴打されているが生死は不明。

『24』は元祖もJAPANも、命が軽さと重さを行ったり来たりする。
暗殺計画を立てられている朝倉麗の命は重い。だから、CTUもSPも真剣に計画を防ごうとする。その一方で、前述した人たちの命はあっけなく潰える。あまりにふいに。

皆川は誰にも気づかれずスナイパーになりすまされ、美有は寿々にしがみつくが、誘拐犯に追いつかれ、寿々から無理やり引き離される。七々美も最愛の恋人・亜矢子を殺されて涙するも、自分も狙われるのを察してテロの協力を続けるしかない。

時間は不可逆。立ち止まって死を嘆いている余裕はなく、前へ前へと行動していく人たち。この無常の荒野のような世界は、元祖もJAPANも同じ。だが、元祖と違和感がまだ拭えないのは日本が舞台になると、できるだけ日本風味を出さないようにしている努力は感じつつも、やっぱり時折見える日本情緒。

第3話でわざとじゃないかと思ったのが、道路の途中にお寺の山門のようなものが見える画。極めつけは、七々美と亜矢子が神林(高橋和也)を連れて向かった、皆川のプレスIDの隠し場所がーー祠(ほこら)だった。
元祖だと、鉄塔の下で雰囲気があるのだが、祠って……。日本にも鉄塔はいくらでもあるだろう。

『24 JAPAN』を逆輸入したら、ジャパニーズホラー的なものが喜ばれること請け合い。こうなったら、富士山、芸者、忍者などを出すべき。

『24 JAPAN』物語を加速させる郷中と三上の死 朝倉麗(仲間由紀恵)を脅かす家族の過去も明らかに
次回4話は10月30日放送。画像は番組サイトより

事件の重要さに反し、恋愛問題に心揺らす登場人物たち

湿っぽいのは、山門や祠だけではない。獅堂と水石のやりとりもなんだかねちっこい。第1支部A班暗号解読係・明智(朝倉あき)に、水石と付き合っていたから獅堂の情報が漏れていたのではと聞かれたとき、獅堂が、情報は漏らしていないと言いながら「信じていた」と無念そうにする。信じていたから、つい大事な話もしてしまっていたかもしれないという空気がそこにじわじわと漂う。

その後、水石が内通者ではないと、獅堂に潔白を主張するときも、なんだか痴話喧嘩ふう。この一連の場面も、元祖にもあるのだが、元祖の会話のほうが乾いて聞こえる。英語と日本語の言語、および文化の違いは、鉄塔と祠のように差異が大きく、なかなか埋められない。

獅堂と水石、ふたりの関係が水石の無実を証明する証拠にもなる。初めて旅行に行った日に“内通者のものと思われるカードキー”に麗の極秘情報を入力した端末にアクセスしていたわけがないとわかる展開にほっこりというか苦笑いというか……。
初めて旅行に行った記念日を覚えているとは獅堂っていい人だなあ。

「私よりもこんな小細工を信じるなんて……ひどいわ!」
水石になじられて、やりきれない顔をする獅堂。そんなふたりの関係を、今の水石の恋人・南条(池内博之)は苛立たしく見つめ、「(獅堂の任務に)重大な疑念があり、班長解任を要求」する電話を内部調査班こっそりかける。こんな深夜に内部調査班も勤務しているのか。本当に今の時代では考えられない24時間体制。

国家を揺るがす重大問題が勃発中にもかかわらず、登場人物たちは恋愛問題に心揺らしている。『24』が男女問わず人気だったのは実はここだったりして。

その頃、麗はひとりどこかの駐車場で、闇の情報屋・上州(でんでん)と待ち合わせている。キャスター山城まどか(櫻井淳子)の脅しにあっている件の真相も早くも明かされた。娘・日奈(森マリア)と息子・夕太(今井悠貴)の衝撃的な過去と、ひっそりした駐車場でヤンキー少年にバッドを振り回してカツアゲされそうな危機は橋田壽賀子ドラマにはない。

朝になったら選挙なのにこんな無防備でいいのだろうか。首相候補を日本版で女性に設定を変えたことで、問題が彼女には手に余り過ぎる感が否めなくなった。
それでも毅然と立っている麗を応援したい。
(木俣冬)

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番組情報

テレビ朝日系
『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜
番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/

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