Juice-Juiceの歌姫・段原瑠々の美麗な歌声が、地元・広島に響き渡った。9月6日(金)、マツダスタジアムで行われた広島VS.阪神22回戦で国歌斉唱のミッションを遂行したのだ。


段原はハロー!プロジェクトが誇る実力派ボーカリストであると同時に、大のカープファン。特に好きなのは菊池涼介内野手で、そのフィールディングに魅了されているという。33番のユニフォームを着ながら、菊池涼介・選手弁当を頬張りつつ、マツダスタジアムで試合観戦する段原の“ガチヲタっぷり”は、Juice=Juice Family(ファンの総称)の間ではつとに知られていた。

セ・リーグでは2014年以降、3連戦もしくは2連戦の試合前に国歌斉唱を行うことになっている。段原と同じ広島出身者だと、吉川晃司や石野理子(元・アイドルネッサンス/現・赤い公園)が過去にはマツダスタジアムで熱唱した。もちろん芸能人なら誰でもできるというわけではなく、矢沢永吉奥田民生、Perfume、SU-METAL(中元すず香=BABYMETAL)、鞘師里保らに先駆けて段原は大役を果たしたことになる。


しかし段原のことだから、このあたりの事情は重々承知だったはず。重圧に押し潰されそうな日々を送っていたに違いない。8月29日付のブログでは「こんなことあるの!ってこと」と題したエントリーをアップ。「えっっって感じですよね。るるもまだその感じあります。今でもちょっと信じられないような感じです。
ひとりでマツダスタジアムに立って国歌斉唱、、いや、信じられないです」(※一部、絵文字や改行を略。以下同)と興奮気味に報告する。

さらには「マネージャーさんから、このお話をいただいた時も 夢みたいで なんか現実じゃない感じがして 信じられないまま お母さんにすぐ電話しました 誰かに伝えないと!!と思って」と家族思いの一面も見せる段原。「何回もスケジュール見たりして これは夢じゃないんだなって 何度も確認しちゃうくらい、すごくうれしいです。また夢がひとつ叶います」と喜びを爆発させた。

一方で『君が代』は非常に歌うのが難しい曲としても知られている。
メロディは雅楽をベースに作られており、スケール的にはDドリアンを使用。したがって短調でも長調でもない。しかしドイツ人のエッケルトは、そこにハ長調(Cメジャー)の伴奏をつけるというアレンジを強行した。そのため内省的でありながらも、緊張感を孕んだイメージを聴く者に植えつけていく。世界的に見ても特殊かつプログレッシブな『君が代』の世界観を独唱で表現するには、演者に相当な技量が求められるのである。

パーソナル パ・リーグTV内のサイトでは、セ・リーグではないものの、過去の国歌斉唱映像が視聴できるようになっている。
これを見ると歌唱法は本当に千差万別で、ピッチやリズムの取り方をとっても個性が滲み出ることがよくわかる。果たして段原はどのようなアプローチで『君が代』に挑むのか、ハロプロファンのみならず、プロ野球ファンや国歌斉唱マニアからも注目を集めていた。

「ただいまより国歌斉唱を行います。本日、国歌斉唱を務めていただきますのは、広島県出身で、アイドルグループ・Juice=Juiceのメンバーとしてご活躍中の段原瑠々さんです。みなさん、どうぞご起立・ご脱帽のうえ、スコアボード上のセンターポールをご覧ください。それでは段原瑠々さん、よろしくお願いいたします」

午後5時53分、Juice=Juice前リーダー・宮崎由加のような声のウグイス嬢に導かれるようにして、段原はグランドに姿を現した。
固い表情のままグランドに向かって深く一礼すると、意を決したように歌い始める。

まず最初の「きーみーがー」部分。正直、ここは明らかに緊張している様子だった。リズムも若干走り気味に感じる。段原は自分のことを極度のあがり症だと言うが、ステージでは内面の動揺を観客に悟らせないプロフェッショナル。段原をハロプロ研修生時代から観続けてきた私としても、この歌い出しは意外だった。
逆に言うと、段原にとってマツダスタジアムがいかに特別な場なのか、この国歌斉唱にどれほど入れ込んでいるのか、それが明確に伝わってきた。

しかし、ここからが段原の凡百のアーティストとは異なるところ。「ちーよーにー」に入る頃には完全にリカバリーに成功し、「やーちー」で伸びやかなファルセットを決めると球場の空気を一変させた。その後もノーブレスで歌うのが正解とされる「さざれーいーしーの」を難なくクリア。エモーショナルに少し「溜め」を入れてから、落ち着いたトーンで「いーわーおー」と繋ぐ。最後の「まーあーでー」も原曲のメロディラインに忠実でありながらも、ソウルフルなテイストを加え、深い余韻を与えていく。

さすがである。「広島に段原あり」ということをカープファンに強く印象づけたはずだ。研修生時代の恩師で大の野球狂・上野まり子先生も心の中でガッツポーズをしたことだろう(もっとも上野先生は中日ファンだが)。広島カープの公式HPも「まっすぐな優しい歌声が球場全体に響き渡り、スタンドのお客様から大きな拍手が送られました」と段原の歌唱を手放しで絶賛。なお、試合は6-3で広島が阪神に勝利した。

翌7日、段原はブログを更新。「歌い終わったあと 手が震えてた」と前日の出来事を振り返っていく。「すごくうれしい気持ちと、楽しみな気持ちが強かったけん 緊張するな~って感じることは あんまりなかったんじゃけどね、るる緊張してたみたい ちょっと顔引きつってて あとから写真見て、緊張してたんだな~って 笑いました(^^)」と総括した。

Juice=Juiceは9月8日より秋の全国ツアーを開始。大舞台での経験を機に、さらに大きく成長した「ネオ段原瑠々」の雄姿が確認できるはずだ。