4月にスタートした春ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)で、主演の岡田将生がやさぐれた刑事・田鎖真役を演じ、「メロい」と話題になっている。

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真は、真面目で神経質な弟・稔(染谷将太)に対し、彼の家にころがりこむなど粗雑さも持ち合わせている。
本稿では、そんな真がここまで人を惹きつけるキャラになった背景を、岡田のこれまでの遍歴を振り返りつつ探りたい。

岡田はこれまで、端正で上品な役柄や狂気を孕んだ役柄で振り幅を見せてきた。裁判官役だったNHK連続テレビ小説『虎に翼』、官僚を演じた日曜劇場『御上先生』(TBS系)では完璧なビジュアルと人間性が合致して、岡田ならではの気品を放っていた。

一方で、サイコパスかのような殺人犯を怪演した映画『ゴールド・ボーイ』、愛する妻のため正義が暴走する会社社長を演じたドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)では、恐ろしいほど冷酷な狂気を見せてきた。

『田鎖ブラザーズ』では、そうした過去作のどれとも違い、突出して人間味ある岡田を堪能出来る。その辺にいそうなくたびれた感ある刑事であり兄である真からは、岡田が歳を重ねたからこその色気が放たれているのだ。

両親殺害という辛い過去を持ちながら、すでに事件は時効を迎えており、法の範疇を超え犯人を自らの手で裁くために警察官となった田鎖兄弟。真は、通常の任務においてはいつもやる気がなく、疲れていたり、だらっとしていて情けなさもある。それでも、ひとたび両親の事件の影を感じれば捜査情報を漏らし外部の力を借りるなど、職務を逸脱してでも真相へ肉薄する衝動性を秘めている。

刑事としても、兄としても「ダメ人間」でありつつ「熱き復讐者」でもある危ういバランスが、物語に緊張感を持たせてきた。そして、整いすぎているルックスの岡田が、粗野で感情的な真を演じることで、逆張りのような違和感が生まれる。完璧な造形美が崩れる瞬間の色香は破壊力抜群だ。


また、だらしない雰囲気や軽いノリの中に、急に真面目な表情や低い声が来たりと、岡田の緩急の切り替えが観る者を魅了している。

さらに、真と染谷演じる稔の兄弟関係は、絶妙な距離感でリアルさを醸し出している。互いにベタベタするような仲良しではないが、不器用ながらに信頼し合ってきた。同居する中で、真は稔を親友のようにも、妻のようにも扱っているのが象徴的だ。離れることがない中で見せる一瞬の優しさや気遣いが刺さる。

生真面目なはずの稔も、両親殺害の犯人と思われる人物を自らの手で殺めようと決意する。それは、これまでの人生でいつも自分を守ってきた真のためでもあった。覚悟を決めた稔は、独りになるであろう真に自炊出来るように勧めるが、何も知らない真は稔がいるから問題ないと、これからも頼る気満々だ。

性格は正反対ながら、両親の仇へと突き動かされ、お互いを想い、非合法なこともいとわないという共通点は、この兄弟を一層エモーショナルな存在に昇華している。作品をPRする中で、岡田も染谷もこの兄弟の「エモさ」を強調していたのも納得だ。

また、真は岡田本来の人間性とはイメージが全く異なる。これまで、バラエティ番組などで見せる天然さや少し抜けた感じは、隙の無い外見を持つ岡田の意外で可愛らしい一面として捉えられてきた。
最近はInstagramで妻・高畑充希とのツーショットや第一子誕生報告なども発信し、良き家庭人のイメージも高まっていた印象だ。

真は、今作の中で1人の人間として全く別の顔を見せながら、岡田の過去作との比較でも、プライベートとの比較でも鮮やかなギャップを生み出している。現実と虚構の乖離が著しいからこそ、シリアスなのに「めんどくせぇが口癖の岡田将生メロい」と、視聴者の心を奪う要因になっているのだ。

田鎖兄弟は両親殺害に関与しているはずの重要人物まであと一歩と迫りながら、その人物の死に直面する。だが、事件について何も聞けず残された無力感が兄弟を包む中、新たな手がかりが発見された。両親の事件は、幼少期から大人になった現在まで、鎖のように切っても切れない「呪縛のような絆」として田鎖兄弟を縛り続けている。

過去イチ「メロい」岡田と染谷が織りなすエモい兄弟が、それぞれ道を踏み外しそうな危険性を孕みながら、事件の真相に辿り着いた先には何が待っているのだろうか。

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