新人劇作家の登竜門と言われる「第70回岸田國士戯曲賞」(白水社主催・公益財団法人一ツ橋綜合財団後援)の授賞式が11日、都内で行われ、『よだれ観覧車』で受賞した大石恵美氏が喜びを語った。
大石氏は2018年に演劇ユニット「ダダルズ」を結成。
今回受賞した『よだれ観覧車』は、25年11月17日~27日に初演。選考委員の本谷有希子氏は「大石さんの戯曲は痛覚の記録だ。“どこが、どれだけ、どう痛いか”が圧倒的な生としてぶちまけられ、ひとりの人間の内面の奥行きがそのまま差し出される。大石さんの唾。呼吸。なんかありとあらゆるきったないもの。そういう生きてしまっている身体の存在を、強烈に感じた」と講評している。
受賞スピーチでは、冒頭から彼女が子どものころに遊んだ“マリオごっこ”について唐突に語り始め、大石氏らしい話術に会場は引き込まれ、笑いに包まれた。
「子どもの頃、近所に同い年の子がいっぱいいたんですけど、ほとんど男の子で。女の子は私ぐらいでした。“マリオごっこ”をするときは、女の子が少ないから、自動的に私はピーチ姫なんですよね。
「クッパの隣でマリオが助けに来るのを待っているだけで、やることがほんまに何もなくて。正直全然おもんなかったですね。段ボールのへりに鼻くそをこすりつけて、『ざまあみろ』って思う、みたいな。それがちょっとした楽しみやったんですよね」
このエピソードについて大石氏は、「(社会や世間に)通らない話」だと言う。
「意味も教訓もないし、どこに分類していいかもわからない。友達に笑い話として話すことはできても、社会に向けて出す話じゃない。でも、表現やったら、もしかしたら“通る”かもしれない、って思ったんです」と自身の創作意欲の原点について語った。
「社会に通すためには、(「演劇」といった)ラベリングは必要なんですよね。だから、今回この岸田國士戯曲賞という、ちょっと使えそうなラベルをいただけたのは、本当にありがたいです。私は、岸田國士戯曲賞も、自分の“通したい”という欲望のために使っていきます」と話した。
大石氏の率直な語りの中にあるのは、「通らないもの」を諦めず、なんとか外に出そうとし続ける姿勢だった。今後の彼女の活動にも注目したい。
【編集部MEMO】
岸田國士戯曲賞とは
岸田國士戯曲賞は、若手劇作家の育成を目的に白水社が主催する戯曲賞である。1955年に始まり、今年で第70回目となる。「演劇界の芥川賞」とも呼ばれ、若手作家の登竜門としても知られている。過去受賞者は三谷幸喜や宮藤官九郎など。

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