火星の地で黙々と任務を続ける探査機「キュリオシティ」に更なる試練が訪れた。
岩石のサンプル採取中に岩石がドリルから離れなくなるというアクシデントに見舞われたのだ。
人間に例えるなら、穴の開いている岩石に手を突っ込んだら、どうにもこうにも抜けなくなってしまう状態だ。
幸いにも、NASAのチームがキュリオシティを救うべく、5日間にわたって懸命に遠隔操作を行い、ついに岩を振り落とすことに成功した。
火星で活躍するNASAの2台の探査車とキュリオシティの役目
NASAが火星に派遣した探査車は現在2台ある。
2021年に着陸した新鋭のパーサヴィアランス(パーシビアランス)と、2012年8月に火星へ降り立ったベテランのキュリオシティだ。
パーサヴィアランスが火星北半球のジェゼロ・クレーターを拠点に生命の痕跡を探しているのに対し、キュリオシティは赤道付近のゲール・クレーターで活動している。
2台は数百km以上離れた別々の場所でそれぞれ孤独に任務をこなしており、互いに出会うことはない。
キュリオシティが拠点とするゲール・クレーターは直径約154kmの巨大なくぼ地で、かつて湖が存在していた可能性が高い場所だ。
着陸から14年が経った今も、キュリオシティはクレーター中央部にそびえるシャープ山(高さ約5.5km)の斜面を少しずつ登りながら、岩石や土壌を分析し続けている。
キュリオシティの主な使命は、火星にかつて生命が存在できる環境があったかどうかを調べることだ。
そのための最も重要な道具が、ロボットアーム先端に取り付けられたドリルである。
岩石に穴を開けて粉末状のサンプルを削り出し、車体内部に搭載された分析装置へと送り込む。
この作業をキュリオシティはこれまで何十回も繰り返してきた。
ところが、2026年4月25日の任務で、これまでに一度も経験したことのない事態が起きた。
岩からドリルが抜けなくなるアクシデント
NASAのチームがその日のドリル対象として選んだのは、シャープ山の斜面で見つかった一つの岩石だった。
チームはこの岩石に「アタカマ」という愛称をつけた。南米チリにある世界屈指の乾燥地帯、アタカマ砂漠にちなんだ名前だ。
直径約46cm、厚さ約15cm、重さ約13kgで、分析対象として条件が揃っていた。
キュリオシティはいつも通りドリルを岩石に押し当て、サンプル採取のための穴を開けた。
ドリルは問題なく岩石に刺さったが、異変が起きたのは、その直後だった。
作業を終えたキュリオシティがロボットアームを引き戻した瞬間、アタカマが地面から丸ごと持ち上がってしまった。
ドリルビット(ドリルの先端にある回転する刃の部分)を外側から囲む筒状の固定部品「ドリルスリーブ」に、岩石がすっぽりと引っかかったまま離れなくなっていたのだ。
NASAによれば、過去にもドリルで岩石の表層が砕けて分離したことはあった。
しかし岩石が丸ごとドリルに張りついたまま持ち上がったのは、キュリオシティの14年の歴史で初めてのことだという。
5日間の試行錯誤の末、ドリルから岩石を取り外すことに成功
愛猫が狭い柵に顔を突っ込んで抜けなくなったらいてもたってもいられずすぐに行動を起こすだろう。愛犬が穴に顔を突っ込んで抜けなくなった場合も同様で、すぐにでも救出したいというのが飼い主心だ。
探査車を我が子同然に見守っているNASAの研究チームも、遠く離れた地球から、キュリオシティを救うべく立ち上がった。
コロラド州ボルダーにある宇宙科学研究所の上席研究科学者ビル・ファーランド氏らが中心となり、岩石をドリルから外す計画がすぐに開始された。
最初に試みたのは、ドリルを振動させて岩を揺さぶる方法だった。しかしアタカマ岩石はびくともしなかった。
4月29日、チームは別の方法を試した。
ロボットアームの向きを変えながら再びドリルを振動させてみた。
すると、アタカマの表面から砂のような細かい粒子がはらはらと落ちた。
しかし岩石本体はドリルにしっかりと張りついたままで、除去には至らなかった。
振動だけでは限界がある。チームはさらに別の方法を考えた。
5月1日、ドリルをこれまでより大きく傾け、回転と振動を加えながらドリルビット自体も回転させるという組み合わせ技を試みた。
何度か繰り返す必要があるかもしれないと想定していたが、最初の一回でアタカマはドリルから外れ、火星の地面へと落下した。
着地の衝撃でアタカマは少なくとも2つに割れた。
アクシデント発生から5日間、キュリオシティはドリルに岩を張りつかせたまま耐え続けたのだ。
ついに岩を振り落とし、次の任務へ向かう
岩の除去には成功したものの、一つ誤算があった。
今回の格闘の過程で、せっかく採取していたはずの岩石サンプル(ドリルで削り出した粉末)が失われてしまったのだ。
アタカマを振り落とすための試行錯誤を繰り返す中で、粉末がこぼれ落ちてしまったとみられる。
ファーランド氏によれば、NASAのチームは現在、より地盤にしっかり固定された別の岩石を新たなドリル対象として探しているという。
キュリオシティの次の任務はすでに始まっている。
数々の試練を乗り越え、キュリオシティの旅は続く
今回のアクシデントは前例のないものだったが、キュリオシティは過去にも様々な試練を乗り越えてきている。
岩や砂やダストデビル、火星の環境はとにかく過酷だ。2024年には、車輪に大きな穴が開き、損耗が進んでいることが確認されたが、それから2年たった今でも、損傷した体で走行を続け、与えられた任務を忠実に行っている。
その甲斐あって、キュリオシティは今年に入っても素晴らしい発見を成し遂げた。
ゲール・クレーターの粘土層で過去最大の有機分子を発見したのだ。
キュリオシティは20種類以上の有機化合物を特定し、中でも窒素含有分子は、かつて生命が存在した可能性を示唆するものだ。
着陸から14年、総走行距離は35kmを超えた。
満身創痍のキュリオシティだが、今日も黙々と火星の斜面を進み、岩を調べ、データを地球へ送り続けている。
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References: NASA's Curiosity Rover Frees Its Drill From a Rock[https://science.nasa.gov/photojournal/nasas-curiosity-rover-frees-its-drill-from-a-rock/]











