※本稿は、代田秀雄『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken)の一部を再編集したものです。
■「お金を増やすこと」はゴールではない
資産運用は、将来の安心をつくるためにあります。けれど、その安心はゴールではありません。その先にあるのは、よりよく生きること。そして、人生を味わうこと。人生は、あとからまとめて楽しむことはできません。
楽しみや経験は、時間の流れの中で、少しずつ、分散して味わうものです。若い時期にしか得られない経験もあれば、年齢を重ねたからこそ、深く味わえる楽しみもあります。だからこそ、お金もまた、人生の時間軸に合わせて配分していく必要があります。
使うために増やし、増やすために使う。積み立てながら使い、使いながら積み立てる。
私がオルカンでやりたかったことは、お金を増やすことそのものではありません。人生のそれぞれの段階で、「やりたいことを、やりたいと思えたときに選べる」、その自由を支える土台をつくることでした。
この本が、お金をどう増やすかだけでなく、どう使い、どう生きていくかを考えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
本書では、「増やす」と「使う」のバランスについて書いてきました。では実際に、資産をどう取り崩していけばよいのでしょうか。
■リスク資産と安全性資産のバランス
この点を考えるうえで、参考になるのが「トービンの分離定理」と呼ばれる考え方です。トービンの分離定理を簡単にいえば、「どのリスク資産の組み合わせを持つか」と「どの程度のリスクを取るか(安全資産とどう配分するか)」は分けて考えられるという理論です。
まず、世界全体に分散された効率的なリスク資産を一つ選びます。その代表例が、オルカンのようなグローバル株式です。
そして、そのリスク資産に、預金や日本国債などの安全性資産をどの割合で組み合わせるかを考えます。
この考え方に立てば、役割ははっきりします。
•オルカン(グローバル株式)→長期的な成長を担うリスク資産
•現金・預金・日本国債など→生活を安定させ、使うための安全性資産
資産運用の本質は、「どの商品を選ぶか」よりも、この二つをどういう比率で持ち、どう変化させていくかにあります。取り崩しとは、この比率を人生の後半に向けて、少しずつ変えていくプロセスだといえます。
■「100マイナス年齢」が目安になる
ここで、日本人特有の事情にも触れておきたいと思います。多くの日本人にとって、退職時は、人生で最も金融資産の残高が大きいタイミングになります。そして、その後も資産残高はなかなか減りません。
使うつもりで準備してきたはずのお金が、結果として「最後まで使われないまま残る」。これは決して珍しいことではありません。つまり、日本人にとっての本当の課題は、「どう増やすか」ではなく、「どうやって、納得感を持って減らしていくか」なのです。
そこで私が一つの目安として考えているのが、リスク資産の割合を「100マイナス年齢」に近づけていくという考え方です。
たとえば、
• 65歳であれば→リスク資産は35%
• 70歳であれば→リスク資産は30%
• 75歳であれば→リスク資産は25%
といった具合です。
■年齢とともにリスクを下げていく
ただし、これは一つの目安でしかありません。一人ひとり、財産の状況もリスクに対する許容度も異なります。齢を重ねるにつれてリスク資産の割合を引き下げていくという考え方は不変ですが、どの程度の割合にしていくかは人それぞれです。また毎年きっちり計算する必要もありません。
数年に一度、年齢や生活の変化を確認しながら、リスク資産を少しずつ取り崩し、安全性資産に移していく。それだけで十分です。大切なのは、年齢とともにリスクを下げていく方向性を持つことです。
この考え方が合理的なのは、次の理由からです。
•年齢を重ねるほど、相場が回復するのを待てる時間は短くなる
•一方で、年を取るにつれて「いつか使うお金」よりも「今使えるお金」の重要性が高まる
•リスク資産を少しずつ減らしていくことで、大きな値動きに一喜一憂せず、落ち着いてお金を使えるようになる
つまり、リスクは若いうちに多く取り、年齢とともに自然に下げていくという、人間のライフサイクルに合った設計なのです。
■オルカンは必要な時に使うための資産
取り崩しで多くの人が不安に感じるのが、相場が大きく下がった年に、株式を売ってよいのかという点です。
ここで重要なのは、安全性資産で生活費が十分に確保されているのであれば、取り崩しのために必ずしもリスク資産を売る必要はない、ということです。
安全性資産をあらかじめ組み合わせておけば、相場が好調な年は、計画通りリスク資産を取り崩し、相場が大きく下がった年は必要がなければ無理に売らず、安全性資産から生活費を賄うという選択ができます。
大切なのは、リスク資産を取り崩すことを「守りに入った」「失敗した」と考えないことです。それは、使うために準備してきた資産を、予定通り使っているだけなのです。
オルカンは、「一生持ち続けるための資産」ではなく、人生の時間軸を支えるための資産です。
■使うために増やし、増やすために使う
増やす時期があり、使う時期があり、そして穏やかに減らしていく時期がある。その流れ全体を受け入れたとき、資産運用は、初めて人生ときれいに重なります。
さきほど紹介したトービンの分離定理が教えてくれるのは、投資を難しく考えすぎなくていいということでもあります。リスク資産は、オルカンのような分散された株式でまとめて持つ。あとは、年齢やライフステージに応じて、安全性資産との割合を少しずつ調整していく。それだけで、「増やす」と「使う」を無理なく両立させることができます。
取り崩しとは、資産運用の終わりではありません。人生を味わうフェーズへの、自然な移行です。
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代田 秀雄(しろた・ひでお)
シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表
三菱UFJ アセットマネジメント前常務。1985 年に三菱信託銀行(現・三菱UFJ 信託銀行)に入社。支店にて個人財務相談や法人融資などを担当した後、年金資金や投資信託の運用業務に約30 年にわたり携わる。三菱UFJ 投信で商品企画部長などを歴任し、2019 年より三菱UFJ 国際投信常務取締役として商品・マーケティング部門等を所管。インデックス投資を通じて、資産形成やNISA の普及に貢献した。2025 年4 月、三菱UFJ アセットマネジメント常務取締役を退任し、特別業務顧問に就任するとともに、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズを設立。中央大学法学部兼任講師(国際金融論)。人気投資信託シリーズ「eMAXIS Slim」、なかでも「オルカン」の生みの親として、メディアでたびたび取り上げられている。『オルカン思考』が一般書としては初の書籍となる。
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(シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表 代田 秀雄)

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