50歳以上の人口が5割を超えた令和社会。その中で最大の消費者層とは、どのような人々か『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)を出したマーケティングリサーチ会社のインテージによると「アクティブシニアと呼ばれる層は気力体力も経済力も健在で、日用品においても新車購入においても消費をけん引している」という――。

■大きな影響を持ち続ける消費者世代とは
10年、20年後に日本の経済・消費活動の中心となるZ世代、α世代が注目される一方で、今この瞬間に最も大きな影響力を持つ世代を忘れてはなりません。
その上のミレニアル世代も着実に存在感を増しつつある一方、今年、来年、そして数年後など近未来で、大きな影響を持ち続けるのが50代以上の人たちです。
1971~1974年は第二次ベビーブームと言われるほどに同時期に多くの子どもが生まれましたが、その人たちも50歳を超えてきています。
日本が少子高齢化と言われて久しいですが、実は政府統計によれば、2025年5月確定値で50歳以上の人口は50%を突破。50~70代に絞っても約4930万人で、40%が集中している形です。
今や会社などの定年も65歳、70歳と延びていく中で、目先の経済活動や消費、マーケティング活動で、50~70代の「人口ボリュームゾーン」は、当然ながら注視しないといけない世代となります。
■胃袋にカネをかけている意外な世代
インテージSCIによれば、年代別の日用消費財の1年間の購入金額は次のようになります(図表2)。24年の20~70代の1年間の平均は27.8万円になりますが、若い年代になるほど少なく、年代が上がっていくほど高くなる傾向があるのがわかります。
50代は32.3万円となり、60代は35.2万円、70代でも34.2万円と高い水準にあることがわかります。
1つ興味深いデータがあります。各年代の日用消費財の購入金額内訳をカテゴリー別に見ると、20~60代の各年代で食品の割合は50%台となっていますが、これが70代になると62%とひときわ高くなります。
高齢になると食べる量が減るなどと言われますが、金額的にはどの年代よりも多くなります。
冷凍食品のワンプレートで和食のラインナップが充実し売り上げも増加した例があるように、シニアの胃袋をいかにつかむかはチャンスがありそうです。
■シニア層の金融資産額に見る経済力
また金融資産的な面からも重視しなければいけないのが人口ボリュームゾーンです。
金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査」(2025年)のデータによれば、年齢が上がっていくほどに保有金融資産の額も増えていく傾向がわかります。
平均値で見ると、単身世帯では50代でほぼ1000万円となり、さらに世代が上がるごとに増え70代では1489万円となります。2人以上世帯でも50代で1908万円と2000万円に手が届くところまできて、60~70代では2500万円ほどにまでなります。
人数的にも多く、経済的な強さもある50~70代は、どのような商品やサービスを作り売るとしても、外せない層であるのは疑う余地はないはずです。
しかも昔に比べれば、同じ商品を買い続けるなどの意識も低くなり、その時々で自分に最適なものを選ぶことも厭わなくなっていることも予想されます。
若者だけに目を向けるのではなく、今一度最大の顧客層である、この年代の人たちをターゲットにしたり、再度理解の解像度を上げていくことは必要かもしれません。その証拠に、日本市場への進出・拡大を狙う海外メーカーは、活発に日本国内の調査・研究を行っているようです。
■「推し活」やスマホにハマるシニアの素顔
今や生活に欠かせなくなってきているスマートフォンの利用率でも50~70代は数字を伸ばしています。
インテージが保有する約1万2000人の生活者のメディアの操作ログパネルデータ「i-SSP(インテージ シングルソースパネル)」によれば、月1回以上スマートフォンを利用した割合は、19年から24年の5年間で50代は11ポイント、60代では20ポイントの伸びとなっています。
70代でも数字が伸びていることは予想され、さまざまなアプリやコンテンツ、そしてCMなどのマーケティング戦略などでも、若者ほどではないとしても、一定以上の反応を得られるはずです。

そして令和の消費活動の象徴とも言える、推し活。
ここでも強さが垣間見えるデータがあります。推し活自体は若者、そして女性を中心に広がり、10~70代全体で35%と3人に1人、10代女性だと75%に推しがいるという状態です。
ただ一方で70代になっても推しのいる男女は2割程度いて、年齢的な広がりがあるのがわかります。
そして推し活は年齢が上がるほどに、世の中の経済状況に左右されないという興味深いデータもあります。
全年齢で見ると、現在の日本を襲っている物価高・円安が推し活に全く影響しないと答えた割合は54%。しかし、これが60代になると73%、70代でも66%と数字が高くなります。
人生の後半を迎えても推せるほどの強固な思い、そして何より経済的な余裕が可能にしているのかもしれません。
■高級新車を買う50代以上の経済力
消費への意欲も財力もあることがわかった50代以上の人口ボリュームゾーンですが、それだけに自分が必要、気に入ったと思った商品には多くのお金を払う傾向もあるようです。
高額というところでは、家の次に高い買い物の自動車でも、人口が多く経済力もある50代以上の強さが見えます。
インテージが毎月約70万人から回答を集める、自動車に関する調査「Car-kit」によれば、年代別で新車を購入した人の年齢構成を見ると、60代が28.5%と全年代を通じてトップでした。
これは人口構成比以上に高い数字です。
また日本でよく見かける高級輸入車のメルセデス・ベンツBMW、ボルボなどの新車は約6割を50代と60代で買っているというデータもあります。
さらに新車で1000万円以上を支払った割合を見てみると、50代と60代で49%とほぼ半分を占めていることがわかります。
高齢者の自動車運転の安全性への意識の高まりもあるのか、70代以上は1桁の数字に留まりますが、やはり人数も多く経済力もある50代以上は注視すべき対象でしょう。
■アクティブシニアにウケている日常品
他にもシニア需要を強く捉えて、売れている商品もあります。
代表的な大人用のおむつは軽失禁用の尿漏れパッドなどがアクティブシニアを中心に受け入れられ、売上金額は右肩上がり。この7年で1.6倍の成長を見せ2000億円突破は目前となっています。
同じく、年齢が高くなると問題が多く出ると言われる口内環境に対しては、歯磨き粉が年代が進むにつれて売れています。
24年の年間購入金額は全年齢平均では1977円ですが、これが60代だと2279円、70代だと2360円と1割から2割近く高くなっていました。
単純に医療などだけではなく、その周辺商品やセルフケア需要などもシニアのニーズに応えられれば、ヒット商品が出てくる可能性も高そうです。
高い商品を買い、経済を回す原動力となっている一方で、この年代は10年後には50代は60代、60代は70代、70代は80代とさらに上にシフトしていきます。
いずれ日本が「超」少子高齢化と言われる国になることは避けられない事実ですが、世界の先頭を走る状況を逆手に取り、この社会問題に前向きに対処していくことが、新たなビジネスチャンスを生む可能性があります。
大人用紙おむつや、年齢によるオーラルケアに対応できる歯磨き粉などは、良いものが出れば売り上げを伸ばすでしょう。

■「シニア市場」の国内外で高まる需要
そしてそれは、国内だけでなく海外進出、アウトバウンドの武器になる可能性があります。
少子高齢化は日本固有の問題ではなく、先進国を中心に同じ悩みを持つ国は増えています。近い国に目を向ければ15億人近い人口を抱える中国でも、その波は押し寄せ始めているとも言われます。
また今は人口ボーナスにあり経済発展をしているASEAN諸国なども、いずれ同じ問題を抱えると言われています。日本が商品やサービスはもちろん、医療やヘルスケアの領域などで解決につながるようなイノベーションを起こせれば、それは一大産業になるかもしれません。
さらに言えば、シニア市場を活性化させる考え方やシニアに寄り添うマーケティング、少子高齢化社会の課題解決アプローチなどの、一見目に見えにくいものも確立できれば、課題先進国として世界を引っ張っていける存在になれるかもしれません。
今後日本を支え、中心になっていく若者へのアプローチは重要で、それは必須とも言えます。ただ人口ボリュームゾーンは人数的にも金銭的にも見逃せないことは事実ですし、この年代にフォーカスすることで、国内はもちろん世界の市場に打って出ることも期待できます。
長い目ではα世代、Z世代などの動向は常に気を配りつつ、2026年、そして数年後の国内は当然として、その先の国と時代を見据えるためにもボリュームゾーンの調査や研究、アプローチというのは重要になるはずです。

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株式会社インテージ(かぶしきがいしゃ・いんてーじ)

マーケティングリサーチ会社

1960年に創業。インテージグループは、日本のみならずアジアNo.1(*)のマーケティングリサーチ会社であり、生活者の意識・行動データを長年にわたり蓄積・分析している。全国規模の消費者パネルデータや各種調査を通じて、消費・メディア・社会意識の変化を定点観測し、企業・行政・研究機関にも知見を提供。
事業ビジョンとして「Create Consumer-centric Values」を掲げ、生活者中心マーケティングの実現・支援に力を尽くしている。本書では、同社が長年培ってきたデータと分析知をもとに、現代社会の実像を読み解く。 

*「ESOMAR’s Global Top-50 Insights Companies 2025」に基づく(グループ連結売上高ベース)

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(マーケティングリサーチ会社 株式会社インテージ 文=広報ダイレクター 下河原基弘)
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