現在64歳のケビン・コスナーはNetflixの映画『ザ・テキサス・レンジャーズ』でウディ・ハレルソンと共演し、パラマウント・ネットワークのドラマ『イエローストーン』では主演を務めている。今回、そんな彼に取材した。


「俺は40年間、マリファナの愛煙家だった。良い時間を過ごしたいと思ったときに吸っていた。でも5年前、良い時間を過ごせなくなってしまったんだ。それ以来吸ってない。俺のモットーみたいなものなんだけど、もし自分にとって良いものでないんだったら、それは遠ざけることにしてる」。コスナーが続ける。「俺は食事とアルコールを別々に考えてる。食事は食事、酒は酒だ。だから食事中にみんながワインを頼んだら、俺は”クソ!”って思う。でもその場の空気を壊したくないからね。そういう時はワインリストを見て、上から下まで顎を使って見て、人にリストを回すんだよ」と笑う。「それが俺のルールなんだ。
誰も恥ずかしい思いをしないしね」

映画『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』(2007年)では、家族を持つシリアルキラーを演じた。これまでのイメージと100%異なる役柄を演じた彼に対し、ザ・ニューヨーカー誌は「ここ数年で最高の役柄」と評した。

コスナーがこれまで監督した映画は3本。破滅に近づいた世界における西部劇『ポストマン』(1997年)は、公開当時あまり評判が良くなかったものの、現在ではその評価も変化している。『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』(2003年)は、彼の偉大な西部劇の一つであり、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年)はアカデミー作品賞、アカデミー監督賞を受賞した作品である。そして彼は自身のバンド、ケビン・コスナー&モダン・ウエストで、ギターとヴォーカルを担当している。

チェロキー族であるコスナーの祖父母までの代は、西部を拠点に暮らしていたが、彼の父はロサンゼルスの低層地区であるコンプトンに住み、サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)で作業員として働いた。一つのプロジェクトが終わると別の地域の作業場に移動しなければならず、その結果、コスナーはハイスクール時代に4回も転校した。

彼は学校ではいつも新しい転校生であり、常に周りに馴染めるように努力していた。彼は自分なりに楽しむ方法を知っていて、ウサギやリスの狩りをしたり、ツリーハウスを作ったり、ゴーカートで遊んだりして、ジーンズを泥だらけにして遊んでいた。「俺は冒険好きのいたずら小僧だったんだ」と、コスナーは当時を振り返る。さらに「でも決して反抗的ではなかった。
保守的な一家で育ったからね。転校だって何度もしたけど、両親は『たくましくなれ』と言っていた。母親からは『お父さんのために正しいことをしましょうね』ってね。60年代には兄弟がベトナムに行っていたから、家族を困らせることだけは避けたかったんだよ」と続けた。

また詩を書いたり、バプテスト合唱団で歌ったり、映画を観に行くのも好きな少年だった。特に心を奪われたのは、1962年に公開された西部劇『西部開拓史』だった。シネラマで撮影されたこの作品は、三台のプロジェクターを使用し、アクションシーンが曲面のスクリーンに広がるという、当時はかなり特別な技術を用いて放映された作品だった。コスナー曰く、これが自身の子供時代を形成した作品だという。

時を同じくして、彼は不安に悩まされていた。そのうちの一つが「勉強」だった。彼は運動神経こそズバ抜けていたものの、勉強が不得意だった。主に数学になると全く歯が立たなかった。
彼は0以下の膨大な数字に辟易していたのだ。「クソみたいなルービックキューブが、俺にめちゃくちゃ悪い影響を与えたんだ」と、彼は未だに怒りの口調で言う。

コスナーは高校2年生まで5フィート2インチ(約160センチ)しか身長が伸びず、それにも苦しめられた。「デートなんかしてなかったよ。セイディー・ホーキンズ(女の子の方から男の子を誘うハイスクールの行事)みたいなイベントにも行ったけど、当然、気になる子とは一緒に行けない。初めて車の免許を取った時、女の子に免許証を見せたら『可愛いわね』って言われたんだけど、それがショックでね。もう二度と免許証を見せないと誓ったんだ」

高校卒業後はカリフォルニア州立大学フラトン校で経営を学んだ。「4年生になろうとしている時、己と深く対話をして、その時に”自分はストーリーを人に伝えるのが好きだ”と自覚したんだ」

その後8年、雑用仕事をこなしがらハリウッドの世界で奮闘し、その間に大学から付き合っていた恋人と結婚し、子供も誕生した(16年間連れ添った元妻とは3人の子供がいる。2004年に再婚し、今では7人の子供の父親である)。1981年に公開された『マリブ・ビーチ物語』で端役を獲得。1983年公開の『再会の時』では彼が出演したシーンがカットされてしまったが、カスダン監督は2年後、コスナーに『シルバラード』で小生意気なガンマンの役を与え、それがきっかけでケビン・コスナーは一躍その名を世に知らしめた。そして次なる大きなきっかけは、ブライアン・デ・パルマ監督による『アンタッチャブル』でエリオット・ネスを演じたことだ。
同年に公開された『追いつめられて』も高い評価を得た。その1年後、『さよならゲーム』に出演。それはコスナー以外の俳優が演じることは考えられないほど、彼に適した役柄だった。

ドラマ『イエローストーン』でコスナーが演じる牧場経営者、ジョン・ダットンのキャラクターは、彼がこれまで演じてきたようなヒーロー像には当てはまらないし、ミスター・ブルックスのようなシリアルキラーでもない。コスナー曰く「普段の俺だったら、あまり演じたいと思わないキャラクターなんだけど、すごく共感してしまったんだ。その描かれ方にとても魅力を感じたから、キャラクターをさらに深く作り込む準備をした」とのこと。しかしそうだとしても、ダットンには悪人的要素がたくさんある。コスナー特有の偏った笑みを浮かべながら、自分で殺人を犯すし、時には家族も使って人を殺す。でも、なぜか憎めない。「なぜ、人は自分の欲求に従って行動するのか、という理由を高い次元で理解すること。それは、俺が人生の中で一番やりたいことだった」と、ケビンは語る。

ケビン・コスナー、40年間吸っていたマリファナをやめた理由

Photo by Emerson Miller/Paramount Network

「さっき、保守的な家庭で生まれたと言っただろ。
でもマリファナを吸ってから、保守的な思考はどこかに行ってしまった。それに”俺はいったい誰だ?”という自分探しに決着をつけるという点でも、とても役に立った。だけどマリファナをやめてから、俺はすごく強くなった気がする。吸ってる時、マリファナ仲間はよく『これを吸うと不安になる』と言ってたんだけど、俺はその感覚が分からなかった。やがて周りのみんなが言ってたことが分かるようになってきて、そこで『よし、もうやめよう』と決めた。自分の中で何かおかしいと気づいたというか、それ以来吸わなくなったんだ」
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