■地震が多い中国

 世界的に「地震最多国」などとされる日本に比べれば少ないが、中国は地震の多い国に属する。【そのほかの中国での地震に関する写真

 発生件数が多いのは◆遼寧半島から渤海湾を経て、山東省、安徽省に至るライン◆河北省、河南省、山西省一帯◆陜西省から、四川省、重慶市、貴州省、雲南省に至るライン◆雲南省南西部◆甘粛省◆新疆ウイグル自治区北西部◆新疆ウイグル自治区中央から西に伸びるライン◆チベット自治区中部を東西に横切るライン◆チベット自治区とネパールなどの国境地帯――など。


■1556年「華県地震」では83万人死亡

 20世紀になってから、中国ではマグニチュード6以上の地震が約800回発生し、死者は約50万人(2008年5月12日に四川省で発生した地震を含めず)と、全世界の地震による死者の約半数を占めている。

 また20世紀以来、中国国内で発生した自然災害の死者のうち、約半数が地震による死者が占める。

 歴史的に最大の被害をもたらした地震は1556年1月13日に陜西省で発生した華県大地震で、2004年のスマトラ沖地震の津波被害を合わせた死者、行方不明者約30万人の約2.5倍に相当する83万人が死亡した。陜西省には窰洞(ヤオトン)と呼ばれる崖を利用した横穴式住居が多く、地震が発生したのが夜中だったため就寝中、地盤の崩壊で生き埋めになった人が多かったためとされる。

■古くからあった地震記録と観測

 歴史資料が多い中国では、地震の記録も多く残っている。早いものとしては、殷代(紀元前1600年ごろ―同1046年)にも記録がある。

 後漢時代の132年には、天文や地文、数学の分野で活躍した張衡が「地動儀」と呼ばれる地震の発生地点を知る観測機器を制作。置かれていたのは都の洛陽(現、河南省)だが、1000キロメートル以上離れた、隴西(現、甘粛省)で発生した地震に反応したとの記録がある。

 20世紀になってからも、中国ではしばしば大地震が発生している。特に、1976年7月28日の唐山地震は、同年に周恩来総理死去(1月8日)と毛沢東主席死去(9月27日)、江青ら「文革四人組」逮捕(10月6日)と周恩来総理の死去したこともあり、「天変地異は人の世の大変動と密接な関係がある」との昔ながらの考えと結びつき、人々の記憶に強く残っているという。

■20世紀に中国で発生した主な地震
(Mはマグニチュード)

●海原地震(1920年12月16日/M8.5/死者約24万人)
 甘粛省南部の海原県(現在は寧夏回族自治区)で発生。被災地は山間部で、山崩れなどで村全体が埋まったケースが多かった。
救援活動もほとんどなく、死傷者数が増加したとされる。

●古浪地震(1927年5月23日/M8/死者約4万人)
 甘粛省の古浪県で発生。海原地震と同様、山崩れによる死者が多かったとされる。

●昌馬地震(1932年12月25日/M7.6/死者約7万人)
 甘粛省の昌馬堡で発生。近隣都市の酒泉に大きな被害をもたらした。地域によっては家屋の9割が倒壊したという。上海の天文台と北京地震台も揺れを観測した。

●畳渓地震(1933年8月25日/M7.5/死者2万人以上)
 四川省の四川県茂県畳溪鎮で発生。茂県地震とも呼ばれる。震源は2008年5月12日の地震に近い。

●察隅地震(1950年8月15日/M8.5/死者4000人)
 ヒマラヤ山脈一帯のチベットのザユル(察隅)で発生。山崩れで、村ごと谷を流れるヤルツァンポ川中に流された例もあったという。


●〓台地震(1966年3月8日、22日/M6.8、M7.2/死者計8064人)(〓は「形」のへん部分におおざと)
 河北省の〓台地区で発生。中華人民居和国成立以後、人口密集地帯で発生した初めての大地震。同省・隆堯県で発生した地震の2週間後、規模が更に大きい地震が近隣の寧普県で発生して被害が拡大した。

●通海地震(1970年1月5日/M7.7/死者1万5621人)
 雲南省・通海県で発生。当時の中国は文化大革命期で、重大な事件については極端「秘密主義」を取る場合も多かった。新華社は地震発生後4日目になって報道したが、被災状況などは伏せられた。

●海城地震(1975年2月4日/M7.3/死者1328人)
 遼寧省の海城市で発生。中国国家地震局に「ネズミの大群が走り回っている」、「ニワトリが群れで飛んだ」、「井戸から水があふれ出た」など、地殻の異常を示す情報が次々と寄せられたことなどで、同局は地震発生が近いと判断。住民を緊急避難させていたため、被害が最小限に抑えられたという。

●唐山地震(1976年7月28日/M7.8/死者24.2万人)
 河北省唐山市で発生。地震規模が大きい上、いわゆる直下型地震であったため、甚大な被害が出た。唐山市は石炭産業も発達し、中国有数の工業都市として人口100万人を有していたが、地震によって壊滅状態となった。
中国は「自力更生の精神で困難を克服する」として、外国の救援を固辞した。

●瀾滄・耿馬地震(1988年11月6日/M7.6、M7.2/死者743人)
 1回目の地震は雲南省臨滄市瀾滄ワー族自治県を中心に午後9時3分、2回目は約120キロメートル離れた同市耿馬タイ族ワー族自治県で13分後の午後9時16分に発生した。

 写真は1976年の唐山地震で破壊された建物。(編集担当:如月隼人)

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