◆第173回天皇賞・春・G1(5月3日、京都競馬場・芝3200メートル)

 適性を信じているからこそ、挑戦を選んだ。1953年のレダ以来、牝馬が手にしていない春の盾。

グレード制が導入された1984年以降、42年で【0・0・1・30】と苦しい戦いを続けている。それでも、四位調教師はアクアヴァーナル(牝5歳、栗東・四位洋文厩舎、父エピファネイア)を送り出す。「さすがにG1で相手が強い。甘くはないでしょう。ただ、スタミナはあるし、京都もいいんじゃないかな」としっかり前を向いた。

 重賞初挑戦だった前走の阪神大賞典では内ラチ沿いで脚をため、好位からの正攻法で2着。デビュー時に438キロだった馬体重も478キロと40キロ増えていた。「カイバ食いが落ちないし、食べたものが実になって、大きくなっている」とトレーナー。成長に比例するように、競馬の幅も広がった。以前は先行策が中心だったが、昨秋の比叡S(2着)では中団から差す形にも対応。昨年3月から8戦7連対の安定感は何よりの成長の証しだ。

 壁の高さは身にしみて分かっている。

通算30年、JRAや地方など合わせて騎乗回数1万4000回を超える騎手時代。牝馬で3000メートル以上のレースに挑んだのは、スマートレイアーに騎乗した18年のこのレース(7着)を含む2回だけだ。勝利も手にしていない。「相対的に見て、牝馬は気が入りやすいから」と切り出すと、こう言葉を続けた。「周りに牡馬がいると、精神的な消耗は大きいんです。距離が長いぶん、そういう状況が長くなりやすいというのはあると思う」とかつての経験を呼び起こし、冷静に分析する。

 大切なのはフィジカルよりもメンタル。ならば、白く輝く愛馬の姿は頼もしく映る。「おっとりして、余計なことはしない馬。競馬を使ってもテンションが上がらず、冷静に走れるんですよね」。騎手時代にはウオッカで07年の日本ダービーを圧勝した。今度は調教師として、牝馬と歴史を動かす。

(山本 武志)

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