馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はステイゴールドが勝った2000年の目黒記念を取り上げる。

「シルバー&ブロンズコレクター」と呼ばれた名脇役の初タイトルに府中の杜が揺れた。

 

 ついにつかんだ。武豊とステイゴールドは中団馬群からスッと内に進路を取ると、前が開いた瞬間にギアが上がる。外から襲いかかるのは人気を分け合うマチカネキンノホシ。また、あと一歩届かないのか。そんな不安を天才の手綱さばきが振り払う。懸命に長い右腕を使って動かした手綱で加速度が増し、勝利への執念を乗せた左ステッキが末脚を絞り出す。グイッと伸びた。

 1馬身以上の差をつけ、飛び込んだゴール板。土曜日のメインとは思えないほどの歓声と拍手に包まれた。外からは大粒の雨が祝福のシャワーのように降り注ぐ。実に2年8か月ぶりの勝利。

詰めかけたファン誰もが、この瞬間を待っていた。「人気のある馬だから余計うれしい。いい時に乗せてもらえた。馬が強かっただけ」と約2年半ぶり、2度目のコンビで重賞初タイトルへ導いた武豊。天才は「勝ち方」を知っていた。

 1997年9月の阿寒湖特別を勝ってから、ここまで28連敗。その敗戦の中には重賞での2着7回、3着7回も入っていた。G1でも2着4回、3着2回。常に強い姿を見せながら、なぜか勝利だけが果てしなく遠かった。「長かった。涙が出るほどうれしい。無事是名馬と言うが、やっと念願がかなった」と池江調教師は感無量の表情。

ようやく長いトンネルを抜けた。

 最後まで「無事是名馬」を貫いた。7歳になった翌年に日経新春杯、ドバイ・シーマクラシック(当時はG2)を勝つと、同年暮れに武豊を再び鞍上に迎えた引退レースの香港ヴァーズでG1初制覇。最高の形で現役時代を終えた。種牡馬となってからは3冠馬のオルフェーヴルや全兄のドリームジャーニー、ゴールドシップやフェノーメノなど次々と個性のある実力馬を輩出。その競走成績以上に日本競馬に偉大なる功績を残した。

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