ただ、外食関係は今回、酒類の提供自粛の影響がかなり大きく、焼肉業態も苦戦を強いられたようだ。
5月は例年、大型連休明けの節約意識が強まり、梅雨入りに向かって牛肉消費は落ち込む時期。さらに今年は緊急事態宣言などが月末まで延長されることで、小売・外食含めて消費の弱さは一段と際立つ恐れもある。沖縄・奄美地方では平年よりも早く梅雨入りした。今後、予定通り緊急事態宣言が解除されたとしても間もなく梅雨のシーズンが始まるため、実需の回復力はかなり限定的といえる。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、5月の和牛の出荷頭数は前年同月比1.1%増の3万5600頭、交雑種が同2.1%増の1万7600頭、乳用種が同2.4%減の2万4400頭、輸入品はチルドが同0.1%増の2万600t、フローズンが同11.7%減の2万6千tと見込んでいる。一方、2月末現在の個体識別情報によると、5月に出荷適齢を迎える黒毛和種の飼養頭数は0.2%減、交雑種は2.7%減、ホルスタイン種雄は7.0%減と少ない状況で、今後の相場動向によっては出荷控えも考えられる。輸入チルドは昨年、新型コロナによる北米の工場稼働低下の影響で輸入量が少なかったことも踏まえる必要がある。
〈需要見通し〉
昨年のこの時期は巣ごもり需要の高まりで、問屋筋からも「年末の繁忙期が2カ月も続いているようだ」「忙しくて人手が足りず、手切りの作業ができない」といった声も聞かれた。今年はさすがに前年ほどの勢いはないものの、品不足から焼材や切り落とし関係の原料確保の動きは強く、連休明けも量販店関係からの発注は多い。
各畜種ともにバラ、ウデ、モモの引合いが強い半面、ロース、ヒレ、カタロースの動きは鈍い。カタロースは年末向けの凍結回しの手があるほか、ロイン系も和牛5等級の品質の良いものは輸出向けに動くものの、ホテル・ブライダル需要が見込めないため、ホルスのロイン系は引続き厳しい販売環境となっている。
今後は北海道フェアや「父の日」の販促を期待したいところで、予定通り6月から緊急事態宣言が解除されるとなれば、月末に外食関係からの手当ての動きも予想されるが、いずれも新型コロナに対する行政の対応に振り回されるため、正直、先行きの見通しは不透明にある。「前例がないため、足元の状況を見て手探りで対応するしかない」(関東の卸筋)。
〈価格見通し〉
前述の通り、5月は相場の上げ材料に乏しく、とくに中旬から下げの展開が予想される。ただ、補助事業による支えや、出荷控えの動きも出てくれば、後半にかけても大きな下げにはならなそう。
〈畜産日報2021年5月12日付〉