後編:村上宗隆が前評判を覆した理由
シカゴ・ホワイトソックスの村上宗隆はメジャー移籍時の低評価を覆し、本塁打を量産し続けているが、その姿を間近で見ている関係者の目にはどのように映っているのか。ホワイトソックスの実況解説者をはじめ、監督、コーチに、村上の現状を聞いた。
前編〉〉〉村上宗隆が開幕前の低評価を一蹴 「本塁打」で示す実力と存在価値
【活躍を予言していた元サイ・ヤング賞投手の見方】
春季キャンプの時点で、村上宗隆の活躍を予言していた人物がいる。シカゴ・ホワイトソックスの実況解説を務めるスティーブ・ストーン氏だ。1980年にア・リーグのサイ・ヤング賞を受賞した知性派投手で、引退後は豊富な知識を生かし、40年以上にわたり、シカゴ・カブスやホワイトソックスのテレビ解説を務めてきた。試合中の展開を言い当てることも多く、その洞察力には定評がある。
「私は元投手なので、打者を見るときは"自分ならどうやって打ち取るか"という視点で見ます。彼について聞かされていたのは、高めの速い球、特に内角寄りに差し込まれやすいということでした。でも、そんな球は誰にとっても簡単ではない。私が言ったのは、こうです。2度もMVPを取って、56本塁打も打つ打者が、投手の失投を打てないはずがない。彼なら、十分な数の甘い球を見つけて、40本以上は打てるだろうと。
そして実際に見て驚いたのは、彼の"目"の確かさ、選球眼ですね。ボールゾーンの球には手を出さず、ストライクゾーンを広げない。自分のゾーンを守っていれば、いずれ94マイル(151.2キロ)くらいの速球が来る。
変化球、特にスライダー系を打てていないようだが、と聞くと、ストーン氏はこう答えた。
「それは誰でも苦しみますよ。ここで対戦しているのは、世界最高の投手たちですからね。彼らは回転数を変えたり、リリースポイントを細かく確認したり、あらゆるテクノロジーを使って投球を磨いている。投手のレベルは本当に高い。でも彼なら対応できると思います。
なぜなら、彼はスピンを見極めて、手を前に出さず、しっかり残しておける強さがあるからです。足の上げ方がどうとか、そういうことは本質ではない。大事なのは"手を残せるかどうか"なんです。私自身が現役のとき、カーブを多く投げていましたが、打者が体ごと突っ込んでくれれば、ラクでした。反対に、しっかり手を残せる打者は厄介な存在になる。
一方、ホワイトソックスのウィル・ベナブル監督は、父マックスさんが千葉ロッテでプレーしていた関係で、10歳、11歳の頃に日本で選手たちのトレーニングや高いプロ意識を間近で見た経験を持つ。そのため、まずは村上にとってプレーしやすい環境を整えることが重要だと考えた。では、なぜここまでこんなに打てているのか。
「ムネは、いい球に対していいスイングができるポジションに自分を置き続けることができるし、スイングの判断もすばらしい。それを可能にしているのが徹底した準備です。一球一球、相手投手が何をしようとしているのかを理解しようとし、それに対してどう攻めるか、ゲームプランをしっかり考えて実行している。いい球を打ち損じることがほとんどなく、質の高い打席を積み重ねています」
明らかに優れているのは、ボール球に手を出さない点だ。チェース率(ストライクゾーン外の球にスイングする割合)19.3%はメジャー平均の28.5%を大きく下回る。一方で、スイング率も39.6%と平均の47.3%より低く、むやみに振らない。コンタクト率は69.6%で、メジャー平均の82.6%を下回るが、ひとたびバットに当たれば、その打球の質はアーロン・ジャッジや大谷翔平に匹敵する。
【まるで車を整備するように】
それにしても、なぜこれほど少ないスイング数で、強烈な打球を生み出せるのか。春季キャンプから調整の様子を見守ってきた打撃コーチのデレク・ショーモンは、興味深いたとえを用いた。
「何が優れているかというと、"調整しようとする意思"なんです。ムネは常に自分のスイングが今どういう形になっているのかを把握している。たとえるなら、車のアライメント調整のようなものですね。ほんのわずかなズレでも、その都度きちんと修正する。その修正は毎日のこともあれば、1週間単位で取り組むこともあります。
いずれにしても、大きく崩れてから直すのではなく、ズレが生じた瞬間に整えていく。そうやって常に状態を最適な位置に保つことで、試合に出たときに本来のスイングを出せるんです」
走行中の車が段差や摩耗によって歪めば、タイヤやサスペンションの角度をミリ単位で修正しなければならない。村上の打撃における作業は、それに近いというわけだ。
再建途上にあるホワイトソックスが村上をトレードするかどうかは、最終的には球団トップの判断に委ねられる。球団の目標はあくまで優勝であり、そのために最善の策を講じなければならない。しかし、現場で取材して感じるのは、村上の価値は本塁打だけにとどまらないということだ。彼のプロフェッショナルな姿勢は、若い選手の多いチームにおいて格好の手本となっている。
チーム内で最も気心の知れた存在が、同い年の三塁手、ミゲル・バルガスだ。父はキューバが五輪連覇を果たした際の主力だったラザロ・バルガス。いわば"サラブレッド"だが、ここまでは安定感に課題も残している。そこに現れたのが、村上だった。
「パワーは信じられないレベル。でも、それだけじゃない。規律というか、毎日必ず何かに取り組んでいる。ああいう姿勢はすごい。チームにいてくれて本当にありがたい存在です」。アリゾナ・ダイヤモンドバックスとのシリーズでは、2試合連続でアベック本塁打も記録した。「彼みたいな選手が近くにいると、自分もそうなりたいって思うんですよ。チーム全体にもいい影響がありますし、みんなの目標になる存在ですね」。
一方の村上は、現在ホワイトソックスにいることについて、こう語る。
「すごく若いチームですし、みんなフレンドリーに接してくれて、本当にすばらしいチームです」
さらに、打線全体にいい影響が広がっていることについて問われると、こう続けた。
「そうなれたらすごくうれしいですし、僕自身もみんなから力をもらって、打線として機能して、しっかり相手チームに勝っていければいいなと思います」
ホワイトソックスは2025年、チーム本塁打数165本で30球団中23位にとどまった。しかし今季はここまで33本で6位。村上の存在が、打線全体に変化をもたらしていることは明らかなのである。










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