【MLB】ドジャース佐々木朗希のマイナー行きをベテラン記者が...の画像はこちら >>

後編:ドジャース佐々木朗希の不振と再生への道筋

ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希が先発として結果を残せずにいる。高校時代から佐々木を見続けているディラン・ヘルナンデス記者は、「マイナーに一度行って、本来の姿を取り戻すべき」と主張する。

その裏には、誰よりも佐々木の才能を高く評価しているからこその理由がある。

前編〉〉〉「本当に怪物なのか」苦闘する佐々木朗希に現地で広まる懸念

【"本来の佐々木朗希"に戻るために】

 デーブ・ロバーツ監督は佐々木朗希が好投を見せた5月11日(日本時間12日)のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦後、「よかったと思います。6回1失点で終えられた可能性もあった。三塁手の横を抜けていくゴロがあったからといって、それを悪い登板だったとは見ていません。朗希は自分の役割を十分に果たした」と評価した。

 しかし、試合後に佐々木が繰り返したのは、「再現性」と「コントロールできるフォーム」という言葉だった。「自分のボールをまず操れないと、配球とかそういう話になってこないと思う」。つまり今の佐々木にとって問題なのは、メジャー打者への投球以前に、"自分自身"なのだ。

 高校時代からの佐々木を知るディラン・ヘルナンデス記者は、「速球が戻らなければ、ドジャースが思い描いていたような圧倒的な投手にはなれない」と言う。佐々木は今、その感覚を取り戻せないまま、試行錯誤を続けている。

「以前のような"軽い100マイル"が出ないから、今は少し力んで投げているように見える。でも、力むとコントロールが乱れる。逆に制球を意識すると球速が落ちる。

どちらに進めばいいのかわからなくなっているように見える。今の自分では通用しない、という感覚があるのではないか」

 だからこそ、ヘルナンデス記者は自身のコラムで、ドジャースは佐々木をマイナーに送るべきだと主張している。特別な才能を、短期的な修正だけで使い続けるべきではないと考えているからだ。ヘルナンデス記者によれば、かつてサイ・ヤング賞を獲得した元投手は、こう提案したという。

「一度マイナーに落とし、スプリットを封印したほうがいいのではないか。マイナーの打者なら、佐々木のスプリットには対応できない。だからこそ、直球とスライダーだけで投げさせ、まずは本来最大の武器だった速球を取り戻させるべきだ」

 佐々木は現在、ドジャースの勝利に貢献しようと、スプリットやスライダーを駆使して試合を作ろうとしている。しかし、それでは"本来の佐々木朗希"には戻れない、という見方である。結果へのプレッシャーが大きいメジャーではなく、もっと余裕のある環境で速球再建に取り組むべきだというのだ。マイナーなら、チーム事情よりも、自分自身を取り戻すことに集中できる。ヘルナンデス記者は言う。

「10歩前に進むためには、まず1歩後ろに下がる必要があるのかもしれない」

【ドジャースファンも見守り続ける再生の過程】

 おそらく佐々木にもプライドがあり、できればマイナーには行きたくないはずだ。

ジャイアンツ戦後も、「チャンスがある限り、継続して頑張っていくだけかなと思っています」と話していた。その言葉を聞きながら、筆者自身はふと、1999年の野茂英雄を思い出していた。

 あの年、野茂はニューヨーク・メッツのキャンプで解雇され、その後受けたクリーブランド・インディアンズ(現ガーディアンズ)の入団テストにも不合格になった。だが、ミルウォーキー・ブルワーズで再起し、再びメジャーへ戻って復活のきっかけをつかんだ。2001年にはボストン・レッドソックスで自身2度目のノーヒットノーランを達成し、2002、03年にはドジャースで2年連続16勝を挙げ、メジャーで2度目のピークを迎えた。当時の野茂に、メンタル面で大変だったのではないかと聞くと、彼はきっぱりこう言った。

「マイナーに落とされても、よくなればまた上げてもらえると思っていましたから」

 そんな開き直りがあればと思う。メジャーに来てから佐々木が怪物の片鱗を見せたのは、昨年10月のポストシーズンだった。急きょ9回のマウンドを任されながら、まったく怯むことなく腕を振り、世界一に貢献した。あの時の佐々木には、「大舞台で怖がる若手投手」の姿はなかった。

 興味深いのは、現地のドジャースファンも佐々木のことを強く気にかけている点だ。ヘルナンデス記者は、「最近自分が書いたコラムで最も読まれた5本のうち、4本が佐々木についてのものだった」と明かした。

つまり地元ファンも、佐々木を期待外れと決めつけているのではなく、「どう再生するべきか」に強い関心を抱いているのである。さらに同記者によれば、現在ドジャース戦中継で解説を務める往年の名選手、オレル・ハーシュハイザーやノマー・ガルシアパーラも、佐々木について話をしたがるという。

 テーマは共通している。「今の佐々木をどうするべきか」。

 だからこそ、ヘルナンデス記者はこう言う。今の苦しみは、あとになって佐々木を強くするかもしれない、と。

「アメリカでは、才能があれば何度でもチャンスが来る。失敗しても終わりじゃない。だから朗希も、もし一度マイナーに落ちることになっても、自分を作り直せれば、また戻って来られる。正直、私は単純に、彼に成功してほしいんだよ」

 どこかで「突き抜けてよくなりそう」という予感はあるのか。そう問われた佐々木は、こう答えた。

「急に来るか、徐々に来るかは僕もわからないんですけど、自分がこうなりたいというものがあるなかで、そこに向かって逆算して継続するだけなので。

それをやめてしまったら、終わってしまう。チャンスがある限り、頑張っていくだけかなと思っています」

編集部おすすめ