今井達也のメジャー1年目 前半戦総括 後編

(前編:苦難のメジャー1年目 魔球"UFO"は有効も「自分の感覚と結果が一致しない」>>)

【敏感すぎる感覚の弊害】

 前半戦の13試合で5勝4敗、防御率6.06と、苦しい投球が続いた今井達也にとって幸いなのは、まだチームに貢献する時間が残されていることだ。所属するヒューストン・アストロズは47勝51敗と負け越しているが、アメリカン・リーグでは好成績のチームが少ないこともあり、ワイルドカード圏内までは1.5ゲーム差。2年ぶりのポストシーズン進出の可能性は十分に残っている。

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 アストロズの追い上げのカギは、前半戦で誤算だった投手陣の整備だ。故障に苦しんだハンター・ブラウン、ランス・マクラーズ、クリスチャン・ハビエル、不振に悩んだ今井、マイク・バローズらのパフォーマンスが向上すれば、プレーオフ争いを優位に進められるだろう。

 なかでも、好調時には支配的な投球ができることを証明した今井が安定することは、重要な要素のひとつと言える。前半戦を総括したジョーイ・エスパダ監督の言葉からも、背番号45への期待感が消えていないことがわかる。

「今井にとって『適応するための前半戦だった』と言っていいと思う。日本からアメリカに来れば、浮き沈みがあることは最初からわかっていたし、それもプロセスの一部だ。彼自身も成長しているし、周囲の人たちの力も借りながら適応を進めている。

 特にここ数週間は成長が見えてきた。後半戦は、チームにとって頼れる存在になってくれることを期待している。もちろん、ここまではいい時も悪い時もあったが、私たちは彼をサポートしながらやってきた」

 今井が後半戦に、「頼れる存在」になるためにやらなければいけないことは何なのか。

 まずはエスパダ監督の言葉どおり、環境に適応し、結果を出せる土台を整えることだろう。ルックスや投球スタイルなどから豪快な印象もある今井だが、実際はそうではない。

「同じ球場でも少し湿度が違ったり、気温が違ったりという微妙な違いにも気づいてしまうというか、体が反応しちゃうんですよね」と苦笑いしていたが、それほど細やかなら、新しい環境への適応に時間がかかるのも理解できる。

「例えばですけど、同じように見えるバットが2本あった時、握ると1ミリの違いがわかるんですよ。ほかの人が感じられない部分を感じてしまうがゆえに、人が気づけないところに気づいちゃう。日本では、あまりなかったんです。日本全国、基本的に同じような気候ですよね。それがアメリカでは、地域ごとに全然違うのですごく苦労します。人よりも身体が繊細なんだなと、こっちに来て感じました」

【速球、スライダーを生かすために必要なこと】

 そんな今井にとって必要なのは、"鈍感力"のようなものを身につけることだろう。適応までに多少の猶予は与えてもらえるとしても、すでに13試合に先発したとなれば、もはや"スモールサンプル"とは言えない。3年総額5400万ドル(約87億6600万円)という契約を交わした選手であれば、自分には合わないマウンドであっても試合を作ることが求められるのは当然だ。

 オールスター前の最後の登板となった7月7日のワシントン・ナショナルズ戦では、今後に向けた課題として、速球、スライダー以外の"第3の球種"を磨く必要性を話していた。

「なかなかスライダーに空振りしてくれないというか、ファウルで粘られることも多かった。球種がもうひとつ、チェンジアップなどが加わるだけで、ちょっと違うのかなと。

常時、ストライクゾーンに投げれるような球種があればいいなと感じましたね」

 ここまでの今井はスライダーが全球種の44.8%、4シームが43.3%と、先発としては極端な"2ピッチピッチャー"だ。そのほかは、ツーシームが6%、スプリットが4%、チェンジアップが1.3%、カーブが0.6%と使用頻度は極めて低い。

 今井は、2種類の球種でここまでたどり着いたことを誇らしく感じているとも話していたが、打者のレベルが高いMLBでは投球のバリエーションを増やせるに越したことはない。決め球はもともと自信を持っている速球、スライダーで変わらないとしても、見せ球やカウントを整える球としての"第3の球種"が確立できれば面白くなる。

 決して器用なタイプではない今井は、そういったアジャストメントができるのか。チームがプレーオフを争う位置にいる以上、これから先は時間との戦いにもなる。しかしエスパダ監督は、有力な新戦力として獲得した日本人右腕への信頼を強調し続けている。

「彼自身もどの球種が自分に合っているのか、このリーグの打者たちが自分についてどんな情報を集めているのかを、かなり理解できるようになってきた。だから今は、その情報に合わせて調整していく段階だ。ストライクゾーンを攻め、積極的な投球を続けることが大切。相手打者も簡単には引かないから、彼も前に進み続けなければならない。そして本来の投球ができれば、本当に素晴らしい投手になれる」

 今井にとって勝負の後半戦が始まる。

これまでがどんなに苦しくとも、夏場以降のプレーオフ争いで活躍すれば、前半戦の不振は帳消しになる。これから先の1戦1戦が、真価を問われる登板になるだろう。

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