新国立劇場バレエ団が2026年6月5日(金) より上演する『白鳥の湖』は、英国バレエの巨匠ピーター・ライトによる、演劇的要素が色濃く盛り込まれた名プロダクションだ。説得力のある演出と重厚な美術・衣裳、また吉田都芸術監督のもとで経験を重ねるダンサーたちの力で、2021年10月にレパートリー入りするとたちまち新国立劇場の新たな代表作のひとつに。
先の公演、『ライモンダ』で演じた十字軍の騎士、ジャン・ド・ブリエンヌでは、音楽的で伸びやかな踊りと清々しい佇まいで観客の熱い視線を集めた。自身は、「全幕作品の主役は年末年始の『くるみ割り人形』以来だったので、緊張しました。でも、練習した通りに落ち着いて演じることができたと思います」と振り返るが、ジークフリード王子は、全幕主演の重責を実感する中での予想外のキャスティングだったようだ。
「僕はまだパ・ド・ドゥの経験が少ないから、ジークフリードに取り組むのは大きな挑戦です。もちろん、いまの僕は初めてのロールを学ぶ機会が多い段階だけれど、今回は全4幕の大きな作品での主役。緊張します。でも、都さんも見てくださるし、アドバイスをたくさんもらってどんどん上手くなるんだと、自分を信じています! この配役をとても嬉しく思います」
『ライモンダ』 撮影:瀬戸秀美
『白鳥の湖』といえば、プティパとイワーノフがチャイコフスキーのあの名曲に振付けた古典バレエの代表作。来日前の李は、母国の韓国国立バレエ、短期契約ダンサーとして在籍したパリ・オペラ座バレエ、また韓国のユニバーサル・バレエで活動し、さまざまな『白鳥』に触れてきた。
「実は、プロとしてデビューしたのが『白鳥の湖』でした。韓国国立バレエにいた時です。
『白鳥の湖』 撮影:長谷川清徳
ライト版『白鳥の湖』は未経験。「僕にとっては、まだ“謎”な感じです」と、役柄についての考察を含め、新たな役柄への取り組みが本格化するのはまだまだこれからだという。「まだ『白鳥の湖』のリハーサルが始まるまでは、『ライモンダ』のことで頭がいっぱいです!」と、朗らかに笑う。そんな弾けるような笑顔としなやかな踊りで舞台上からハッピーなオーラを振りまく姿が印象的な彼が、ジークフリードのような憂いの王子にどのように向き合い、表現するのだろう。
「こうした悲しい作品で主役を演じるのは初めて。第1幕の最初のジークフリードは、本当なら自分の誕生日で嬉しくてハッピーなはずですが、どこか沈んでいる。ベンノが王子を励まそうとしてクルティザンヌ(高級娼婦)のふたりを連れてきても、楽しめないんです」。宴に突然現れた母妃から、翌日の舞踏会で花嫁を選ぶよう命じられたことで、王子は憂鬱な気分に。その後、夜の湖畔で出会ったオデットと恋に落ちるも、第3幕では彼女そっくりのオディールに愛を誓ってしまい──。「騙された王子はすごくショックを受けて、オデットを探しに行く。そういったジークフリードの感情の動き、ドラマがお客さまにちゃんと見えるように丁寧に演じて、彼の純粋な心を大事に表現したい。ストーリーがよく見えないと、お客さまに感動を与えることはできないから」。
素晴らしい音楽があるから、きっと自然に踊れる。
まさにいま、パ・ド・ドゥの経験を積み重ねている最中だが、これまでにもさまざまな課題を乗り越えてきた。
「全部コントロールしながら動く必要があるので、難しいですよね。男性が女性の後ろでどういう風にサポーティングしていくかで、女性の踊りに影響が出てしまう。
第2幕、夜の湖畔で出会ったオデットとジークフリードが踊るアダージオの美しさは格別。これぞ古典バレエというべき名場面中の名場面だ。
「僕は柔らかい踊りが好きなので、第2幕のアダージオを踊れることがとても楽しみです。素晴らしい音楽があるので、きっと自然に踊れると思います。僕はいつも、音に“入ろう”としています。そうすることで、多分、自然に演技ができるようになる。考えすぎると逆に身体が固まってしまって、いろんなことが壊れて、不自然になる可能性がある。一番大事なのは、いつも通りやること。
『ライモンダ』 撮影:瀬戸秀美
第4幕には、ライト版ならではのオデットと王子の美しいパ・ド・ドゥが用意されているが、「観たことのない第4幕。楽しみ!」と、初役の不安よりワクワクが勝る。
「僕が一番大切にしているのは自分の“色”。自分で“こういう色を作ろう”、と考えることはないけれど、自分が思うジャンの演技ができたらいいし、自分が思ったジークフリードを表現できたらいい、と思っています。それをお客さまが感じてくださったら嬉しいです」
日本のアニメが好きで、日本に住んでみたかった。Instagramで新国立劇場が発信する動画を見たことがきっかけとなり、オーディションを経て入団したが、新国立劇場はもう、彼にとって“家”のような場所に。このバレエ団の好きなところを尋ねると、「うーん、全部好きすぎて(笑)」と困惑するも、挙げ出したら止まらない。
「まずは、リハーサル。生のピアノの伴奏でのリハーサルが心地良いです。都さんもお話ししやすい方です。
大好きなバレエ団の皆とともに取り組む『白鳥の湖』。6組の主役カップルが競演する中で、自分たちだからこその舞台を、しっかりと届けたい。
「ジークフリードは21歳。僕は彼に年齢が近く、等身大の王子です。安定した演技ができるよう、いっぱい練習をして、紗帆ちゃんと呼吸を合わせてのぞみたいですし、お客さんにいいところをお見せしたいと思っています!」
取材・文:加藤智子
<公演情報>
新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』
振付:マリウス・プティパ / レフ・イワーノフ / ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト / ガリーナ・サムソワ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:
2026年6月5日(金) 18:30
オデット/オディール:小野絢子
ジークフリード王子:奥村康祐
6月6日(土) 13:00
オデット/オディール:木村優里
ジークフリード王子:速水渉悟
6月6日(土) 18:30
オデット/オディール:米沢 唯
ジークフリード王子:福岡雄大
6月7日(日) 14:00
オデット/オディール:吉田朱里
ジークフリード王子:井澤 駿
6月9日(火) 13:00
オデット/オディール:柴山紗帆
ジークフリード王子:李 明賢
6月10日(水) 14:00
オデット/オディール:小野絢子
ジークフリード王子:奥村康祐
6月11日(木) 18:30
オデット/オディール:木村優里
ジークフリード王子:速水渉悟
6月12日(金) 14:00
オデット/オディール:米沢 唯
ジークフリード王子:福岡雄大
6月13日(土) 14:00
オデット/オディール:直塚美穂
ジークフリード王子:渡邊峻郁
6月14日(日) 14:00
オデット/オディール:柴山紗帆
ジークフリード王子:李 明賢
指揮:
ポール・マーフィー(5日、6日18:30、7日、9日、10日、12日、14日)
冨田実里 (6日13:00、11日、13日)
管弦楽:
東京フィルハーモニー交響楽団
2026年6月5日(金)~6月14日(日)
会場:東京・新国立劇場 オペラパレス
バレエ『白鳥の湖』バックステージツアー
2026年6月7日(日) 14時公演終了後
関連リンク
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509132(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509132&afid=P66)
公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/swanlake/

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