深刻な人口減少と労働力不足に直面する日本にとって、外国人を含めた人材の確保が欠かせない。人材難に苦しむ地方ではさまざまな取り組みが展開されている。
高市首相は「将来必要となる労働力の規模を考える必要がある」と訴え、少子化の歯止めや労働参加の拡大とともに、外国人の就業を考慮に入れる方針を示している。
働き手不足は1100万人?
高市政権が掲げる重点17分野の成長戦略も外国人の活用が必須条件だ。人工知能(AI)・半導体、造船、量子、バイオなどを対象とする。
政府は2025年12月、業界ごとに28年度までの人手不足の試算を示した。最も重視する「造船」は8万人不足する。女性や高齢者の雇用拡大や生産性向上などの施策を講じても3万7000人程度は外国人の働き手が必要になるという。
重点分野の航空・宇宙や防災・国土強靱化、港湾ロジスティクスに関わる「航空」「自動車運送」「物流倉庫」「建設」などの業界も同様だ。日本人だけでは足らず、外国人に頼らなければならない。
有識者の多くは「AIなどの新技術は開発者も足りず、将来、保守点検を担う人材を含め、外国人で補う必要がある」と指摘。特に暮らしや産業を支える「エッセンシャルワーカー」が不足する。
全国知事会は25年11月、外国人が「地域の一員として社会を支える、なくてはならない存在となっている」と宣言した。外国人の労働力が欠かせない分野として、製造業やサービス業、介護・福祉などを挙げた。
民間シンクタンクの試算によると、日本は人口減少で2040年に1100万人の働き手不足が生じる。
外国人受け入れは「好機」
こうした中、外国人の受け入れと多文化共生に取り組んでいる鈴木康友静岡県知事が2月に日本記者クラブで記者会見し、外国人受け入れは「脅威でなく好機」と語った。
鈴木氏は2007年から4期、政令市の浜松市長を務めた。日系ブラジル人の住民が多い同市で、庁舎の中に外国人向けの学習支援センターを作るなど、共生社会の実現に向けた施策を進めた。2024年に静岡県知事に就任。全国知事会では「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム会議」のリーダーを務めている。
鈴木知事によると、静岡県には過去最高の12万8000人の外国人が生活している。1990年には約2万人にとどまっていたが、同年の入管法改正後、日系人を中心に増加。浜松市など製造業が盛んな県西部地域を中心に、「在留資格」を有している外国人が急増した。近年は「就労資格」や「留学」が増加。出身国・地域は130に及び、多国籍化が進展している。
外国ルーツの子どもの不就学ゼロを目指す
静岡県の多文化共生の取り組みについて、「こころの壁と言葉の壁のない静岡県」をモットーに(1)多文化意識の定着(2)やさしい日本語の普及(3)外国人相談窓口の充実(4)外国人向け情報提供の強化(5)外国ルーツの子どもの不就学ゼロを目指した教育環境の整備(6)働きやすい環境の整備―などを列挙した。
全国知事会に「多文化共生プロジェクト(PT)チーム」が設置され、技能実習から育成就労への円滑な移行、多文化共生の形成に向けた国の推進体制の構築などを推進している。25年7月に「多文化共生」をテーマとしたセッションを初開催。
参加した各県知事から「労働力不足が深刻な中、外国人の受け入れは必要」「外国人の増加に対する不安を解消するためのメッセージや適切な入国管理も重要」「自治体は根拠を持ってしっかりと国に働きかける必要がある」などの意見が表明された。
全国知事会は青森県で開いたセッションで「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す」と明記した「青森宣言」を発表した。
宣言は「日本では外国人を受け入れるか受け入れないかの基本的方針を議論しないまま今に至るが、(外国人の受け入れは)特定地域の問題ではすまされなくなっている」として、多文化共生の施策を実施する上での根幹となる総合的な基本法の策定、司令塔組織の設置を政府に求めた。
これを受け、全国知事会は「外国人の受け入れと多文化共生社会の実現に向けた提言」をまとめ、国が責任をもって「育成就労制度」に取り組むよう要請した。
地方自治体は続々新制度をスタートさせている。仙台市は生活上の言語の壁を取り払うため、20カ国語以上に対応した通訳電話を設けた。薬局で店員に症状を伝えるなどの身近な場面でも利用できるという。福井県は「ふくい外国人コミュニティリーダー」を新設。生活や災害に関連する情報を母国語で発信し、日本人と外国人の橋渡し役を担う。
外国人の声を拾い上げる仕組みを導入する自治体もある。川崎市は1996年に外国人市民代表者会議を設置。
経済同友会の山口明夫代表幹事は7月10日の日本記者クラブでの記者会見で「外国人と日本人を分けて考えるべきではない。日本にいる全員が幸せを感じる社会づくり『共生』が必要だ」と指摘。「教育は未来に対する投資。外国籍の子どもたちに教育を保障することが、未来の日本の活力になり、元気や豊かさをもたらしてくれる」と訴えた。
外国人労働者は生身の人間
人口減少が進む日本で外国人労働力は不可欠だ。にもかかわらず、外国人受け入れに関する本格的な政策論議は行われていない。
日本総研調査部長の石川智久氏は日本記者クラブでの講演で、「日本では高度人材の活用が限定的だ」とし、外国人の日本社会への包摂を図る上で方向性、司令塔、統計の「三つの不在」を解消することが重要との見方を示した。「政府が移民政策を否定しているため一貫した方針がなく、各省横断的な取り組みは行われていない。政策立案しようにも外国人に関する統計が不十分」として、司令塔となる多文化共生庁(仮称)の創設を提案した。
日本では「移民」という言葉を使ったとたん、猛反発に遭い、議論にならないことが多い。
外国人労働者は生身の人間であり、家族もいる。どんな人をどのくらい受け入れるのか、どうやって日本社会になじんでもらうか。冷静に議論できる環境が欠かせない。建設的な移民政策が待ったなしである。











