2026年8月13日、中国メディア・観察者網は、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に掲載された元英国保健政務次官のアラ・ダルツィ氏の寄稿を取り上げ、欧米諸国が抗生物質の主要原料を中国に高度に依存しており、レアアース問題に匹敵する安全保障上のリスクになっていると報じた。

記事は、米外交問題評議会(CFR)の報告書を引用し、代表的な抗生物質「アモキシシリン」の主要原料の約94%を中国が供給しているほか、世界全体の抗生物質原料薬(API)輸出の約半分を中国が占めていると紹介。

米国で承認されている医薬品のうち約700種が中国のみで製造される化学原料に依存していると伝えた。

そして、地政学的衝突や新たなパンデミックが発生した際、主要原料の製造能力が強力な外交交渉カードになり得ると指摘した。

その上で、欧米企業が抗生物質の生産や開発から撤退し中国依存を深めた根本的な原因として市場構造の問題に言及。耐性菌の出現を防ぐ理由から新薬ほど使用が厳格に制限されて収益化が難しく、大手製薬会社の撤退や開発ベンチャーの破産が相次いだと説明した。

一方で、中国は単なる製造請負にとどまらず、創薬分野でも過去10年の規制改革を経て、今や世界の新薬開発パイプラインの約3分の1を占めるまでに台頭したと紹介している。

記事によると、欧米側も供給網の奪還に向け、英国での定額支払い調達制度の導入や、米国での耐性菌対策・開発促進を目的とした「パスツール法案」の提出など対抗策を講じているものの、法案の停滞など難航しているという。

医療イノベーション政策の専門家であるダルツィ氏は、欧米が創薬の技術力を保ちつつも、自国で「製造・支払い・活用」を行うエコシステム自体を喪失しているとした上で、抗生物質を石油や半導体、レアアースと同様に国家の「重要インフラ」と再定義して保護・維持していく必要があるとの見解を示している。(編集・翻訳/川尻)

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