4月28日に内藤哲也の盟友・BUSHIが自伝を出版した。都内書店でイベントも開催、BUSHIは上機嫌でお渡し会を行っていたという。

 



この自伝の目玉は当サイトでもふれた「株式会社UNPASO倒産騒動」である。帯には「X氏不適切行為の真相」と書いてあり、BUSHI本人もXで「真相をお話しします」と投稿している。当サイトでの記事配信後、LOS TRANQUILOS de JAPONのファンサイトには、「(反論は)BUSHIの自伝にて加筆いたします」という声明も出されている(現在は削除済み)。



内藤・BUSHIサイドの言い分は何なのか。確認するべく、発売日当日に書店で入手して読んでみると、明らかな誤りや取材を受けてくれたX氏はじめUNPASO関係者の名誉を毀損する記述がいくつもあった。このまま黙ってはいられない——義憤にかられて再度筆をとった。





■UNPASO社の初期を知った風に書くBUSHI



 まず、「株式会社UNPASO」をめぐる事実関係が歪めて書かれている。



 事実を整理すると、UNPASOは2025年2月頃より、内藤、X氏、前回の記事でも紹介した経理担当のA氏、フードサービス事業本部長のY氏、マネージャーのZ氏というメンバーで事業を開始していた。登記が完了したのが4月3日、内藤の新日本退団が正式に発表されたのが4月16日である。



 そして内藤に追随して退団したBUSHIがやってきたのは5月。スポーツ選手のマネージメント部門が設立されてからだ。しかし本書でBUSHIは、まるで自身が初期メンバーだったかのような書きぶりで、X氏は後から受け入れたとミスリードする記述になっている。



《内藤はその後、新日本を退団。X氏に、某メジャー団体との契約を含むマネージメント業務、会社運営、グッズ制作を含む業務を委託し、UNPASOへ受け入れることになった》(p226)



 UNPASOは当初から内藤のプロレスラー引退後のキャリアの受け皿にしようと、メインの事業をフードサービスに据えていたわけだが、これもまるでわかっていない。



《内藤もオレもプロレスがやりたかっただけで、フードサービスに興味はない》(p237)



 と、吐き捨てる始末。UNPASOは決してプロレスがメインの会社ではなかった。その証拠に、会社設立時に登記簿の目的欄には「フードサービスFC事業」と書かれている。



 誰でもアクセスできる資料として、企業分析バフェットコードの《「株式会社UNPASO」のページ》がある。業界の欄に「飲食FC本部・飲食経営コンサル・淡水養殖・内水面漁業・うなぎ・天ぷら・そば専門店運営」という表記が確認できるはずだ。



 また、UNPASO社の本店は2025年11月に内藤の地元・東京都足立区に変更されるまで、品川区にあった。その住所は、りんかい線・品川シーサイド駅にある高級マンション――これはX氏の自宅である。



 本書225ページから「業務委託のX氏」という表現が繰り返し使われているが、X氏が単なる外部の業務委託者であれば、自宅マンションを本店所在地として半年以上提供する合理的説明がつかない。X氏は組織図においては「会長」という肩書がつけられていたし、実質的な共同創業者・経営者だったと判断するのが自然である。



 確かに会社の経営を委託することがないわけではない。

しかしその場合、「業務委託」ではなく文字通り「経営委託」(民法の準委任契約にあたる)と表現するのが正しい。実際、ホテル業界のマネジメントコントラクト契約やM&A後の事業承継など、実務で広く使われる契約類型だ。にもかかわらず本書にも東スポの記事にも、LOS TRANQUILOS de JAPONのポータルサイトにも、どこにも「経営委託」とは書かれていない。





■1.8億を投じる予定だったX氏をこきおろす愚行



 また、本書で論理が破綻している箇所がある。



《考えてみればオレも会社から一度も支払いを受けていない》(p229)



 とUNPASOの未払いを嘆いておきながら、こうも主張するのだ。



《会社の運営資金の大部分は内藤が出している》(p230)



 本当に運転資金を内藤が出しているのであれば、BUSHIは内藤にギャラを請求できたはずであろう。なぜ「一度も支払いを受けていない」などと言えるのか。内藤はX氏を通さずにBUSHIにギャラを支払い、BUSHIが領収書を内藤に渡せば済む話だ。内藤はBUSHIの領収書を経理のA氏に出しておけば終わりである。A氏は領収書を簿外にしておき、利益が出たら順次計上してくれたはずだ。



 X氏がまるで会社を食い物にしていたかのような記述も目に余る。



《X氏は会社にカネを請求してきた。

グッズの制作費、会場費などをLINEで請求してきて振り込みを求めてくる。それらの多くが請求書を提示しない、不透明な支出だった》(p230)



 しかし実際にX氏が内藤に振り込みを依頼したのは、権利手続きに関わる費用や輸入グッズの関税、不動産申込金など、会社の事業遂行に必要な前払い金などであり、これも未払い費用で補助簿に記録を残してあり、売上の推移を見て本人に精算するものであった。



 そしてグッズの制作費や会場費についても、請求書の原本はX氏が保管しており、X氏自身が「正式に依頼があればいつでも開示する」としている。以下はX氏の肉声だ。



「請求書はいつでも渡しますが、それが欲しいなら私に直接依頼するのが筋でしょう。相談の会話が一切なく突然警察呼ぶような茶番の場面を作って追い出しておいて、引き継ぎも事務整理もこちらから申し出るのはおかしいと思っているからです。私の拠出費用や未清算金も宙に浮いたままです。



 彼らは私の面前から突然去ってしまったきりです。これは旅行中にSAでトイレに行って戻ってきたらクルマもろともいなくなった、というくらい何も事情がわからない出来事でしたからね。恋人でも別れ話くらいするでしょう」



 UNPASO社の精算を本気で考えているのならば、請求書の確認は不可欠だ。にもかかわらず内藤側はX氏への正式な引継ぎ要請も開示の要求も行っていない。X氏への不誠実な態度といい、一体何を精算しようとしているのだろうか。



 さらに本書でBUSHIは、「ここからは推測になる」と予防線を張りながら、X氏のUNPASOの最終的な狙いはフードサービスのフランチャイズ展開で出資金を募り、それを懐に入れることだったと妄想を膨らせる。



《海外の某メジャー団体との契約は、店を出し、出資金を集めるまでオレたちをつなぎとめておく“エサ”だった可能性が高い》(p237)



 これもとんでもないウソだ。X氏は出資金を募るどころか、自身の保有株を売却して、この事業に約1.8億円を捻出する予定だったのだ。実際に筆者は資金を用意していた事実を裏付ける売却資金の残高明細を確認している。



 X氏にまつわるデタラメはまだ続く。「X氏はプロレス界にまだ出入りをしていて」という記述だ。今回の件でX氏は業界関係者から心配されているものの、今後自身はプロレス業界と関わるつもりはないと明かしている。





■再確認した弁護士の常軌を逸した行動



 次におかしな点は本書で度々登場してくる「弁護士」の存在だ。株式会社UNPASOに顧問弁護士はいないので、この弁護士は外部委託された代理人となる。そうなると誰が、何の為に依頼したのだろうかという話になる。



 内藤が会社内部の調査を依頼したのならば、本来はUNPASOの利害関係者(X氏、Y氏など)と協議のうえ行うべきものだ。UNPASOでは、グッズのデザイン、事務所の移転、人事(“女帝”C氏の入社や筆者の業務委託契約締結)など、会社の重要事項はすべて内藤・X氏・Y氏の合意のもとで決定してきた経緯があるからだ。



 依頼したのはC氏である可能性が高い。その弁護士とは旧知の間柄だと聞くからだ。不正経理の内部告発を名目に依頼したのだろう。



株式会社UNPASO倒産騒動の真相!《前編》」にも記載したように、社員の給与やLOS TRANQUILOS de JAPONのグッズを制作する費用など即時処理をせずに簿外とし、一時的に未処理のまま補助簿で記帳したことを不透明とC氏と弁護士から指導を受けた。



 これは新規取引の与信上の便宜暫定で累損が消えるであろう当期中に、短期借入金勘定で処理をする予定だった。つまり不正経理には当たらないから、弁護士の指導は不当なものだ。



 会社の実印を奪い取られたのも、この弁護士の入れ知恵があったと書かれている。



《会社から不正に金を引き出し、会社に不利な契約を結ぶ恐れがあるので、早急に手を打ったほうがいいと言った。オレたちは弁護士のアドバイスに従い、会社の口座を止め、社印を確保した》(p232)



 横領などを防ぐために一時的に社印を確保するケースはあるが、先述したように帳簿上問題はなかった。経理の問題がなかったのに社印を確保する指示は、本当に法的な根拠に基づくものなのか。



 本書では、X氏が交渉をすすめていた内藤とアメリカのメジャー団体の契約を「最初からどこにも存在していなかった」と断じ、その根拠を弁護士がメジャー団体に問い合わせた結果、としている。



 しかしこの弁護士の問い合わせはかなり頓珍漢と言わざるを得ない。



 メジャー団体とUNPASOは直接交渉するわけではない。メジャー団体との契約は、コントラクトエージェント(フリー選手の場合米国では一般的に契約代理エージェントを介すのが前提条件である)と法律事務所がドラフトの条件を調整するものである。内藤サイドも、メジャー団体との間にエージェントと米国側のレップ(※)がいることを認識していたはずだ。



 そして内藤の場合はまず、アメリカのローカル団体にビザスポンサー(当初ビザが早急に取れるということだったため)になってもらい、その団体に定期参戦した後、メジャー団体にスポット参戦を経てから正式契約するという筋書きであった。



 そもそも、メジャー団体が問い合わせを受けても、相手が内藤とBUSHIの正式な代理人であるかを確認できない限り、契約内容について回答するはずがない。代理人として認められるには、事前にエージェント経由で正式な代理人契約の存在を証明する書類を提出する必要がある。本書には弁護士が代理人契約を結んだ形跡は記されておらず、「問い合わせてくれた」というBUSHIの言い回しからも、事後報告だったことがうかがえる。



※:レップとは現地にいる連絡仲介人のこと。





■「ドラフト」にまつわる記述も疑問だらけ



 本書を読んでいると、そもそもBUSHIは「ドラフト」の意味を理解していないのではないかと思う。



 ドラフトとは契約書の「下書き」であり、署名・押印を経ていない交渉段階の未確定な文書だ。「ドラフト」を叩き台として、当事者間で詳細条件の交渉を重ね、最終的に署名・押印された正式な契約書が発行されて初めて、契約が成立する。BUSHIが「証拠となるドラフトも保管している」と書いているが、それは正式契約書ではなく交渉途中の文書でしかない。



 つまり、まだ契約条件交渉中の段階の文書なので、機密保持のために契約者(エージェントおよび選手)以外から問い合わせてもまともに答えるわけがないのだ。メジャー団体が「このような契約書を送ったことも、承認したこともないし、内容もうちの団体のどの条件とも異なる」という返事を送るのは当然だと言えるだろう。



 またBUSHIはドラフトをめぐって、こうも告白している。



《X氏は先方との取り決めで守秘義務があるので契約内容は誰にも話すなと言っていた。だがAさんも会社のスタッフだ。ドラフトを見せても構わないだろう》



 BUSHIは機密保持契約を確認した上で伝えたのだろうか。C氏が依頼した弁護士は機密保持契約書をチェックしたのだろうか。



 X氏に確認したところ、機密保持契約の中に「当事者以外に閲覧させてはいけない」という趣旨の条文があるそうだ。そうなると彼らは情報漏洩の罪に問われる可能性が出てくる。



 本書でBUSHIは「オレたちとしてはこのまま終わらせるつもりはない。この件に関しては弁護士に入ってもらっている」と記載しており、何かことを起こしても勝つ自信があるようだ。「証拠となるドラフトも保管している」と明かしているが、ドラフトは「正式な署名・押印の前段階として作成される仮の文書」だと改めて指摘しておこう。



 筆者が株式会社UNPASOの倒産騒動を記事にしたのは、「内藤、一体何やっているんだ」という思いからである。筆者は内藤のプロレスラーとしての選手生命はそう長くないだろうと考えている。膝も目も現在のコンディションを保つのが精一杯なのは試合を見ていれば伝わるだろう。



 そこで彼の将来を考え、「引退後のビジョン」を作っておきたいと思ったのがX氏である。



 内藤が引退した後、フードサービスFC事業をはじめとする新規ビジネスを展開する実業家として成功してほしいという思いから株式会社UNPASOを一緒に立ち上げた創業者なのだ。



 彼も当初はそのことを理解していたのだろう。だから登記簿に「飲食FC本部」と記載したと信じたい。前提条件である「X氏は業務委託」は崩れ去ってしまっているし、株式会社UNPASOはフードサービスFC事業もやるために設立された会社なのは謄本上でも明らかだ。BUSHIには真摯な対応を期待したい。





取材・文:篁五郎





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