1872年、大西洋上で乗組員全員が跡形もなく消え去った状態で発見されたアメリカ商船メアリー・セレスト号は、長年にわたり海賊の襲撃や超常現象など様々な憶測を呼んできた。この150年もの間、世界中を翻弄し続けた「幽霊船」の謎に、マンチェスター大学の研究チームが終止符を打つ可能性が浮上している。



 英チャンネル5のドキュメンタリー番組『メアリー・セレスト:謎の解明』において、同大学の化学者ジャック・ローボサム氏やフランク・メア氏らのチームは、船に積載されていた1700樽の工業用エタノールに着目した。



 ローボサム氏は、ニューヨークからイタリアのジェノヴァへ向かう途中で樽からアルコール蒸気が漏れ出し、それに引火して爆発が起きたと推測。エタノールは摂氏2000度という超高温で燃焼するため、火災の痕跡を一切残さず、大惨事は「一瞬で終わった」という。パイプからの火花や金属同士の摩擦などが引火の原因とみられている。



 この説は、2006年にロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の化学者であるアンドレア・セラ氏が行った再現実験とも符合する。セラ氏は当時の実験で、圧力波型の爆発が煤(すす)や焦げ跡を残さずハッチを吹き飛ばす威力を持ち、乗船していた全員を極度の恐怖に陥れて船を放棄させるのに十分だったと結論づけている。



 つまり、船の爆発・沈没を恐れた乗組員たちが慌てて救命ボートで海へと脱出したものの、その後、荒波にのまれて全員が死亡したというシナリオだ。



 ローボサム氏も模型を使った実験を経て、「爆発後の正確な足取りは分からないが、複数の要因が組み合わさったこのシナリオは非常に説得力がある」と確信を見せている。



文:BEST T!MES編集部

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