テーマが原点回帰で、初代「かまいたちの夜」と同じく、舞台は雪深い山奥のペンション、巻き起こる連続殺人事件!
小2のときに「かまいたちの夜」をプレイしている俺は懐かしさと期待でウキウキになってしまった(完全クリアしたのは高校生のときだけど)。
そういえば、エキレビ!ライターの池谷勇人さんに「『真かまいたちの夜』って初代『かまいたちの夜』のリメイク?」と聞かれたんだけど違いますよ~、完全新作です。
「真かまいたちの夜」のシナリオ監修は我孫子武丸さん、演出指導やサイドストーリーの執筆、編集作業は麻野一哉さんと初代からのファンにはワクワクせざるを得ない組み合わせだ。……って、我孫子さんも麻野さんもエキレビ!のライターじゃないか! これはぜひ話を聞きにいかないと……!
チュンソフトで我孫子さん、麻野さんを待つあいだ、会議室でいち早く「真かまいたちの夜」をプレイさせてもらった。
うおお、PS Vitaはじめてさわった(取材は11月下旬、Vita発売は12月17日)! キャラクターのシルエットが青色でベタっと塗った感じじゃなくて、なんか立体的だ。3D! 文字も画面いっぱいに出るんじゃなくて、下半分に表示されてるから画面見やすいんだなあ。うおっ、しゃべった! そうか、今回は声が出るんだ。あ、今回の舞台になるペンションだ。「かまいたちの夜」のときはシュプールだったけど、今回はブラウニーだって。
ノリノリでプレイしてペンションの宿帳に名前を書き入れようとしたところで、我孫子さん、麻野さん登場。プレイは中断して、お話を伺うことに。
(*「真かまいたちの夜」2011年12月17日発売。プラットフォームはPS3とPS Vita。
監修だけではなくて、シナリオをぜんぶ書かないといけないんじゃないか
――何度もお話されていると思いますが、我孫子さんが*「かまいたちの夜」の脚本を書くことになったのは。
(*「かまいたちの夜」1994年にSFCで発売。以降、PSやGBA、携帯ゲーム機で移植、リメイクされる。チュンソフトから発売された、サウンドノベルシリーズ第2弾。舞台になっている雪山のペンションで起こる殺人事件の謎を解くのが目的。周回プレイ前提のマルチエンディングシステム。実写を取り込んだ背景、青いシルエットで表現されたキャラクターなどが特徴的。「弟切草」に続き監督は麻野一哉。
麻野 *「弟切草」をつくったとき、ユーザーから「次回はもっとミステリっぽいものをやりたい」という声が多かったんですよ。これは本職に頼まないとあかんなということで、いろいろなミステリ作家に手紙を出したんです。
(*「弟切草」1992年にSFCで発売。チュンソフトのブランドデビュー作。「かまいたちの夜」「街」などのサウンドノベルシリーズの第一作目。麻野一哉は原案、監督、序盤のストーリーを担当)
――我孫子さんひとりだけではなかった。
我孫子 知り合いにもたくさん来ていたみたいです。井上夢人さんとか法月綸太郎くんとかね。それで返事を出したのが僕だけやったという(笑)。
――なぜ我孫子さんだけが返事したんですかね?
我孫子 僕がミステリ作家のなかでも相当ゲーム好きだったからじゃないかな。
――ははは、当時チュンソフトが「ドラクエ」を開発していたから、「かまいたちの夜」も監修だけやって、「ドラクエ5」をもらえれば美味しいって「夜のゲーム大学5」で言ってましたね。
我孫子 そう。喜んで返事を出したら、中村光一社長と営業の中西一彦さんと麻野さんが、僕が住んでいる京都まで来て、4人で打ち合わせをしていたんです。そうしたら、どうもこれは僕は監修だけではなくて、シナリオをぜんぶ書かないといけないんじゃないか? と。
――わー(笑)。
我孫子 ふつうゲーム内のテキスト量って知れてるじゃないですか。だから、チュンさんのほうでシナリオができあがっていて、それを書きなおすのかと思っていた。そうしたらゼロから、好きなようにやってくださいって。
――麻野さんはもう「書いていただこう」っていう気持ちまんまんで手紙を送ったんですよね?
麻野 うん(笑)。「弟切草」序盤のストーリーは僕が書きました。
「なんでゲームの仕事なんかするんですか?」と面と向かって言われた
――ぜんぶ書くことになっても、この仕事はうけてみようと?
我孫子 やったことのないことはやりたがるほうなんですよ。それに「弟切草」にもちょっとした不満があったわけですよ。
――どんな?
我孫子 いくつもシナリオがあって、それがタテに並んでいる。それを分岐であっちに行ったり、こっちに戻ってきたり、あみだくじ状態で、最終的にどこに落ち着くのかわからないんです。それは新鮮ではあるんですけど、ゲームとして考えたときは、プレイヤーのコントロールをちょっと超えているところがある。こっちの分岐を選んだから死ぬ、みたいな、理屈で解けるゲームではなかった。シャッフルしたストーリーを読めるという、これは進みすぎたシステムなんじゃないかと思って(笑)
――「自分がつくるときはもっとゲームらしくしてやるぞ」みたいな。
我孫子 そう。
麻野 一年半くらいやってましたよね。
我孫子 さいしょは半年くらいでできると思ってたんですけどね(笑)。
麻野 「かまいたちの夜」の発表をどこかでやったよね。どこやったかな、なんか新宿の。
我孫子 ホテルの会場を借りてね。
麻野 そうそう。
――発表?
我孫子 製作発表。まだ画面なんかぜんぜんできてないから、仮の画面で。
麻野 ああ、そうだそうだ。
我孫子 ゲーム雑誌の人も大勢来ていたんですけど、たまたま小説関連の人も来ていたんですよ。その人に「なんでゲームの仕事なんかするんですか?」と面と向かって言われたんですよ。「小説家なのになんで?」というわけですね。「面白そうだからやるんです」と答えましたけど。
――ゲームをやらない人なんですかね?
我孫子 そうでしょうね。活字は読むけど、ゲームをしない人はたくさんいる。僕がゲームをつくっている間は新刊がでないわけですから。
――あ、そうですよね。我孫子さんの本が読みたい人は、なかなか新作が読めない。
我孫子 そうしたら「我孫子、仕事してないな」と思われる(笑)。
――どうやって食べてるんだみたいな。
麻野 なんか悪いことしとるなーと。
我孫子 成功してよかった、ほんとに売れてよかったよね(笑)。
――我孫子さんが脚本だったからってのはある気がします。「弟切草」への不満点でそこまで発想していたなんて。
我孫子 「ここをもっとこうしたい」とか「こんなゲームがあったらいいのに」ということはいつも考えているんです。小説脳というより、ゲーム脳かもしれないですね(笑)。
(加藤レイズナ)
中編はコチラ、後編は12/21(水)更新予定。
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