木製であたたかみのある玩具や、趣向を凝らした知育玩具など、近年の赤ちゃん用のオモチャって、本当によくできているものが多い。
でも、どういうわけか、赤ちゃんにあげてみると、そうしたオモチャよりもただのティッシュとかビニール袋とか「オモチャ以外のもの」のほうに盛り上がっていて、ガッカリした……なんて経験をしたことがある人はけっこういるのでは?

大人側からすると、「なんでビニール袋のほうが面白いの?」と落胆したりもするけれど、赤ちゃんはなぜオモチャ以外のものに惹かれるのか。

ゆうメンタルクリニック総院長・ゆうきゆう先生に聞いた。

「赤ちゃん用のオモチャというのは、基本的に安全性や衛生面の重視が優先されます。というのも、月齢が小さいほど手足や耳などからの情報よりも、口からの情報が多く、『何でも口に入れてしまう』ということになりがちで、なおかつ力の加減をしませんから、自分にぶつけてしまうことも多くあるのです」
そのため、衛生面や安全性が優先され、「大人が手入れしやすい」「怪我をしづらい」といった、大人の都合で考えられて作られた部分も多くあるそう。
「衛生面や安全性を加味することで、赤ちゃん用のオモチャはどこか似通っていたり、素材や感触が制限されている部分があります」

なるほど、言われてみれば確かに……。でも、だからといって、ティッシュやビニールのどこに面白さがあるのかは、大人にはわからない。
「赤ちゃんは普段、柔らかい布に囲まれていることがほとんどですから、ティッシュやビニール袋は、衛生面から見てあまり望ましいとは言えませんが、その感触は非常に新鮮です。
また、鈴などの耳障りのいい音よりも、ビニールのガサガサした音の方が落ち着くという話もよく聞きますね。これはビニール袋がこすれる音が、胎内の血流音に似ているなど、色々な説がありますが、赤ちゃんはオモチャにありがちな高音よりも、低音を好むと言われています」

ちなみに、ティッシュを延々と引き出せるように作られたオモチャもあるが、
「赤ちゃんにとっては、本物のティッシュで周囲を散らかしてしまう方が楽しいようです」という。どこが違うの?
「引き抜くときのシュッという音や、取り出すときに抵抗が無くなる感覚、ティッシュペーパーそのものの感触などは、やはりオモチャとは違うのです。また、大人の反応を見て楽しんでいる場合もありますが、その際は『関心を引きたい』という意味合いが強いでしょう」

大人の言う「やめて!」「あーあ……」という反応が、自分の行動によって引き出せるとしたら、それはそれで赤ちゃんにとっての新しい遊びになる、ということらしい。
「成長に伴って、遊び方が同じでも、興味のポイントが変わっていることもあるんですよ」

相手の反応を見て「遊ぶ」ことは、実は大人になってもよくあること。それも成長の証ってことなのかも。

(田幸和歌子)

※ゆうきゆう/精神科医・著書多数。ゆうメンタルクリニック総院長(上野院 03-6663-8813 上野駅0分)。(池袋院 03-5944-8883 池袋駅1分)。(新宿院 03-3342-6777 新宿駅0分)