狼族のつまはじき者だったシーラの過去、駆け落ちしなければならなかった理由が語られる一方、本編のエピソードがそこかしこに登場。懐かしさ倍増必至のサービス満点だ。
「吸血鬼のお父さんと描きたくて『ときめきトゥナイト』を描いた」
単行本の柱記事に書かれていたこのひと言。『ときめき』の生みの親ともいえるモーリの5つの魅力を紹介する。
努力で吸血鬼らしさを克服
連載当初は日光を浴びればヤケドをし、十字架に悲鳴をあげていたモーリ。
「17年間努力をかさね 今では昼もおきてられるし太陽さえ平気!」
吸血鬼らしい姿は影をひそめ、人間界にはじめてきた魔界人たちに胸をはって語ったりするように。「それでも吸血鬼か?」「できそこないの魔界人」と口々につっこまれてもこたえない。蘭世の天真爛漫な明るさは父親ゆずりだと思えてほほえましい。
ちなみに蘭世と俊の結婚式場は教会。蘭世はドSかな?
名作は夫婦ゲンカから始まった
「こ これ よしなさい」「問答無用」「かんにん かんにん おかあちゃん」「ぎえ〜〜っ」
蘭世と俊の壮大なラブストーリーを描いた『ときめきトゥナイト』。じつは主人公の蘭世より先に登場したのがモーリ。
しかし、ケンカするほど仲がいいこの夫婦。
双子の王子の不吉な伝説を信じる大王によって、命を狙われた俊と江藤家。とらわれた俊の母親を救けるため、敵の本丸にのりこもうとする。もう帰れないかもしれない。けれど、もし生きて帰ってこれたら…な場面でモーリが口にしたのがこのセリフ。
「もうひとりくらい子どもがほしいな。もっもしもの話さっ」
長年連れ添った夫婦なのに、ほほを赤らめちゃう。恐妻家で愛妻家だなんて最高&最高。
娘を愛するヘッポコお父さん
勇者を名乗るゾーンの策略で、たましいの実を食べてしまった蘭世。気力を奪われ、一日中ぼんやりしている娘をみてモーリは奮起。俊、ダーク=カルロとともに魔界へむかう。
「これで蘭世を救えるのか…。(…)でもただ手をこまねいているよりはましだろう」と取り出したのは斧! 「おとーさんは怒ったぞー!」とたましいのなる木を切り倒そうとする。ところが足が生えて動き出した木に頭をひっぱたかれ、おちょくられてしまう。黒いマントの吸血鬼スタイルで斧を持つ姿はキュート。娘大好き系ヘッポコお父さんだ。
恋の悩み相談も
美人転校生サリ(実は魔界からの刺客)と急速に仲を深める俊。ふたりの姿を見て不安になった蘭世は笑わなくなってしまう。
「蘭世には蘭世の魅力があるんだ。だからそれをくらべたりする必要はないしくらべることはできないんだよ。(…)ああ わたしが父親じゃなくてもうすこし若かったら即!プロポーズするところだ。(…)おまえは笑っていなくちゃ。さっきみたいな情けない顔じゃ魅力は半減。真壁くんのハートもキャッチできないぞ」
モーリのユーモアを交えたはげましで再び笑顔を取り戻す蘭世。
実は『ときめきトゥナイト』には会話をするシーンがたくさん出てくる。
2000年前の王子の生まれ変わりで、魔界の王子という出自。命を狙う実の父親。冥界の王を倒さなきゃならなくなったりと運命に翻弄されまくりの俊。俊を愛し、側にいることを選ぶ蘭世。ふたりにアドバイスをし、時に共に戦うモーリは陰の功労者だ。ここに蘭世の“無償の愛”の源泉を垣間見る。
第2部からは2代目ヒロインのなるみと鈴世のよきアドバイザーとなる蘭世と俊。そして第3部で娘・愛良の隣に座り、話をきく蘭世。叱咤激励する姿に1部の蘭世とモーリの姿が重なって胸熱。
「蘭世 わたしたちはおまえをとがめたりしないよ」
冥王に勝利するも、魔界人の力を使い果たした俊。自分が人間になってしまったことを悟り、蘭世のもとを去る。
「蘭世 わたしたちはおまえをとがめたりしないよ。なぜならこれはおまえが自分で決める問題だったからだ。もちろんおまえが人間になることは さびしいし 残念だ。だがそれを親不孝だと思うな 蘭世。(…)おまえが納得して選んだ道ならば それは決して悲しいことではないからだ」
いつも相談する娘が自分でした決断を、娘ごと受け入れるのだ。モーリは話す時によく相手の名前を口にする。ひとりの人として相手を向き合おうとする姿勢の現れだろう。
『江藤望里の駆け落ち』には表題作のほか、『江藤蘭世の悶々』という話が収録されている。俊のプロポーズ(『真壁俊の事情』に収録)を受けた後の蘭世とヨーコのエピソードだ。恋のライバルで無二の親友。女同士の友情も必見。
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(松澤夏織)