そんなマニア好みなアイドルグループの元祖ともいえるのが、1999年に『ASAYAN』(テレビ東京系)のオーディションからつんくプロデュースでデビューした4人組、太陽とシスコムーン(2000年、T&Cボンバーに改名。同年に解散)だ。
『ASAYAN』オーディションからつんくプロデュースでデビューした点はモーニング娘。とも共通している。しかし太陽とシスコムーンは、あまりにもメンバーひとりひとりの個性が際立ちすぎているのだ。
太陽とシスコムーンのメンバーたち
まずはその濃ゆいメンバー構成からみていこう。
■信田美穂
元ソウルオリンピック体操日本代表。バク宙などを取り入れたアクロバティックなダンスは一流。ただし腰に腰椎分離すべり症という爆弾を抱えている。
■小湊美和
民謡小湊流家元。3歳で初舞台を踏み、各地の民謡コンテストで優勝経験のある歌唱のスペシャリスト。ルックスも正統派美人。ただし既婚者。
■RuRu(ルル)
中国遼寧省瀋陽市出身の中国人歌手。オーディション時点で日本での芸能活動歴が6年間あったが、日常会話でも歌でも中国語なまりが抜けない。
■稲葉貴子
アイドルグループ・大阪パフォーマンスドールの元メンバー。吉本興業所属。ディープな関西弁でトークを繰り広げ、『ASAYAN』MCのナインティナインを「兄さん」と呼ぶことがある。
これだけ個性的なメンバーをそろえたアイドルグループは滅多にないだろう。
腰に爆弾を抱える信田のアクロバットシーン
メンバー4人の中で、特に視聴者をテレビ画面に引き付けたのが元体操選手の信田だった。
信田は、曲の途中でアクロバットを披露することが多かった。信田のアクロバットは、側宙(手を付かない側転)を連続で行うなど、アイドルのアクションを超越したオリンピック選手のゆか演技そのものだった。しかし信田は、選手時代に負った深刻な腰の持病を抱えている。そのため1日に何度もアクロバットシーンを演じることができなかった。
だから毎回ぶっつけ本番になってしまう。
これが女性ファンの「かっこいい」という憧れを生み、男性ファンの「けなげ萌え」に火をつけ、一般視聴者にハラハラとドキドキを感じさせたのだ。
つんく♂は先見の明がありすぎた?
信田のアクロバット以外にも、RuRuによる中国語のセリフなど、太陽とシスコムーンには本格的なパフォーマンスが取り入れられていた。しかし、デビュー曲『月と太陽』のオリコン4位が最高ヒットだった。
つんく♂には先見の明がありすぎて、太陽とシスコムーンは時代を先取りすぎていたのかもしれない。今こそ太陽とシスコムーンの復活・新曲に期待するファンも多そうだ。
(近添真琴)
※イメージ画像はamazonよりMagic of Love Maxi