◆第21回ヴィクトリアマイル・G1(5月17日、東京競馬場・芝1600メートル)

 特別な思いがある。カムニャック(牝4歳、栗東・友道康夫厩舎、父ブラックタイド)を送り出す友道調教師にとって、エンブロイダリーは単なる同世代のライバルではない。

父はアドマイヤマーズ。自ら手がけたG13勝馬の初年度産駒だ。「自分のところにいた馬は種馬でも牝馬でも、子供のことはやはり気になるものだよ」と口にする。

 いつも熱い視線を送っている。昨年の桜花賞は管理馬が遠征していた中山で観戦。レース後には馬主のシルクレーシング・米本昌史代表に電話した。翌週には、あまり面識のなかった森一調教師にも声をかけた。「『おめでとう』と『ありがとう』の両方だけど、やはり感謝の方が強かったかな。種牡馬にとって、G1を勝つと勝たないでは全然違うから」。

 前走の阪神牝馬Sでは栗東滞在で調整する“孝行娘”の姿を何度も間近で見た。「雄と雌の違いはあるけど、ガッチリしていたマーズと違って、シュッとしている。似てないよね。

レースぶりは似てるのに」。そんな父娘の比較を笑顔でできるのも、現役時代にG1・3勝へ導き、種牡馬として送り出しているからだ。

 カムニャックは今まで3度の対戦で1勝2敗。前走の阪神牝馬Sでは首差まで詰め寄った。「普段から前進気勢が出てきているし、以前よりも対応できる。東京の方が走りやすいと思う」。ともに歩んだDNAと真っ向から向き合う今年のマイル女王決定戦。感謝の思いを胸に、全力で立ち向かう。(山本 武志)

 ◆アドマイヤマーズとは 2016年生まれで現10歳のダイワメジャー産駒。現役時代は18年朝日杯FSと19年NHKマイルCを勝ち、18年には最優秀2歳牡馬に選出された。19年12月には香港マイルを勝利。前月に亡くなった名物オーナーの近藤利一さんに捧げる追悼Vとなった。

翌20年は4戦で3着3回あったが未勝利。この年限りで現役を引退した。

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