そこでセミナーが都内で開かれると聞き、参加させていただいたのだが、森さんが登場する前に、女性の司会者から紹介された森さんの経歴がこれまたすごかった。
「元警部。主に知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。刑事課長、警察本部課長補佐、警察長課長補佐などを歴任。刑事時代には国政選挙などの選挙違反事件、首長や公務員による贈収賄事件、数十億円被害の大型詐欺事件や業務上横領事件など多数の事件捜査に従事。
いやはや、こんな人と直接話したら、僕が日頃ついているウソなんて何百個も見破られてしまうだろう。
日常の事件をみんなで"捜査会議"する「参加型セミナー」
それからの90分間は、あっという間だった。
ウソをつくときの足の動きや、採用面接のときに役立つウソの見抜き方などさまざまな話を聞くことができたが、その中でも特に面白かったのが「捜査会議」。
森さんから「事件」(といっても日常よくあるようなトラブル)が2題ほど出されるのだ。そして犯人の弁明にどういうウソが潜んでいるのか、またはどんな尋問が有効なのかなどを隣の参加者同士で話し合い、森の刑事(デカ)長に向けて発表するのである。刑事の気分をちょっとだけだが味わえるのである。
自白に導くキラー質問
さらに「なるほど」と思ったのが一発でウソを見抜き、自白に導く、いわば"キラー質問"だ。
取り上げる事件の設定は「更衣室のロッカーから現金が盗まれた」というもの。
しかしここで犯人に、「ロッカーから金を盗んだのは君だね」といきなり言っても、「私ではありません」とウソを並べ始めるだけ。しかし森さん曰く、犯人には「ウソをなるべくつかせない」ことが大事なのだという。
さらに、「ロッカー内をいじってるのを見たやつがいる。早く白状しろ」という質問の仕方も、本当に目撃者がいれば良いが、ウソをついて情報を引き出そうとした場合、かえって不信感を持たれてしまう。「ウソを見抜くには、相互の一定の信頼関係が必要」、なのだという。
そこでこう聞くのだ。
「あなたがロッカーから現金を盗むのを見た人がいる可能性はありますか?」
もしくは、
「被害者の財布からあなたの指紋が検出される可能性はありますか?」
つまりは、犯行を犯したと決めつけてもいない、でも否定してもいない、やった可能性があるかどうかを聞くという「可能性質問」だ。
そんな質問された後、もし真犯人であれば、「もしかして犯行現場を見たやつがいるのか」と勝手に考え、勝手に崩れてくれるというのだ。
刑事時代のウラ話も
もちろん刑事時代の話も盛りだくさん!
ガサ入れのとき、犯人の「ある動き」でブツを押収したり、取調室のカツ丼のシーンは現役刑事時代もあったらしいのだが、「カツ丼を食べる、食べない1つとっても犯人がわかってしまう」という話も興味深かった。
また犯人の典型的なリアクションとして、「犯人は手続きなど捜査方法に大体イチャモンをつける」という「犯人あるある」には笑った。
さらに、最近物議を醸したさまざまな有名人をとり挙げて、刑事の目から見てこの人が本当にウソをついているかどうかを見極める「人物鑑定」コーナーも興味深かった。やはり刑事の目は鋭かった。
そんな森さん、ゆくゆくは架空の事件をチームごとに推理し、尾行や張込みも行い、1日かけて犯人を捕まえるというワークショップも考えているという。今後の「刑事塾」も大いに楽しみにしたい。