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「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」


何をするにも一日がかり!? 秘湯の暮らしとは


秘湯中の秘湯ともいわれる梅ヶ島温泉郷。住所としては静岡市内になるのだが、まわりにあるのは、ほぼ自然だけ。総面積90平方キロメートルという広いエリアだが、住民は500人弱。「引っ越してきた人以外、だいたいみんな顔はわかる」とはここで生まれ育った男性の弁。
「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
おもいでの宿 湯の島館の秋山夫妻

宿泊した「おもいでの宿 湯の島館」のおかみさんも、梅ヶ島で生まれ育った人。秘境暮らしの苦労をきいてみると、「何をするにも一日がかり。買い物も病院も市街地まで行かないと。この仕事してるとネット見てる時間もないし……」と話す。

現在、梅ヶ島温泉郷の子どもの数は20名強。子どもたちは施設一体型小中一貫校「梅ヶ島小中学校」に通っている。高校は静岡市街地まで行く必要があるため、家を出て寮や親せきの家で暮らすのが一般的。かつてはおかみさん自身も、そしていまは高校生の娘さんも家を出て静岡市街地で暮らしているそうだ。
「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
梅ヶ島温泉郷唯一の信号は学校前にある。子どもたちに信号ルールを教える目的もあるそうだ

また、男性に地元の飲み事情を聞くと、飲み屋もないのでだれかの家や旅館などで飲むことが多いという。バスもあるが、本数は少なく移動は基本的に車。梅ヶ島温泉郷内にはタクシーも代行も走っておらず、市街地から呼ばなくてはならない。そのため飲んだあとは、迎えを家の人に頼んだり、だれかに送ってもらったりしているそうだ。

なにかと不便なことも多いこの地になぜ住み続けるのか? 地元の人たちに魅力を聞くと「自然がいい」という声を何度か耳にした。とくに秋の紅葉は絶景だと口をそろえる。「帰ってくると静かなこの環境が落ち着きます。この環境を未来へもつないでいきたい」と湯の島館のおかみさんもにっこり笑う。

おしのび客も多い国民保養温泉地


大規模な開発もされず、手つかずの自然が残っている梅ヶ島温泉郷。JR静岡駅から車で約1時間半、新東名静岡ICから自家用車で約50分とアクセスがよく気軽に行けるのに秘湯感がハンパないので、おしのびで訪れる人も少なくないようだ。

2017年5月には国民保養温泉地にも指定された。これは環境大臣が指定するもので、温泉の効能が顕著であること、湧出量が豊富なこと、周囲の景観がよいことなど、療養・保養・休養に適した温泉地であるための条件を満たした場合に指定され、現在は全国に97カ所ある。

泉質がよいので宿でひたすら湯浴み三昧もいいが、それ以外のお楽しみもある。自然体験ができる施設「魚魚の里(ととのさと)」では、ヤマメ釣りや砂金採り体験が可能。安倍川一帯は金山としても開発され、当時の坑道跡なども残っているのだ。
「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
「魚魚の里(ととのさと)」では自分で釣ったヤマメをそのまま塩焼きにして味わえる

また、梅ヶ島温泉郷の手前には、わさび栽培の日本発祥の地である有東木(うとうぎ)地区があり、農林産物加工販売所「うつろぎ」では、わさびグルメやわさび漬け体験も楽しめる。
「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
茶畑とわさび田が広がる有東木地区

「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
有東木地区の公民館近くで見かけた看板

ちなみに梅ヶ島温泉郷のひとつ「梅ヶ島コンヤ温泉」では、国民保養温泉地指定を記念して、梅ヶ島の名産であるわさびを生かした新名物を開発。世界的に活躍する山形イタリアン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフが考案した「秘湯のわさびパスタ」を梅ヶ島コンヤ温泉にある3つの旅館で提供している。
「ここが最後のコンビニ」看板の先にあった秘湯「梅ヶ島温泉郷」
「旅館 大野木荘」でいただいた「秘湯のわさびパスタ」。すりおろしたわさび10gを同量のバターと練り合わせたソース。わさびの香りと辛みをぞんぶんに楽しめる

にぎわう静岡市街地とはうってかわってのんびりした空気と自然、それに温かい人々に癒された梅ヶ島温泉郷。これから寒くなる季節、身近な秘湯でほっこり温まってみては。
(古屋江美子)

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