帯ドラマ劇場・第3弾『越路吹雪物語』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第9週。
「越路吹雪物語」第10週。大地真央(62)が父・尾美としのり(52)と母・濱田マリ(49)を看取る
イラスト/北村ヂン

吉田栄作、余計なことするなよ!


まずは先週末から引き続き、お互いがお互いを思いやっているからこそ、思いがすれ違ってしまうコーちゃんと時子。

「越路吹雪のマネージャー」として以上に作詞家としての仕事が高く評価され、忙しくしている時子。


そんな様子を見たコーちゃんは、マネージャーの仕事を減らしてあげるため、付き人をつけようと考える。しかし、これには時子から反発を買ってしまった。

付き人をつけるという案は、コーちゃんの旦那・内藤(吉田栄作)からのアイデアだったようだが、プロダクションの社長・藤本(デビット伊東)たちは「そんなことをしたら時子が怒る」と読めたようで、

「後から来た君(内藤)がふたりの関係を壊したりするなよ」

と忠告していたのだ(さすが付き合いが長い!)。

スターが結婚して、長年支えてくれたスタッフよりも配偶者の意見を優先するようになってしまい、周りから人が離れて行ってしまう……というパターン、具体的な芸能人の名前が何人か思い浮かぶが、芸能界あるあるなのだろうか。

もちろん、内藤の場合は悪意があるわけではなく、よかれと思ったものの空気が読めていないだけなのだが。何やってるんだ栄作!

現実でも、晩年の越路吹雪に酒とタバコを止めさせようと時子が口うるさくしていたのに対し、内藤はあまやかしてしまい……というような対立があったようだ。

そういえばドラマ内でも、医者からタバコを止められているコーちゃんに、内藤が「1本だけ、約束できる?」とあまやかす描写があった。

コーちゃん、給料払ってないの!?


「付き人はいらない」と言いながらも、忙しくて体調が悪そうな時子。

実はマネージャー&作詞の仕事だけではなく、母・秋子(原日出子)が認知症となってしまい、介護で疲れ果てていたようだ。

そのことを知らせなかったことで、コーちゃんも激怒する。これもコーちゃんに心配をかけまいと考えてのことだったのだが……。すれ違い!

結局、時子が倒れ、心配したコーちゃんも気を失い、ふたり揃って入院したことにより仲直りする。

病室のベッドを隣同士にするというのは、内藤のアイデアだったようだ。
よくやった、栄作!

今回の件で、コーちゃんは改めて「時子なしでは何もできない」と感じたようで、

「お時さんがいなくなったら、どうやって歌えばいいのよ」
「お時さんは私の半身なのよ」
「私よりも早く死なないで」

と訴える。一方、時子も「コーちゃんより1分だけ長く生きてあげるわ」と応えた。

以前は、「離婚と葬式の世話だけはさせないで」と言っていた時子だったが、ひとまずコーちゃんを看取る覚悟はしたようだ。

ところでここで、恐ろしい事実が発覚する。

コーちゃんは時子に給料を払っていない!

それ、仕事じゃないじゃーん! 今だったらTwitterで炎上しそうな案件だ。

時子が東宝の社員だった時代はもちろん会社から給料をもらっていたわけだが、退社して以降は作詞家としての収入のみで生活をしているようなのだ。

ええーっ、それでいいの!? とは思うものの、実際の岩谷時子も「本業は越路吹雪のマネージャー」と言いつつも、越路からの給料は一切受け取っていなかったという。

越路の歌う曲の訳詞だけでなく、加山雄三の「君といつまでも」などなど、数多くのヒット曲の作詞も手がけていたので、確かにマネージャーとしての給料がなくても困らなかったのだろうが、だったらマネージャーを辞めて作詞に専念するという判断もあったはず。

それでも時子は越路吹雪のマネージャーであることにこだわっていた。

コーちゃんが時子に思いっきり依存しているのは明らかだが、時子の方もコーちゃんにある種の依存をしている共依存の関係なのだろう。まさに「半身」なのだ。

娘の方が10歳以上年上


時子の母が認知症になったことに加え、コーちゃんの母(濱田マリ)と父(尾美としのり)ががんで亡くなったりと、週の後半は親世代に大きな動きがあった。

両親との別れといえばドラマ的にも大きな盛り上がりポイント。
最後にガッツリと絡んで欲しいところだが、尾美としのりは過剰な老けメイクをして登場していたものの、濱田マリに関してはコーちゃんのコンサート会場に幽霊のようにチョロッと現れただけだった。

まだ亡くなってはいないようだが、時子の母もまったく姿を見せないし。

……これはやっぱり、親と絡むとビジュアル的に整合性が取れなくなっちゃうからだろうか。

娘である大地真央(62)、市毛良枝(67)に対して、親世代は濱田マリ(49)、尾美としのり(52)、原日出子(58)だもんな……。

親を演じている役者より子ども役の役者の方が年上というのは、NHKの朝ドラなど、長い人生を描くドラマではありがちではあるものの、さすがに娘たちの方が10歳以上年上というのはキツイ……という判断があったのかも知れない。

見た目は若いとはいえ、大地真央が尾美としのりに向かって「お父さ〜ん!」と叫んでいるシーンは、何とも複雑な気持ちにさせられたもんな……。

コーちゃん&時子はドラマ内ではまだ40代のはずなんだけどね。

「私よりも早く死なないで」というやり取りも、若い頃を演じていた瀧本美織と木南晴夏がだったらもうちょっとライトに「女同士の友情、美しい」的な受け取り方をできたのだろうが、これが大地真央と市毛良枝だと「私よりも早く死なないで」という言葉が重い!

どっちが老老介護するか的な空気を感じてちゃうもん……。

結婚式や親との別れくらいまでは瀧本美織・木南晴夏で行ってもよかったのでは……とも思うが、それだと大地真央の越路吹雪を見られる期間が短かくなっちゃうので仕方ないところか。

もう佳境を迎えますか


さて、ドラマも残すところあと2週!

「コーちゃんと時子は一心同体」というテーマがはっきりしたことで、歌姫としての絶頂を迎えつつも病に倒れ、時子との別れくらいまでは描かれると予想されるが、どんな終わり方をするのだろうか?

取り上げて欲しいエピソードはまだまだあるので、どの程度ドラマに登場するのかも注目していきたい。
(イラストと文/北村ヂン)

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