
(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)
連続テレビ小説「スカーレット」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)
第5週「ときめきは甘く苦く」26回(10月29日・火 放送 演出・佐藤 譲)
25回レビューのサブタイトルが四週のままだったことをお詫びして訂正します。
第5週「ときめきは甘く苦く」です。
ゲンキンな男
医学生・圭介(溝端淳平)が近所の犬を連れた泉田あき子(佐津川愛美)に恋をして、喜美子(戸田恵梨香)がその恋の成就に一肌脱ぐ。雄太郎(木本武宏)に「いがくせい(医学生)」五文字が効くと助言されて(雄太郎も「こうむいん(公務員)のときは見合いの話がたくさん来たと後で明かされる。
初対面ながらすっかり打ち解けたように見える圭介とあき子。それにしても、あき子のつくり声みたいな声が不自然で、こんな人とつきあったり結婚したりしたら、圭介にいいことはあるんやろかと心配になる。
あき子が甘いものーーあんこが嫌い、「おはぎが好きだなんて子供みたい」と言った途端、圭介はおはぎを喜美子に気を使って食べていたと言い出す。まったくゲンキンである。
そして、ふたりはハンバーグを食べに行く。
その晩、喜美子はさっそくハンバーグの作り方をさだ(羽野晶紀)に習う。
あき子はコーヒーやハンバーグと、大久保さんが仕切っていた荒木荘とは違うハイカラな価値観をもった人物だった(さだは外では洋食を食べている)。
“「スカーレット」スピンオフ・圭介”の恋と思わせて、物語はじわじわと様相を変えていく。
喜美子の恋
あき子と食事をして帰って来た圭介は、正月以来、飲んだとご機嫌だ。
帰り道、猫と遭遇するが、猫いじりはなかった。
迎えに出た喜美子はなんだか浮かない顔をしている。
雄太郎、さだ、ちや子(水野美紀)と順番に出て来て、なんだか喜美子を心配している。
喜美子以外は彼女の心のうちを理解しているが、本人はわからない。
ちや子が「恋」だと教える。
言われてみたら、喜美子は、あき子を「草間流柔道で投げ飛ばしたる」と思ったと告白する。このシーンのとき、シアトリカルな劇伴がかかって、喜美子のカチーンとなった感情が事前に表現されている。でも、ドラマは喜美子の主観で進まず、あとから、わかる仕掛けになっているところに見応えがある。
いつも見守る大人たちの優しさがじんわりくるのだが、戸田恵梨香が十分大人なので、幼い者が学びを得ていく感じではなく、記憶を失った人が記憶を取り戻しているみたいにも見えてしまうのがいささか引っかかるが、戸田恵梨香は戸田恵梨香なりに健闘しているので、見逃したい。
腹も立つけど「圭介さんが喜んでるとうちも嬉しい」と自分の気持ちを確かめる喜美子に、それが恋だとちや子が言う。
「なんや気持ちが忙しい」
「恋っちゅうのはおもろいなあ」と発見する喜美子。
照子とのキスで恋を知ったつもりになっていた喜美子が、本当の恋を知り始めた。
でも、この恋は実らないんだろうなあ…と思えてしまうところが残念(あえてそうしているんだと思うんだが)。いや、実るかも、実ってと祈りながら見ている人もいたら、すみません。
(文・木俣冬 タイトルイラスト・まつもとりえこ)
登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空 主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、就職する。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。
喜美子の給料を前借りに行く。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉
●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。高校生になっても友達がいないが、楽しげな様子を書いた手紙を大量に喜美子に送っている。喜美子とは幼いときキスした仲。
熊谷秀男…阪田マサノブ 信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母
●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。高校で友達は照子だけだったが、ラブレターをもらう。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。
●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。
工藤…福田転球 大阪から来た借金取り。 幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
保…中川元喜 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。
あらすじ
第一週 昭和22年 喜美子9歳 家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき