成瀬竜→四宮要
「ねえ……キスまでにやらなきゃいけないことって何ですか?」
「キスくらい誰とでもできる」と言っていた成瀬竜(千葉雄大)。つまり、彼はそういう恋愛しかしたことがなかった。キスから先に関しては経験豊富だけど、恋愛の基本的なステップはからっきし。成瀬は、「キスまで」についてを春田創一(田中圭)に質問した。この時点で不器用が炸裂している。彼が相談相手に選んだ春田は「俺じゃダメか?」と色んなことをすっ飛ばして成瀬にキスした男なのだから。成瀬がなぜこんなに無神経かというと、今までふられたことがないから。だから、自分にふられた春田の気持ちがわからない。
未経験なことへチャレンジする成瀬は、まるで幼児のようだった。そんな成瀬を春田はまるで仏のように応援した。イルミネーションが綺麗な場所に訪れた春田と成瀬。これって、もはや模擬デートだ。
春田 「シノさんをさ、こういう所に誘ってみればいいんじゃないの? すっげえ綺麗じゃん。
成瀬 「だって……コックピットからの眺めより綺麗な景色はないんで」
春田 「うざっ。いや、そりゃわかるけど、『うわ、すっごい!』『綺麗だね』って一緒に見れるのがいいんじゃんか。おっ、ピンときた?」
成瀬 「うん」
春田と見るイルミネーションは綺麗に思えないけど、四宮要(戸次重幸)とだったらどれも特別。成瀬を応援する春田が切な過ぎる。
四宮要→春田創一
成瀬 「今度……行きませんか? イっ、イルミネーションとか。じゃあ……こっ、古墳。じゃあ、甘いもの食いに行きませんか? 一緒に行ければ、どこでもいいんですけど……」
四宮 「しつこい。俺はお前に一切興味はない。いい加減、諦めてくれ。迷惑だ!」
人生初の告白で、成瀬は人生で初めてふられた。そして、成瀬は寮を飛び出した。今までのような面白い走り方じゃないところに、本気で傷付いているのが窺える。四宮は四宮で、彼らしからぬキツさに思えた。
四宮は、中途半端な態度を取らないよう自分を律していた。余計、相手を傷付けないために。橘緋夏(佐津川愛美)から誘われたデートの最中、春田は心ここにあらずだった。春田の本心を察した緋夏は、目を真っ赤にしながら「その優しさに私は傷付きました」と去っていった。ふられたばかりで失恋の痛みを知る四宮だって、辛かったに決まっている。でも、気がないのに期待を持たせてしまう中途半端な優しさのほうが相手にとっては残酷だ。
もう1つ、自分が身を引くことで春田の恋を成就させるという意図も透けて見えた。自分への想いを失くさせるよう、あえて冷たい態度を取った四宮。さらに「成瀬のところに行ってやれ、早く!」と、春田のことをけしかけた。弟のように可愛がっていた成瀬にらしくもない態度で接し、片想いする春田の背を押した四宮。そのくせ、1人になってからは色々な感情が去来して苦しげな表情になっているし。
彼の自己犠牲が功を奏すかはわからない。春田にふられた自分だって、成瀬になびいたわけじゃないのだから。
黒澤武蔵→春田創一
武蔵 「トゥ ハルタ エアポート、ファイナル アプローチOK? 許可願います」
春田 「NOです。フフ……駄目ですって(笑)。……(泣)」
武蔵 「……なんてな。ハハハハハ。いや、今はこうやって一緒に仕事できるだけで幸せだよ」
シーズン1の春田とin the skyの春田は別人である。緋夏にも四宮にも黒澤武蔵(吉田鋼太郎)にも、彼はNOの意思表示をした。断りにくい状況に流され、武蔵と結婚寸前まで行った天空不動産の春田はここにはいない。でも、武蔵の気持ち、人を想う気持ちはわかり過ぎるほどわかる。始めは笑いながら煙に巻いていたけど、涙目になっていることを隠せなくなってしまった。辛い顔を武蔵に見せないようにしていた春田と、それに気付いた武蔵。
春田創一→成瀬竜
四宮の言葉を受けて後を追った春田は、公園で成瀬を見つけた。
成瀬 「駄目ですね、俺。全部クソです」
春田 「そんなことないから! お前、今、めちゃくちゃ頑張ってるじゃんか。みんなともすげえ喋るようになったし、チームのことだってめっちゃ考えてるじゃん。いいよ……、うん」
成瀬 「それ、全部……春田さんのおかげだし」
ふられた側の気持ちがわからなかった成瀬は、四宮に撃沈して成長した。そして「優し過ぎますよ」という言葉を春田にかけられる人間になった。春田のおかげで自分は変われたのだと、今の成瀬は自覚している。

春田は成瀬の手を自分のポケットに入れ、その中で手をつないだ。模擬デートでも春田は同じことをしたが、あのときは成瀬からパッと手を離され、春田は名残惜しそうにしていた。でも、今回は春田がパッと手を離し、成瀬のほうが名残惜しそうに見えた。これが恋心かはわからない。
現時点では全員が片想いである。そして、全員が相手の幸せを願っている。この状況のまま、『おっさんずラブ-in the sky-』は最終話へと突入する。
(寺西ジャジューカ)
土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
音楽:河野伸
主題歌:sumika『願い』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
※各話、放送後にビデオパスにて配信中