ウレロシリーズ3年ぶりの最新作
この番組は2011年放送の「ウレロ・未確認少女」に始まる「ウレロ・シリーズ」の最新作で、今回、2016年の「ウレロ・無限大少女」以来3年ぶりに復活した(「・」はいずれも星印)。このシリーズは、毎回同じシチュエーションで、レギュラー出演者にゲストを交えて演じられるコメディを、スタジオに観客を入れて収録するという本格的なシチュエーションコメディ(シットコム)だ。日本ではアメリカのようにシットコムの文化が根づいているとはいいがたいが、そのなかにあって「ウレロ」はシリーズ化もされた稀有な作品といえる。
シリーズを通して劇団ひとり、バカリズム、東京03の飯塚悟志・角田晃広・豊本明長、早見あかりがレギュラー出演し、「未開拓少女」ではここに福原遥(前作「無限大少女」では準レギュラー)が加わった。前作からの3年のあいだに、バカリズムは脚本家として「架空OL日記」(来年には映画版も公開される)で向田邦子賞を受賞するなどすっかり頭角を現し、ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を卒業した直後より「ウレロ」に出演している早見あかりも、昨年結婚した。今回の「未開拓少女」では、劇中で早見の演じるあかりも結婚したという設定になっている。
シリーズの舞台は、劇団ひとり演じる川島が設立した弱小芸能プロダクション「@川島プロダクション」(@は「アット」ではなく「アットマーク」と読む)。バカリズム演じる升野はそこに所属するアイドルプロデューサーであり、あかりは事務員として勤務する一方で「早乙女ニャンコ」というペンネームでマンガ家としても活躍する。このほか、東京03の飯塚はマネージャー、角田は専属のミュージシャン、豊本はアルバイトながらスパイのような活動もしている謎の存在を演じている。ここにあげたとおり、いずれも役名は本名と同じであり(劇団ひとりの本名は川島省吾、バカリズムの本名は升野英知)、本作での役柄は彼らがバラエティなどで見せているキャラクターとどこか地続きでもある。
一人ですべてのボケを拾う東京03飯塚にうなる
「未開拓少女」では、社長の川島がクリスマスフェスの開催を宣言し、チケットを発売すると飛ぶように売れたが、肝心の出演者はいつまで経っても発表されず、関係各方面からいつ決まるのかと矢のような催促を受けていた。じつはこのフェス、@川島に所属するYouTuberの「カクータ」(演じるのは第1話ゲストの町田啓太)が川島をそそのかして謀ったイベント詐欺だった(カクータはチケットを売るだけ売ってイベントはやらずに、売上だけ持って逃げるつもりでいた)。「未開拓少女」は、そんなふうにして企画されたフェスを実現させるべく、ひとまず角田を出演させることにしたり(彼は人気VTuberのカタイクミに曲を提供していた)、イベント制作会社の「フジョシさん」こと藤吉(演じるのは第2話ゲストの岸井ゆきの)の提案で、川島・豊本・角田らが2.5次元ミュージカルをやることになったりと、プロダクションの面々が奔走するさまが描かれる。まあ「奔走」といっても、社長の川島以下、みんな好き勝手に動き回っては足を引っ張り合うばかりで、このドラマでほぼ唯一の常識人であるマネージャーの飯塚にツッコまれっぱなしなのだが。
毎回、すべてのボケをたった一人で拾い上げてはツッコんでいく飯塚は、さすがと思わせる。先週12月16日放送の第3話でも、升野や角田が、それぞれ勝手な思い込みで暴走するのだが、何とか気づかせるべくツッコミを入れまくる。とくにひどかったのが角田で、自分の誕生を祝ってみんながサプライズパーティーを開いてくれるものと勝手に思い込んで、暴れ回っる始末。それを見た川島と豊本も、以前から別件で角田に後ろめたい事情を抱えていたため、それがバレたのだとやはり勝手に思い込み、角田から逃げるべく事務所の窓から飛び降りて車にはねられたりする(まあ、このシリーズではお約束のシーンで、飛び降りて血まみれになりながらも、結局みんな生還するのだが)。
さらに事態をややこしくしたのは、カタイクミを運営する大手芸能プロ・キングダムの大城(峯村リエ)が、曲を提供してくれた角田と@川島に御礼をしたいと事務所にやって来たことだ。大城は、角田が何か祝ってほしいと察して、ケーキを用意してくれたりするのだが、じつは来社には別の目的があった。
新レギュラー・福原遥の正体があきらかに
第1話から@川島には、福原遥演じる遥という謎の少女が現れ、マネージャー見習として働くようになっていたのだが、第3話ではあかりが彼女を事務所から追い出そうとする。じつは遥はもともとキングダムに所属し、カタイクミの“中の人”を担当していた。しかしキングダムのある企てを知って逃げ出す。あかりはそんな遥の事情を知って、@川島にかくまったものの、そろそろキングダムにバレると察して再び逃がそうとしたのだ。だが、そこへ大城がやって来て見つかってしまう。
キングダムの企てとは、カタイクミによるゲーム実況配信を通じて、ユーザーを洗脳してどんどん課金させようというものだった。
ウレロはシリーズを通して、出演者がときにアドリブも交えながら楽しく演じているのが特色だが、こうしてあらすじを書き出してみると、ドラマそのものがしっかりとつくられているのがわかる。ちなみに脚本は、東京03のコントライブも手がける放送作家のオークラと、緻密な構成による演劇で定評のある劇団シベリア少女鉄道の土屋亮一が共同で執筆する。プロデューサーの佐久間宣行も、深夜バラエティ「ゴッドタン」で、「キス我慢選手権」をはじめお笑い芸人たちを特定のシチュエーションに投入してアドリブで演技させるという企画をいくつも送り出している。劇団ひとりやバカリズム、東京03とも「ゴッドタン」で長年タッグを組み、勝手知ったる仲だ。ウレロ・シリーズが長続きしている理由の一つには、そうしたスタッフとキャストの信頼関係もあるのだろう。
さて、クリスマスフェスを前に、大手芸能プロに立ちはだかられた@川島の面々は、その企てを食い止め、そしてフェスを無事実現することができるのか。その結末は、今夜放送の最終回であきらかになる。前回の終わりには、最終回は生放送になると発表された。ゲストには大東駿介とヒップホップユニットCreepy NutsのR-指定とDJ松永を迎え、一体どんなことが起こるのか、ぜひリアルタイムで見届けたい。(近藤正高)