
※本文にはネタバレがあります
涙の展開『ボス恋』9話
「奈未ちゃんは編集者になるのが夢になったのかもね」(理緒)【前回レビュー】潤之介にプロポーズされた奈未。選ぶのは恋か仕事か(次週はまだ最終回じゃない)
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下ボス恋)(TBS系 毎週火曜よる10時〜)の第9話は、奈未(上白石萌音)と潤之介(玉森裕太)が結婚目前。カメラマンを辞めて実家の宝来製紙を継ぐことにした潤之介は、高級マンションを引き払い、金沢へ――。
引っ越しの日、奈未は会議があるから見送りに行けないと言う。カフェでは舌を噛みそうなメニューをスラスラ言って、別人のようにしっかりした人になっている。ファッションもかなり洗練されてきた。
編集部に戻ると、麗子(菜々緒)は辞めていて、麻美(高橋メアリージュン)が新編集長に。ハイブランドが売りの「MIYAVI」が、付録が売りの雑誌に路線変更すると言うので、編集部一同、唖然となる。
麗子は行方不明。副編集長(なだぎ武)は辞表を出す。そんな状況だが、残った編集部員はいつものように仕事に精をだし、奈未もだんだん仕事が楽しくなってきた。アイデアも採用されるようになり、「あの頃から変わったよね」と和泉(久保田紗友)は「なかなかの強敵」と微笑む。
このまま金沢に行ってしまっていいのかと悩みはじめる奈未。そこへ宇賀神(ユースケ・サンタマリア)が現れ、麗子が辞めるとき、アシスタントの奈未も辞めさせるつもりだったが、辞めさせないでほしいと麗子が頼んだために残ることができたことを明かす。麗子は第8話で「いかなる困難なことがあってもファッション雑誌は継続されないといけないの」と言っていたことを実行したのだ。
編集長を降りた麗子の行く先は
そんな麗子はなぜか備品管理部にいた。地味な制服を着てひっつめ髪。でも短いスカートからのぞく美脚は普通じゃない。まるでなつかしの『ショムニ』の江角マキコのようだった。菜々緒で『ショムニ』リメイク、見てみたくなった。さて、いったん東京に戻ってきた潤之介。スーツ姿ですっかりビジネスマン。自分が撮った写真が使われているカタログを見つけたが、もうすぐ写真を変えるところだと聞き、複雑な気持ちを抱く。
理緒(倉科カナ)に手術に付き合ってほしいと頼まれたと奈未に報告する潤之介。奈未にやさしい白ジュンか、理緒と二股かける黒ジュンか、奈未が迷うと、白黒ジュンが現れる。もはやこのコーナーは玉森裕太が無邪気でかわいいという感想しかない。最後まで貫いてほしい。今回は、スーツ姿がお似合いの玉森。
麗子に戻ってきてほしいといろいろ策を練っているとき、潤之介の母(高橋ひとみ)に後をつけられお茶したところ、麗子と父(宇梶剛士)の確執を知る奈未。お父さんに宝来製紙を継ぐことを期待されていたのに、ファッション留学したいと言ったことであきらめられてしまったとか。そんなリア王とコーディリアのような(父のためを思ったことが理解されない)ことが……。
奈未は、潤之介の父母との食事会に麗子を呼ぶが、来ない。奈未は、社内報に掲載した麗子の特集ページや「MIYAVI」を見せたりしながら、麗子にすっかり心酔しているところを見せる。そこへ現れる麗子。いつの間にか、彼女のファッション誌への夢を奈未も受け継いでいた。それが気になる潤之介。でも――
ついに初めて会ったあのベンチで奈未に指輪を贈って、改めてプロポーズ。
「なにがあっても俺のこと信じていいんだよっていうお守り」
この指輪はハリー・ウィンストンだとネットは沸いた。『恋つづ』ではドSな医者からティファニー、『ボス恋』では子犬系男子からハリー・ウィンストン。
そんな彼女に理緒は「奈未ちゃんが仕事とか夢とかに未練があるなら 、奈未ちゃんが自分で中途半端だと思うなら、潤ちゃんをよけい傷つけるよ」と助言。理緒はとてもいい人だけど、未練の残る潤之介を自分のものにするために理解者のふりをしているように見えないこともない。いやいや『ボス恋』はそこまで拗れたドラマではない。そういう恋愛ドラマにありがちな障害が邪悪でも強烈でもないため、ドラマの展開上、奈未自身がひとりでぐるぐるから回るしかない。
振り返る潤之介、振り返らない奈未
悩みに悩んだ奈未は、星空と東京タワーがよく見えるきれいな場所(潤之介の会社の東京支社の屋上)で、涙ながらに指輪を返す。潤之介は、中沢からも奈未が仕事に一生懸命になっていることを聞いていたので、「奈未ちゃん、元気でね」と素直に言う。奈未は「はい」と離れていく。そこで主題歌。潤之介は振り返るが、奈未は振り返らない。やっぱりタイトル通り「恋は別冊」だった。
どんな仕事であれ、興味とやりがいを覚えることはいいことだけれど。
思い出のベンチで泣いてると現れたのは――中沢(間宮祥太朗)!
「おまえがまた泣いてる気がして」

いやいや、ここでまた来ないでしょう。もし来ても、仕事を選ぶって言ってんだから、なびかないでしょう。中沢、当て馬として人気だったからとはいえ、この登場、ありえ〜る?(アリエールのCMふうに)。
理緒も中沢も、こんなゆるい感じなのだったら、もっとぐいぐい奪いにいったほうが面白い気がするのだが、昨今はこういうのが流行りなのか。誰も彼も、欲望が淡すぎる。
「潤ちゃんは自分の夢にフタをしているんじゃないかな」と言う理緒は、奈未も夢にフタをしたら悲しむんじゃないかな」と心配した。潤之介は家を継ぐためにカメラマンという夢にフタをしてしまった。
「夢ってさ、なきゃいけないのかな」と言ってたことを奈未は思い出す。
「夢に縛られたり、 夢を持つことに囚われたりしたり、 それで笑えなかったら意味なくない?」
女性にとって、顔よし、性格よしの男性が自分の夢を捨てて一流企業の社長になってプロポーズしてくれたら最高に都合いいけれど、夢にフタしてしまう潤之介がなんだか哀しい。
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●第10話あらすじ
潤之介(玉森裕太)と別れた奈未(上白石萌音)は、極度の“潤之介ロス”に陥っていた。中沢(間宮祥太朗)をはじめ、編集部の仲間に心配される奈未。一方、潤之介は、父・勝之介 (宇梶剛士)と共に取引先との挨拶回りや商談など、多忙なスケジュールをこなす日々を送っていた。
あれから麗子(菜々緒)が辞めたMIYAVIは、ブランドからの広告出稿の見送りが続出。責任を感じた麻美(高橋メアリージュン)は、宇賀神(ユースケ・サンタマリア)に編集長から退く意向を伝える。そこで宇賀神は麗子に備品管理部から編集部に戻るよう打診するのだが、麗子の気持ちは変わらず……。
そんな中、次号の表紙となる予定だった写真がネット上に流出していることが発覚。前情報は一切出していなかった極秘企画だったため編集部は大慌て。このピンチを乗り越えるべく、奈未らは麗子に助けを求め頭を下げるのだが……。
その夜、編集部員一同は最悪のトラブルを抱えつつも居酒屋に集まっていた。臨時で編集長となった半田(なだぎ武)の就任祝いかと思いきや、そこに現れたのは……!?
――番組サイトより
番組情報
TBS系『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』
毎週火曜よる10時〜
出演:上白石萌音(プロフィール) 菜々緒(プロフィール) 玉森裕太(プロフィール)
間宮祥太朗(プロフィール) 久保田紗友(プロフィール) 亜生(ミキ)(プロフィール)秋山ゆずき(プロフィール)
太田夢莉(プロフィール) 高橋メアリージュン(プロフィール) なだぎ武(プロフィール) 犬飼貴丈(プロフィール) 橋爪淳(プロフィール)
山之内すず(プロフィール)
宮崎美子(プロフィール)
高橋ひとみ(プロフィール)
宇梶剛士(プロフィール)
倉科カナ(プロフィール)
ユースケ・サンタマリア(プロフィール)
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami