世界初の快挙!ウナギ業界の“救世主”に?
日本のウナギ業界が世界初の快挙。完全養殖ウナギの試験販売が5月29日から始まりました。
ウナギの漁獲量は年々減っていて、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されています。
完全養殖が成功してから16年。ポイントは「エサ」だと言います。今どんな研究が進んでいて、ウナギの値段はどうなっていくのか?
近畿大学水産研究所・田中秀樹特任教授の見解を踏まえMBS山中真解説委員がお伝えします。
一般向けに試験販売「完全養殖ウナギ」イオングループECサイトなどで
ここ数年うなぎの稚魚=シラスウナギの不漁が続き価格は高騰。ウナギは庶民にとって“高嶺の花”となっていました。
そんな中、5月29日から世界初となる「完全養殖ウナギ」試験販売が開始されました。イオングループのECサイトなどで扱われます(2尾セット・9720円+送料)。
「価格が安くなるとは言えないが安定する」
このウナギは、水産庁の研究機関などが開発した技術を使って大分県の「山田水産」が卵からふ化させて養殖したものです。
これまでシラスウナギの養殖は技術が確立されていませんでしたが、今では年間1万尾以上を安定的に生産できるようになったということです。
商業化により、価格が安くなるとは言えないが「価格が安定する」と田中特任教授は話します。
ウナギの99%以上が養殖依存
私たちが食べているウナギの99%以上は養殖。2024年のデータでは、親ウナギ・加工品の73%は輸入に頼っています。
国内養殖については、天然のシラスウナギをとって育てる「畜養」という手法を用いていますが、ここで使う稚魚も56%輸入に頼っています。
ウナギは「絶滅危惧IB種」ラッコ・ジンベエザメと同じ
実は絶滅危惧種に指定されているニホンウナギ。
IA種・IB種・Ⅱ種の3ランク中、2番目にあたる「絶滅危惧IB種」(IA種ほどではないが絶滅の危険性が高い)で、ラッコ・ジンベエザメなどと同じレベルです(水産庁)。
日本では、資源保護の規制を設けながら食べているというのが現状です。
「輸出には証明書を必須に」ニホンウナギめぐる厳しい目
ウナギをめぐっては、ヨーロッパ諸国から厳しい目を向けられている日本。
うなぎ評論家の高城久氏によると、去年のワシントン条約の締約国会議では、「ニホンウナギ輸出には『証明書』を必須に」という提案がヨーロッパ側からなされました。
今回の提案は会議で否決されましたが、ヨーロッパウナギは同様の制度が導入されています。
「中国でシラスウナギ乱獲も」海外に広がるウナギ消費
水産庁データによると、シラスウナギの国内採捕量は激減。1963年は232tでしたが、2024年には7t、2025年には15tとなっています。
また、日本以外でもウナギ消費は拡大していて、特に中国で増加。シンガポールなど東南アジアにも広がっています。「中国は日本ほどの規制がないためシラスウナギ乱獲の実態もある」ようです(高城氏)。
日本・中国・韓国・台湾で「共通のルール」を作る動きもありますが、今のところ進展はありません。
価格が高騰し絶滅の可能性もあるウナギ。将来食べられなくなるのでは…という状況で始まる一般向けの試験販売。業界にとって商業化は長年の悲願だと高城氏は言います。
約半世紀前から…完全養殖ウナギ研究の長~い歴史
完全養殖ウナギの技術について圧倒的に先行している日本。その研究は1960年代から始まったと近畿大学の田中秀樹特任教授は話します。
成魚の産卵から始まり、そこから約10年後の1973年には人工ふ化に成功。さらに約30年後の2002年、稚魚(シラスウナギ)まで育成することに成功しました。
そこから、その稚魚を成魚にまで育てて、卵を産ませて人工ふ化させる…この循環が成功したのが2010年。つまり「完全養殖成」が成功したのです。そして今年、ようやく試験販売開始までこぎつけました。
わずか1%以下だった…赤ちゃんが稚魚になる確率
完全養殖が成功してから試験販売まで16年かかったのは、「低コスト」「大量生産」が非常に難しいからだと言います。
<1990年代>
10Lの水槽にウナギの赤ちゃんを200~300匹収容
⇒シラスウナギになるのは1~2匹(0.3%~1%)
<現在>
200Lの水槽にウナギの赤ちゃんを2万匹収容
⇒シラスウナギになるのは2000匹~3000匹(10%~15%)
病気に強い個体などを選別→品種改良も可能に
また、研究が進んだ結果、卵からシラスウナギを経て親ウナギに育つまでのサイクルが短くなり…
▼以前:卵→300日前後→シラスウナギ→半年→親ウナギ
▼現在:卵→200日前後→シラスウナギ→半年→親ウナギ
完全養殖が成功したことで、病気に強い個体を選別することができ、品種改良も可能になりました。
“最大の謎”赤ちゃんの「エサ」 “これなら食べる?”を突き止める!
ウナギの赤ちゃん(レプトセファルス)が何を食べているのか分からない。これが研究に長期間を要した理由であり、“ウナギ最大の謎”とも言われていますが…
1990年代後半、近畿大学・田中秀樹氏らのチームが大発見。「ウナギの赤ちゃんはポタージュスープのような液体状のエサでないとうまく育たない」ことを突き止め、サメの卵を液状にしてエサにしました。
しかし…
エサに寄ってこない!?ウナギの赤ちゃんの生態
この液体状のエサには難しい問題が2つあったと田中特任教授は言います。
(1)エサに寄ってこない
ウナギの赤ちゃんは偶然エサとぶつかって味が気に入ると食べる
⇒99%のエサが無駄になる
(2)水が汚れる
ポタージュ状のエサが水中に拡散
⇒低酸素・バクテリア増殖により死んでしまう
田中特任教授によると、この問題の改良点は2つ。
(1)水槽を大型化して水質向上
⇒200Lなら2時間以内に水をきれいに交換
(2)エサの質を向上
⇒卵の黄身・ミルクのタンパク質など
最新のエサは“国家機密”で、今後大きなポイントになるのも「エサ」。さらなる低コスト・大量生産が目指されるということです。
(2026年5月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『山中プレゼン』より)

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